第1話 コスプレした私は最推しの女帝ミアに成り代わっちゃった

 私は意識を失った。

熱中症だ、これ絶対。

せっかくのコミケだったのに〜。


「——・・・」


 どこからか声が聞こえた。

誰か付き添いで看護してくれてるのか。

迷惑をかけてすみませんー……


「ミア!」


——わっ!


 思わず飛び起きてしまった。

一応、病人なんだがそんな大きな声で呼ばれなくても……

熱中症で頭痛がしてたけど、今の大声で余計に痛くなったぁ。

誰ですか、叫んだのは……


 ショボショボした目を両手で擦って辺りを確認した。

なんか薄暗いテントみたいなんですけど……コミケの救護室はこんなにショボいものなのか。

なんか残念だけど……

しかも、寝心地悪いベッドだったし。


 この人か、さっきから私を起こそうとしてるのは。

ってなんかコミケのスタッフっぽい服装じゃないんですけど。

暗くてよく見えないけど、

なんかコスプレしてない? この人。




って…………もしかして……




 シド様のコスプレじゃない!?


 流石に興奮を抑えきれなかった。


女帝ミアの右腕で私が絶賛リアコ中のシド様じゃん!


 衣装、グッド。

 メイク、グッド。

 セクシーな肉体、ベリグッド。


 ってこの人、顔立ちが北欧っぽいんだけど、もう全部が完璧じゃない?このコス——


「How come……」


え、英語?


 急に喋り出した北欧っぽいシドのコスプレをした男は、英語で話しかけてきた。


 アニメドュで英語学習した美亜は、英語の理解は問題なくできた。


 「どうして?」 って何の話?


 「あの、スタッフの方ですか?」と英語で聞くも、

シド様コスプレ男は眉を顰めてきた。



「スタッフ? 頭がおかしくなったか、ミア……軍医でも呼ぶか?」


 初対面で、「頭おかしくなったか」、は失礼すぎるってもんだろぉ。

って軍医? なんの話?


 頭を傾げた美亜を見た男は、呆れた様子で美亜の腕を掴み、テントの外に連れ出された。


「ちょっ。強引すぎ——」


 って……






どこよ、ここぉぉぉ!!!



 目の前に広がったのは、壮大な草原景色。

兵が、ズラーっと美亜の入っていたテントを向くように並んでいた。



 え……ほんとにどこ、ここ。



 さっきまでコミケにいたよね!?


「だから、ミア。いや、女帝ミア。この圧倒的に不利な戦いを打破する指示を送ってくれ。」



 え? 



 女帝ミア? 



 指示?




 とりあえず大事なことを聞いてみよう。



「ワッツマイネーム」



「………………バカにするなよ、ミア=デルツだ」



 ミア=デルツって女帝ミアの本名……



 じゃあ私……女帝ミア?

いやいやいや違います。

絶対違います。

ただ女帝ミアにコスプレしてるオタクです……けど……



 およそ三百の軍勢が一斉に美亜に頭を下げて、片膝を地面につけた

甲冑の音がガシャガシャと重なって聞こえる。




っていうことは、何らかの手違いで、“コスプレした私は最推しの女帝ミアに成り代わっちゃった” ってこと!?



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