第5話昼御飯

ユウキ達一行はランチのメニューを何にするか決めかねていた。

「俺としてはガッツリ肉系がいいんだけど」(タイヨウ)

「肉ならあんまり柔らかいのはやだぞ?スプーンで切れるとかは無理だ」(ダイチ)

「あまり味が濃いのは得意ではありませんね。」(ルナ)

「私は特に…」(ペーパー)


(あーだこーだとなかなか話がすすまない。しかも「辛いのがいい!」「麺類が…」などと神獣達も参戦を始め収拾がつかなくなってきていた。

ちなみに学園の食堂、カフェテラスなどは入学式のため休業である)


「肉系で柔らかくなくて辛い…となるとアレか?味があんまり濃くなくて麺類ってなると俺達はあれにすっかな。あとは副菜をちらほら…」


学校周辺に飯屋が並んでいたとしても普通にこの人数で行くとなるとやっぱり時間がかかるだろうし、移動の時間を考えるとそう長い時間飯食ってらんないしな…


『ユーキ?なんかつくんのか?』


俺が話に加わらないで考え込んでいると体を俺達位(1m位)にまで縮めたカイリが覗き込んできた。


「あぁ…このままだと食べ損ねそうだしさ。だけどなぁ…」


カイリとトウヤを撫でながら考えていた内容を二柱に話した。


『ユーキ君のご飯美味しいから楽しみだなぁ』


「いや、作りたくても台所も材料もないし早く決まることを願うよ」


『なんで?』


「なんでって流石に台所を持ち歩いたりは出来ないだろう?」


飯の話をすると二柱は目をキラキラと輝かせる。だけど次の言葉に今度は首をかしげた。俺なんか変なこと言ったかな?自宅であったならともかく学園の広場だからなぁ

…食材もない。って説明したつもりなんだけど



『あぁ、それなら僕が渡した深淵アビスホールの出番だよ。それで万事解決だよ!ユーキ君。広げてみて』


さも当たり前のように説明始めんのな。それ『僕はからはこれ』的なこと言われただけでなんにも説明も解説もされてないし聞いてないからな?


「トウヤから貰ったのはこの群青色のバンダナだよな?広げてみてって“こう”か?」


『そうそう、ビックリすると思うよ。』


「!!?」


言われるまま腕に結んでおいたバンダナを広げた。

ニヤニヤとふくんだ笑いを浮かべるトウヤに少しいらっとしたのは内緒だ。

話を戻そうかな、広げた…確かに広げた。

だけどさ、なんでこんなひろがんの?

ちょっと広めの部屋の床面積くらい広がってんの。


『まだまだ、驚くのはこれからだよ!』


「!!?!!?」


これ以上驚くの?普通にハキハキと話すトウヤにも驚きだけどバンダナ?って呼んでもいいのかも解らないやつから次はキッチン?が生えてきた。


「これ…俺の家のキッチンか?」


『せいかーい!深淵は、持ち主の所有物を“万全”の状態で取り出すことができるのだぁ!どう?ビックリした?』


いや、えっ?なに?魔法貯蔵庫の中身はギュウギュウだし切れかかっていた調味料も満タンだし。鍋とかの器具も新品みたいにピカピカなんだけど??

どこが胸か解らないけど口調から胸を張って誇らしげに話すようなトウヤと生えてきたキッチンを交互にみる俺。多分メチャクチャ間抜けな顔してると思う。


『俺のもすごいいんだからな。別の意味ですごいんだからな。』


同じくらいすごいの?てかなんでそんな必死なん?俺に巻き付きながら締め上げる感じに、

カイリのアピールがすごい。トウヤが『カイリのはまたあとで。今は僕のターンだから』


「期…待し…てるよ。」


『おうっ!』


とりあえず放して貰えた…

カイリとトウヤをもう一度撫でて俺は昼飯を作り始める。タイヨウ達まだ話してるしな。このままだと食べ損ねそうだし。


「辛くて噛み応えのある肉メインの飯だったよな。よし、タイヨウ達には“カツカレー”にしよう。味が濃くなくて麺料理…俺達は海鮮いれた塩焼きそばかな。

あとは…」


せっかく魔法具の中身ギュウギュウだしいろいろ作ってみよう。油用の鍋を二つ熱して…おっカレールー作り置きも満タンじゃん。

シュリンプにオニオン、タコ、材料を炒めて…


☆⭐★☆⭐★☆⭐★☆⭐★☆


「とにかく、肉!これは譲れない」(タイヨウ)

「同感だ!俺も肉!」(ダイチ)


「解りましたからはやくいりませんか?」(ルナ)


どうしよう、お昼ごはんのメニュー決めがなかなか進まなくて“肉”って決まったのはいいけど今からだとゆっくり食べられないよ。

ユウキさんも途中から居なくなってるし…

(ペーパーは途中から主張をやめて空気に徹していた。メニューの決定に安堵したが時間を見るとギリギリで…)


「話してるとこ悪いんだけどさ、時間無いし今日は俺の作ったので我慢してくれないか?一応、要望を取り入れてみたから。」


あんたそんなとこにいたんかいっ、移動しようかって時に後ろからユウキさんに話しかけられた。とっさに振り替えると…


「何ですかこれは?」

「俺にも解んないww」


群青色の敷物から生えている?台所?のコンロにのせられた鍋からなんともいえない食欲を香りが…

隣の鉄板には海産物と共に炒められたパスタ?ヌードル?なんなのか何か麺状のものが湯気を立てている。

テーブルには…


「こちらは?ライスのようですが布や紙にくるまれてませんか?」


「これは味付けした“お揚げ”に具を混ぜ混んだ酢飯を詰めて三角…狐の耳形に握った“おいなりさん”とシュリンプのフリッターを米でくるんでさらに海苔で包んだ“てんむす”。辛いの苦手なら此方をって思って」


うーん、なんだかなぁ…この短時間でよくもまぁこんな品数を

追加であれは油?なにかを揚げているのか?


「くぅっ…なんてもんをつくりやがるんだ」


ダイチさんが滝のように涎をもらしながらなぜか悔しそうに唸る。


「わたくしも頂いて構わないんですよね?ね?」


ルナさん、目が…目が怖いです。


「ごはん…ごはん…ユーキのご飯」


「あんたが1番なんなんだよ!?」


「いいから座ってよ。時間無くなるぞ?」


だからなんでそんな冷静なの?皇太子殿下が一番怖かった。匂いを嗅いだだけで人ってこんなになれるんだって感じ?

それでも、ふらふらとした足取りでうながされるまま台所近くのテーブルに座った。


「タイヨウとダイチにはカツカレーな!奮発してオークジェネラルのカツだぞ。カレーは辛口だから“水”には気を付けな。」


「ルナさんには俺達と同じで悪いけど塩焼きそばです。味見したんで不味くはないと思う。」


「ペーパーはどっちにする?」


「私はそのてんむすとおいなりさんを…」


ユーキさんはみんなに配膳して“いただきます”と手を合わせて食べ始めた。

あとで聞いた話だけど別の国の食べ物に感謝を混める言葉だそう。


「…」

「…」

「…」

「…」


「なんかしゃべろうよ!?」


うるさい、黙る程旨い飯を作ったお前が悪い。

ユーキさんは感想聞きたそうだったけど無理な話だよ?美味しいんだもん。無くなる前に少しでもたくさん食べないと


(神獣達もふくめて皆無言で食べすすめていく。感想が無かったことに少しいじけたユウキがデザートの“わらびもち”と“ふぃなんしゅ”をだししぶってタイヨウ達がガチ目に泣き出したのはペーパーをかなり焦らせた)



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