第一回さいかわ水無月賞 惣山性癖賞について
第一回さいかわ水無月賞にご参加いただき、誠にありがとうございました。
主題、惣山沙樹先生による選考の結果、下記を惣山性癖賞とさせていただきます。
追憶の雨/大隅スミヲ
https://kakuyomu.jp/works/16818093079197716365
(敬称略)
ご講評(惣山さんより)
今回私の性癖を貫いたのは大隅さんの作品でした。ポイントは「叔父」です。親の兄弟。親戚ではあるものの、その距離感は人によって近くも遠くもある存在。私は個人的にコンプレックスを抱えているので「叔父」「伯父」というものに弱いのです。これは講評なのでその事情は説明しませんが、とにかく「ヘキにきた」ということだけご理解ください。
ですが、選出した理由はそれだけではありません。まず、主人公の語り口が心地よく、暗い内容ではありますが文章としてとても読みやすかったのです。ところどころで砕けた表現を使っていたところが良かったと思います。登場人物の相関関係もすぐに理解できましたし、情報の開示の仕方、つまりは構成が工夫されていると感じました。ただ、おそらくそれは短編を書き慣れていらっしゃるから、でしょうか。大隅さんにとっては呼吸をするかのように自然にできているところなのだと勝手に想像しています。
そして、内容です。「叔父」がとにかく嫌な奴。酒は飲むわ殴るわ(主人公の推測ではあるが)ヤッてるわでどうしようもない人物だとズバズバ説明されます。その「叔父」を川に突き落とした主人公。義父から明かされた死因。けれど、「誰が叔父を殺したか」は明らかにならず、読み直して整理し、考察したくなるという、読者への「揺さぶり」がある作品でした。
最後の義父のセリフの表現がとても好きですね。それまでは一貫してカギカッコを使っていないのに、「お前は殺してないよ」だけは使用している。ここまでの「タメ」があった分、この一言がズシリと耳に届くかのようです。
それにしても、短編に留めておくには勿体ない設定だと思いました。私は家族間のドロドロ模様を好物としているため、「叔父」の設定だけで「美味しいなぁ」と舌なめずりをしてしまったのです。村では「叔父」の死や主人公家族はどう噂されていたのか、主人公と弟の関係はどのようなものなのか、などなど、妄想を膨らませてくれる要素がたっぷり詰まっていました。
今回こんな賞の名前をつけてしまい、受け取られる大隅さんがどう思われるのか不安なのですが(笑)、私の「この作品好きです!」という想いが伝わればいいなぁと思っております。ご参加ありがとうございました。
謝辞及びひとこと(犀川より)
お忙しい中、惣山さんにはご自身がお好きな一作を選んでご講評していただくことができました。わたしが「今回は卯月賞の半分くらいの参加だから負担ないはず!」といいならがも60作近い作品を読んでいただきました。本当にありがとうございました。
今回は大隈さんの作品を選ばれました。初の最終選考対象作品外からの選出となりますが、やはりそれだけどれが受賞してもおかしなくないレベルの戦いだったのだなと、改めで感じた次第です。
おめでとうございます。
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