第3話 ヨリントンの戦い:決着
ヨリントンの戦い、決着は一夜にしてついた。
ドノヴァン軍隊長率いるヨリントン軍は、一千もの兵を擁していたのにも関わらず、なぜ歴史的な敗北を期したのか。
答えは明確だった。
一千の兵数を三百の兵で囲むことである。
女帝ミアは思考を巡らせた。
そして気づいたのだ。
兵の数で有利不利になるのは、対等にぶつかり合った場合のみであることを。
つまり、向かい合わせで戦えば不利となるが、
それ以外であれば有利に立てるのだ。
女帝ミアは相手を一つにまとめるように誘導しようと考えた。
そして女帝ミアは作戦を決行させた。
「流石だ、ミア」
キャああ!! 嬉しすぎますシド様ぁ!
だけど、本当に流石だと思う、女帝ミア。
当時は、向かい合って戦うことが主流だった。
片岡美亜が女帝ミアとなる前、デルツ軍は向かい合って戦っていた。
だから、ヨリントン軍も驚いたはず。
まさか、一千もの軍勢の目の前に、現れたデルツ軍が女帝ミアたった一人だったらね。
ってな状況で私、片岡美亜はデルツ軍一の駿馬に乗って、ヨリントン軍一千人の目の前に来ました。
◇ ◇ ◇
「ドノヴァン軍隊長、今回の戦いは勝ち戦ですな」
と笑い合う副軍隊長とドノヴァン軍隊長だったが、前線に待ち構えていた若年兵は、
目の前から馬が素早くこちらに走ってくるのが見えた。
「軍隊長! 馬に乗ったデルツ軍の兵一人が、こちらに向かってきています!」
「デルツ軍のミア総督じゃないか……降伏を選んだか、まあこの戦力差があれば仕方がない……か」
そう呟き、ミアが降参宣言するのを待っていると女帝ミアは思わぬ行動に出る。
手に持っていた弓を使って、前線兵を射撃していった。
一人が倒れる。
次に二人目。
そして三人目。
最後に四人目を撃ち殺して、女帝ミアは、馬の手綱を引っ張り、方向転換させた。
逃げるように、女帝ミアは去るが、
ドノヴァン軍隊長の指示により、全兵が彼女を追いかけ始めた。
ちょうど追いつかれないほどのスピードを保ったミアの馬はそのままデルツ軍の元へと戻る。
女帝ミアに煽られて、怒り奮闘中のドノヴァン軍隊長はそのまま彼女についていき、まんまと彼女の戦略の上で踊らされる最中だった。
まるで、害獣を捕獲する際に使用する「囲い罠」とでも言うべきだろうか。
女帝ミアという名の餌に群がる害獣のように、
ヨリントン軍はいつの間にか、デルツ軍の陣地に入ってきていた。
女帝ミアが囮として陣地に戻り、そして文字通りに一千の軍隊を三百の兵数で囲んだ。
二百の兵は投石器を構え、中央に集められたヨリントン軍およそ千人に巨大石と火炎瓶を一斉に発射させた。
一斉攻撃を食らわせるも、ヨリントン軍は全滅せず、二百ほどの兵が火傷を負いながらも、かろうじて残る力で剣を構えた。
ドノヴァン軍隊長は周りの兵に守られ、ほぼ無傷ではいたが、
すでにデルツ軍兵は次の攻撃に備えていた。
残り百に余るデルツ軍の兵は全員、弓を引き、中央に集められたヨリントン軍の残敵に向けられ、一斉射撃した。
——ヨリントン軍一千人の大部隊に対して、その半分以下の三百人の部隊をもってしても、女帝ミア率いるデルツ軍は彼女の大胆な戦略によって、圧勝した。
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