第1妄想 うがっこエリアへ
うがっこエリアへ向かう道中も危険がいっぱいなのを俺は知っている。
この世界は文明が発達している。
なぞの四角い箱が物凄いスピードで道を平気で走っている。
あれにぶつかったら、いくら勇者の俺でもきっとひとたまりもない。
それに野生のモンスターがたくさん生息している。
今もほら、黒い鳥のモンスターがいる。あのモンスターはスカラだ。
基本的にはゴミを漁っていることが多いが、たまに攻撃的な種族もいるやや危険なモンスターだ。
「カァーカァー!」
まずい! 威嚇されてる。この道を通るのは危険か?
だが別の道はもっと危険があることを俺は知っている。
特に人型モンスターがたむろっているあの遊び場付近は危険だ。所持金を失う可能性すらある。
どうする……?
「あれ? 勇者じゃん。なにやってるのー?」
戸惑っていると背後から女の子の声が!
この声はヒロインで幼馴染のミサキだ!
「べべべべべべ別に何も……」
尻すぼみな返しになっちゃったけど、女ってこういうはっきりしないキザな男が好きだもんね。
「ふーん」
照れちゃって。相変わらず可愛いな。
「おうミサキ。待たせたな」
出たな! ミサキをたぶらかすダイキ!
いっつもミサキを困らせやがって。俺の永遠のライバルだ。
「あれ? 勇者じゃん。なに? 一緒にうがっこに行く?」
ふん。誘ってきやがって。俺は一匹狼だ。
顔だって合わせてやるもんか!
下を向いたまま首を左右に振って答える。
「んじゃ。またうがっこでな」
くそ! ダイキめ! またミサキを無理やり引っ張って行きやがって!
可愛そうなミサキ。待っててくれよな。魔王と魔女のクエストをクリアしてレベルアップしたら、ダイキの魔の手から救ってあげるからね。
仕方なく俺は、うがっこエリアへ向かう道のりを、人型モンスターが出現する遊び場がある通りを通ることにしよう。
「はぁー。ヤンキーがいっぱいいるからヤなんだよなぁ」
ため息と共に本音が出ちゃった。
違う違う。ヤンキーじゃなくて人型モンスター。
憂鬱な気持ちで俺は遊び場へ向かった。
●
彼氏のダイキを待っていると根暗のクラスメイトが目の間で立ち止まっていた。
最近いつも遭遇するんだよね。
何考えてるか分からないし、とりあえず挨拶だけしとこ。
「なにやってるのー?」
「べべべべべべ別に何も……」
どもってるしモゴモゴ言ってて何言ってるか分からないし、正直気持ち悪い。早くダイキ来ないかなー。
「おうミサキ。待たせたな」
来た来た!
「一緒に学校に行く?」
え? 誘うの?
あ、首を左右に振ってる。よかったぁー。
私は、ダイキと手をつないで学校へ向かった。
「あいつ最近いつも朝いないか?」
やっぱりダイキも気づいてたんだ。
「ちょっと気持ち悪いよね? ストーカー?」
「ミサキに気があるんじゃね?」
「えぇー! ちょっとやめてよー」
ダイキがハハハ。と笑うけど、もしかしたら本当に私に気があるのかも……
だとしたらそれとなく気づかせないと。恨まれないように気を付けながら。
●
やっぱり治安が悪いなー。
人型モンスターがたくさんいる。
この付近は人型モンスターが仲間を呼んで、俺ら冒険者を狩っている狩場だからなー。
あ! 同じパーティ―のれんが人型モンスターに襲われてる。
どうしようかな……
あいつを囮にしてうがっこまで向かう方がいいかな。
でもな。うがっこで一緒に行動を共にしてくれるのはれんくらいしかいないしな……
「あ、ゆ勇者」
げ、声かけてくんなよ。
「ややぁおはよう」
上ずった声になっちゃったじゃん。
ほら見ろ、人型モンスターが近づいてきた。
「おぉ勇者。今日はいくら持ってんの?」
所持金はクエスト報酬でしか貰えないんだから。
「んだよ1000円しかねーのかよー」
勝手に背負い袋を漁ってくるし、こーゆーモンスターは黙っているのが一番危害が少ないんだよな。
ほら、仲間を引き連れて遊び場へ入っていった。
……あれ? 俺も連れて行かれてるんだけど? あ、れんもだ。まぁれんはクエスト報酬をたくさん貰ってるからな。
「まずはこれな」
肩に手を置いて1つの機械を指さしてくる。
「俺はこれー」
別のやつは他の機械で遊びたいようだ。
仕方なく俺は1000円を銀貨に変えて、その機械で遊ばせてやることにした。
こいつらに捕まったら最後。うがっこに向かうのが遅くなるな……
●
「よー。今日も一緒にゲーセンで遊んで行こうぜー」
うわー。またヤンキーだ。
こいつらホントたち悪いんだよなー。
あ、あいつも捕まってる。一緒のクラスのやつだ。
あいつは1000円しか取られないからいいよな。俺なんていつも1万近く取られてるよ……
「俺らがお前からお金取ったらカツアゲになっちまうからよー。このゲームおごってくれや」
ホントにたちが悪い。
「俺はこれな。一緒にやろうぜ」
こうやって一緒にやることで無理やりじゃないってことにしてるんだろ。
くそが! 死ねよ! 死ね死ね死ね死ね死ね!
