第2話 発着場

 その巨大な物体の一部に、様々な形の乗り物が発着している場所が見えた。それは一つではなく膨大な数で、何をもってして一つと区切ればいいのかわからなかったけれど、発着場の数が数え切れないほど多く、それと同時に乗り物の数もかなり多かった。


「さっきのワープはなに! ここは宇宙……?」


「ああ、あれは銀河群移動だよ。この乗り物だと銀河群を移動するのが限界だ。高級品になると別宇宙まで行けるらしいが……私でも見たことはない」とシビルが言った。


「安物で悪かったな、俺たちは物を大事にするんだ。高級品がなんだってんだ」サンヴィはなんだか馬鹿にされたように感じたらしい。


「彼らの種族は貧しい。許してやってくれ。それに高級品とは言ったが、買えるようなものでもない」


 異次元のやりとりを見て呆気に取られていると、その恐ろしさにじわじわと気づき始めた。


「ちょっと待って! ここは別の銀河ってこと? ありえない……」太陽系がある銀河どころか、地球からも、ましてや日本からも出たことがない彼の頭はパンクしていた。


「そうなるな。だってここの交流点は結構でかいんだぜ。地球がある銀河の交流点じゃちょっとな……」まるで当然の知識かのようにサンヴィが言う。


「もういいや……。ついていけないよ」


 そのまま発着場へ向かって他の乗り物を避けながら着陸した。途中、ぶつかりかけたけれど乗り物は互いに反発しあって接触しなかった。不思議な感覚だ。


 大きな発着場へ着陸して降りると、乗り物は着陸した地面に吸い込まれていった。地面には何かの文字が書かれていたけれど、何を書いているのかはわからない。周りをよく見ると地面から乗り物が出てきているところもたくさんあった。


「wpvJ"mg?wJmg.mt"mg.dMmdgd.」


 真隣で降りた異星人が話しかけてきているようだ。シビル、サンヴィと違って何を言っているかわからない。


「ああ、そうだ。この宇宙の翻訳機を渡していなかったな。私たちが耳に着けているものと同じものだ。……安心するといい、サンヴィの物よりは高級品だ」一言付け足してシビルが言う。


「なんでもかんでも高級品を使うと性根が腐っちまうぞ!」貧乏なのがその口調からも感じられる気がした。


「目に着けるタイプもあったんだが、今は中々手に入らない。なにか文字などで気になるものがあれば聞いてくれ。ちなみに翻訳機は話をするどちらかが付けていれば会話が成立するように作られている」


 翻訳機を耳に取り付けた。すると今まで聞こえていた周りの雑音が全て母国語に聞こえる。先程の異星人の言葉も自然に聞こえてきた。喉に肉が詰まったような、嫌味な声に聞こえる。


「お前、人間か? 久しぶりに見たな。あんまり一人で居ると喰われちまうかもな。昔食った人間は美味かったぜ」


 大きすぎる口を開けて笑うと、冗談だ。そいつらから離れるんじゃないぞ。と言って大きすぎる荷物を背負ってのそのそと歩いていった。


「あまり気にするな。ここには様々な種族の者が集まっている。人間の型にはめて考えてはいけない。さあ、我々も行こう」


 シビルがそう言うと二人は歩き出した。先程の大きな口の異星人が言った言葉を鵜呑みにして、二人の背中にぴったりとくっついて歩いた。


「……あの地面の文字はなんて書いてあるの」彼はさっそく気になった地面の文字について尋ねた。


「あれは人間で言うところの数字が振ってあるだけだ。地球もそうだろう?」シビルが簡潔に答える。


 しばらく歩いていると、明らかに生物の数が増えてきた。本当に様々な生物が歩いている。中には歩いていない者もいるようだ。


 発着場からどこかへと続く道の端に店のようなものがぽつぽつと並んでいる。そこで異星人が何かを売っていたり、それを買っていたりする。


「あそこで何か買えるの?」


「そうだな、あれが店だ。貢献度で品物と交換できるようになっている。貢献度と言っても定義が曖昧なもので中々説明もしずらい。とりあえずはお金だと思っていればいいだろう」


 サンヴィがなにやら気味の悪い食べ物を買っていた。それを訝しげに見ていると、お前も食うか? と差し出されたけれどきちんと断っておいた。まだ自分が突然置かれたこの状況にも追いついていない状態で未知の食べ物は怖すぎる。せめて三日は我慢しよう。


怯えながら二人について歩いていると、やがて門のようなものが見えてきた。それぞれ身分を証明するものを出しているようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る