第一回さいかわ水無月賞 豆は賞について

第一回さいかわ水無月賞にご参加いただき、誠にありがとうございました。

主題、豆ははこ先生による選考の結果、下記を豆は賞とさせていただきます。



アマサギ/佐藤宇佳子

https://kakuyomu.jp/works/16818093078588237251

(敬称略)



ご講評(豆ははこさんより)


 佐藤宇佳子様『アマサギ』。

 こちらを『豆は賞』とさせて頂きます。


 まず、冒頭。

 雨だ。という表現が、少しあとにあります。

 いきなりの雨ではなく、窓を開ける描写から始まるのです。

 型押しガラスの窓と、クレセント錠。

 開けたあとには何が、と見ていきますと、主人公は手のひらをなめて雨を味わうのです。


 そうか、この話は、雨と過ごす主人公の話なのか。

 そう感じておりますと、読者は、もう一方の主役とも言える存在と出会います。

 鮮やかなオレンジ色の混じる白。

 タイトルにございます、鳥。アマサギです。


 少しだけ窮屈な女物のサンダルをつっかけて外に出る主人公。

 サンダルもそうですが、板張りの廊下などの描写も、主人公が「る」ことを示してくれております。

 庇護下にあるべき年齢なのか、または、狭い空間から出ることがかなわないのか。

 保護者とは言いがたい存在は動物のなまぐさいにおいで示され、雨と、アマサギは生き生きと描かれます。

 生きる意味と、出会いと。雨とアマサギはまだまだ多数のものを秘めているようにも思えます。


 常にではないものの、夢のような雨の中。アマサギと共にその中にいられるのであれば、主人公はある意味幸せだったのでしょう。


 ですが、そうとは言いがたい結末が待っております。読者にも、ある意味では予想ができたことかも知れません。

 ただし、それは救いがたいというものではないのです。


 自分は、この結末で、またしても本作に惹きつけられました。


 本作の結末をどう感じ、想像するのか。

 それは、読者に委ねられます。


 決別なのか、成長なのか。

 雨と、アマサギだけが知っている。 

 それもまた、ある意味心地よい。


 万人が主人公に共感できるかと言えば、そうではないでしょう。

 然しながら、雨とアマサギとを通して何かを得た主人公の姿と、常に存在を示していながらも、くどくない、『雨』。

 そこもまた、素晴らしかったです。


 佐藤宇佳子様、誠にありがとうございました。


 多分、皆様以上の驚きをもって受諾をいたしましたゲスト審査員。

 縦書きにしまして、何度か全作品を拝読し、何作かを選ばせて頂き、結果、「これになるかな……」と初読で感じておりましたこちらの作品が『豆は賞』となりました。


 水無月賞ゲスト審査員にお呼び下さいました犀川よう様、ゲスト審査員の先輩であられます惣山沙樹様。そして、ご参加頂きましたすべての皆様、ご参加を検討下さいました方々、お読み頂きました皆様方に、厚く御礼を申し上げます。


謝辞及びひとこと(犀川より)


 お忙しい中、豆ははこさんにはご自身がお好きな一作を選んでご講評していただくことができました。わたしが「今回は卯月賞の半分くらいの参加だから負担ないはず!」といいながらも60作近い作品を読んでいただきました。本当にありがとうございました。

 今回は佐藤さんの作品を選ばれました。これまた最終選考対象作品外からの選出となりまして、選者によってこんなにも違うのかという波乱な状況になっておりますね。

 おめでとうございます。

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