第1話 入学式
明日香に振られた後の記憶がほとんどない。
振られたショックよりも罵られたショックという感じだろう。
気付いたら、1日が経っていて、心に傷を負ったまま卒業式を迎えた。
すると何故か、明日香に振られたことが周りに広がっており、仲の良い幼馴染と言う恋愛フラグの最高超がいたのにも関わらず振られたことで「負け主人公」という名を賜り俺の中学生活は最後の最後に失敗で終わった。
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そして季節は巡り、春となった。
春休みもあっという間に終わり。俺、暁霞
今日は俺にとって非常に大事な日である。
俺は春休み中、高校生活に当たっての2つの目標を立てた。
1つは、明日香の未練を捨てることだ。
俺は中学当初の頃から約3年間、明日香に好意を抱いていた。
1回振られた程度では、未練は消えず、前のような幼馴染のような関係に戻れるわけもなく、時間だけが過ぎていった。
ただこれは、別によくあることであり、そういったことがきっかけで疎遠になることも珍しくはない。元々、俺は疎遠になることも覚悟して告白したので、さほどの問題ではない。
そうなれば、未練に関しては時間の問題だろう。
もう一つは、必ず彼女を作り、充実した高校生活を謳歌することだ。
もともと、周りでも彼女持ちが増えており、俺も彼女が欲しいと思っていた。
明日香に告白したのも、彼女が欲しかったからと言うのも少しある。
明日香に振られてから、本当に彼女を作る必要はあるのか?と疑問に思った。
そこで俺は自分がどうしたいかと考えた。
思い浮かぶのは中学の頃、初めて読んだ恋愛ラノベ。
現実では起こり得ない数々のイベント、そんな中で起きる喜劇や悲劇、そして、数々のヒロインとの出会い。
時すでに遅し、俺の頭の中はすでに恋愛脳と化していた。
そんな頭をしてる俺が恋愛を捨てるられるわけもなく、高校では絶対彼女作ったらー!
と意気込んでいたが、俺は高校初日から遅刻ギリギリに家を出ていた。
「いっけな~い、遅刻遅刻!」
とテンプレなセリフを吐きながら、俺は全力で走っている。
ちなみにパンは咥えていない。
うちの高校は家から徒歩、約20分程度のところにある。このまま走って行けばギリギリ間に合うだろう。
だが、肝心なのはそこではなく、行くまでの間だ。
俺の中では、曲がり角で同じ新入生とぶつかり、運命的な出会いを果たすといったシナリオが存在している。そして、そこから俺の新たな青春が始まるのだろう。
運命さん、いつでも準備はOKですよ〜。
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そして、遅刻することも、ましてや曲がり角で美少女とぶつかることもなく学校に着いてしまった。
運命さんに、文句の1つでも言ってやりたいところだが、もう入学式が始まる時間だったので、学校に着いてすぐに体育館に向かった。
桜が舞い散る中、1つの大きな体育館の中では、在校生の歌声や保護者の拍手、生徒会長の言葉などが響き渡る。多くの人々が幸せや感動に満ち溢れているだろう。ただ1人を除いて。
「はぁ〜だり〜!」
俺は大きなため息を吐きながら、明日香のことを考えていた。
彼女は、昔は告白された時も優しく断っていたらしいが、中2の頃から突然、告白された時に冷たく当たるようになった。
それから一部の変態を除いて、振られた奴が告白することも関わることもなくなったらしい。
俺は幼馴染なのだから最低でも冷たく当たられることはないだろと思い告白したが、結果は見事に惨敗で終わったのだった。
そのお陰で、変な性癖に目覚めそうになるところだ
った。
とは言え、俺は将来のため地元から遠く離れた、他県の私立高校に進学したため、もう明日香とも会うことはないだろう。
こんなことを考えてもしょうがないと思い、すぐに思考を切り替える。
「おい、いい感じの空気を壊すなよ」
すると、隣にいる俺より一回り大きい少年が文句を言ってくる。
彼の名前は
とある企業の社長の息子で、俺にとって大切な金づる………ではなく、友達だ。
俺は周りに他の知り合いはいないか思い辺りを見回す。だか、一通り見た感じ他の知り合いはいなかった。
当然だろうと一息つく。
俺は、将来のため地元から遠く離れた私立高校へ進学したので、知り合いが居ないのは当然だ。
そんな中、俺と一緒に来てくれた亜蓮には感謝しかない。
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入学式は何事もなく終わり、俺たちは自分の教室へ向かっていた。
クラスは事前に発表されており、俺は亜蓮と同じ1年1組であった。教室に着くとかなりの数の人が既におり、数人のグールプを作り自己紹介をしている。
それを見ると、自然と中学の頃を思い出される。
中学の頃は俺と亜蓮を含めた5、6人でいつも一緒にいて、基本的に他の人と一緒にいることなど無かった。つまり、極度なコミ症なのである。
春休み中に考えた目標が無謀に思えて来た。いや実際、無謀なのだろう。
友達ですら、できるかわからない俺が彼女を作るのは流石に無理がある。
考えているうちに、高校生活、終了のお知らせ。と言うアナウンスが頭の中から流れてくる。
さようなら俺の青春
「おい、朝陽大丈夫か?」
亜蓮の声で現実に引き戻される。
「ああ、大丈夫だ」
この瞬間、俺は初めて、異性の幼馴染の貴重さを理解した。
これなら、負け主人公と言われるのも納得だわ。
絶望と納得の間に挟まれた状態で教室の隅で立ち尽くしていると、
「お前もしかして亜蓮か?」
クラスの如何にも陽キャぽい男子が亜蓮に話しかける。
「お前、まさか後藤か?悪い朝陽ちょっと行ってくるわ」
と言って、亜蓮は何処かに行ってしまった。
昔からの友達だったのだろうか?
いや、様子を見るにまるで初めて会ったような感じだった。
そういえば、聞いたことがある。最近では、SNSで入学前に友達になったりすることがあるらしい。亜蓮もそれをして、何人か友達が出来たと言ってた気がする。
ちなみに俺はつい先日スマホを買ってもらったばかりなので、そんなことをやる時間が無かった。
SNSを早く出来たとしても、友達ができるとは思えんが。
とは言え、1人ぐらい俺と同じような奴がいるはず………
そう思い。辺りを見回してみると。
俺を除いたクラスの全員がグループを作っていた。
教室の隅で立ち尽くしながら、俺は心の中で亜蓮に呼び掛ける。
亜蓮!頼む戻って来てくれ。
そんな俺の祈りが届いたのか。
「お前ら、席に着け」
救世主が現れた。
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