短編
ローズ(相崎 春花(あいざき しゅんか))
リリィ
二人乗りのスポーツカーは真っ直ぐ走るハスキー犬の様に真夏の道を駆け抜ける。左手には海岸に誰もいない海が広がっている。素晴らしい光景だ。ただ一つを除いて。
明日、隣で運転している相棒は花と散る。
僕らについて説明しようか。
隣で仏頂面で運転している相棒は僕含めた協会全員からリリィと呼ばれている。僕はリリィやその他の人からローズと呼ばれ、お互いに本名を知らない。
リリィと僕は同時期に協会に入った。僕は父親や僕に手を上げる母親から逃げるため、リリィは「例え道から外れてようが食べてけないよりマシ」と言う養母に連れて来られた。
昔のリリィは真っ直ぐだった。「教育」に泣く今は亡き同期を慰めたりした。純粋だった。
フグは毒のある環境で育つと毒を蓄え、毒のない環境では無毒となる。僕は毒のある環境で育ったフグでリリィは毒のない環境で育ったフグだ。
やがてある「教育」でリリィは無口になった。
閑話休題。
明日散るリリィは散ってしまう。利権と言う汚い足によって汚れ躙られるリリィ。
リリィは最後まで純粋だった。百合と言う第二の名前が皮肉になるくらいに。
僕は貴方が最期まで幸せでいて欲しい。幸せなんて僕とリリィで指すものが違うのを祈るのも違うかもしれない。でも、リリィはそんな矛盾を愛してくれる。「ローズは矛盾している」、そう言いながら僕の抱えている矛盾ごと愛してくれるリリィ。
僕は人を愛する余裕はない。貴方が散る前に人を愛せる人になりたかった。僕の人生最大の後悔。
リリィ、そして神様。こんな僕を許してください。
××
五十君 海会(いいみ みあ)
ルーシー
僕はから海に入水する。気分は驚くほどいい。最愛の存在であるルーシーと一緒に入水する。僕の愛しいお人形さん。
この世界は僕が生きるには汚い。だからこの世界を旅立とうと思う。最愛のルーシーを連れて旅立ちます。
貴女を愛さない限り僕は生きているとは言えない。僕にとって生きるとは貴女を愛すると言うことですから。僕の名前も過去も「愛する」と言う今の副産物でしかないのです。貴女のためなら名前も、過去も何もかも捨てれます。
それに、この世界は僕から貴女へのこの愛を認めない。おかしいと言い張る。
貴女への愛が認められないこの世界なんて僕は要らないし、価値を感じない。
僕の人生はルーシーのためにあるし、ルーシー基準に僕の人生は廻っている。でも他人からすればこの恋心は「現実逃避」や「厨二病」であり「いつか目が覚めること」だ。
キラキラと満たされる オズワルド @OswaldRip
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