2時間くらい経っただろうか……
ようやく解放された。
「疲れたね」
一緒のクラスのやつに声をかけるけど、小さな声でうん。だって。
ほんとこいつってコミュ障だよな。一緒にいると俺も同じだと思われる。でもクラスで俺よりも下なのこいつくらいだしな。どうせこいつ彼女もいないんだろうな。
「また学校遅刻だね……」
また小さな声でうん。だ。
はぁ。毎日憂鬱だなー。
●
うがっこエリアへ入った。
一緒のパーティ―のれんと一緒だから、そこらのモンスターは大して怖くない。
やっぱり仲間はいいものだ。
人型モンスターに遭遇しなければ、もうとっくにうがっこに着いていたはずなのに。
あいつらめ! レベルアップしたら倒してやる!
それにしても俺はちょっと気になることがある。
うがっこに着くまでまだ少し時間があるし、その気になることをれんに聞いてもいいのだろうか?
失礼に当たらないだろうか? 余計なお世話では?
やはり俺は人の気持ちを考えるのが上手だな。
ただでさえキャーキャー言われる存在なのに、人の気持ちまで考えてしまう。
こういうところがきっと高嶺の花的な存在なんだろうな。
だからみんなあまり俺と話したりしない。
れんだって隣を歩いているのに、基本は無言だ。
こういう時は、俺から話題を降った方がいいか?
どうせ気になることがあるし。
どうやられんに最近彼女ができたという話しを、同じパーティ―のともやから聞いたのだ。
ともやは元々オンラインゲームをしていた、仲良くなった女の子と付き合ったと聞いていたけど、れんは二次元にしか興味がないんじゃなかったっけ?
「ともやくんから聞いたんだけど」
勇気を出して聞いてみよう。
「ん?」
唐突に言われてれんが驚いた表情をしている。
やはり核心をいきなり突くのは失礼か?
いやだが、もはや引けまい。
「れんくん。彼女ができたんだって?」
驚いたように両目を見開いている。
俺の情報網の多さにびっくりしているのかもしれない。
「勇者には秘密にしておこうと思ったんだけどな」
「え? 何で?」
ちょっと仲間外れにされてる気がして嫌だな。
「だって勇者って彼女いないじゃん? 自慢してるみたいじゃん」
「なんだよそれ! 彼女くらい俺にだっている!」
ムキになって嘘ついてしまった。
いや。嘘じゃない。幼馴染のミサキと俺は結ばれる運命だから。
だけど確かに正確にはまだ付き合ってはいない。
ダイキってゆー邪魔者もいるし。
それよりも問題はこっちだ。
「ふーんそっか。じゃいつか彼女見せてくれよ。じゃ、俺先行くから」
つい怒鳴ってしまったからな。
れんがビビッて俺から逃げてしまった。
まずいぞ。うがっこでペアを組む場合、いつも俺はれんと組んでいた。けどれんが俺にビビッて逃げてしまうと俺はボッチになってしまう。
まぁ高嶺の花的な存在だからボッチと言う言い方が正しいのかは分からないけど、でも一緒のパーティ―の仲間同士で喧嘩をするのはよくない。
そうだ。同じ仲間の幸せだ。ちゃんと祝ってあげよう。
「おーい! 待ってよー」
俺はれんを走って追いかけた。
そうこうしている内にうがっこにたどり着いた。
●
やっぱりこいつとは、表面上の付き合いしかできないな。ともやは少し自慢屋っぽいけど、コミュ障のこいつよりはマシだ。
確か今日は英語の発表がある。ペアを組むし今の内にともやとペアを組もう。
それに、彼女と上手くいく方法をともやに聞くのも悪くないな。
俺はさっさとこいつを置いて行って学校へ走って向かった。
どうせこいつは俺よりも運動神経悪いから走っても追いつけないだろうしな。
その後、れんは先生に遅刻を理由に怒られそうになったが、いつもの事情だと説明すると、許された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます