第6話 何か来るぞ!鳥か?飛行機か?ドラゴンだ!
長い廊下の先には開け放たれた扉があった。人間の五倍以上の大きさがある、ここには私の五倍の身長を持つ何かがいるのかな?もしそうなら是非とも一度お目にかかりたい。
扉を越えた先は、不可思議な空間だ―――
「趣味悪っ!」
金色クソでか像は、なんとなんと先導するディケの姿だったのだ!自分の巨大像をめっちゃ目立つように設置するなんて、これ程の悪趣味は無い。というか、その大きさがそもそも異常である。
私達が出た空間は、やはり円筒形の塔の中。その直径は……正直分からない。だって向こう側が見えないんだもの。橋の様に道が架かっている事から、多分向こう側があるんだろうなー、と分かるだけ。その途中にも大きな円形フロアと建物があったりして、建築基準法ガン無視である。
で、その道から下を覗くと……底が見えない。漆黒の闇が満ちていて、私がいる場所と同じように道が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。目を凝らすと、ずーーーーっと下の方の道にも動く影があるのが分かった。つまりそこにも人がいるという事だ。
上を見ても塔は続いている。下と同じように、見える範囲の向こうは闇でつまりはそれだけあり得ない程の大きさの空間だという事。なんかちょっと怖いな、この場所。
で、で、で、だ!
悪趣味なディケ像はそのずーーーーっと下の更に下から私のいる階層までの大きさなのだ。え、これどの位の大きさ?一キロメートルとか有ったりする?上空一万メートル?
「うわぁ……趣味悪いなぁ」
「二度も言うか、お前。どうせ私が作らせたとか思っているのだろう」
「え、違うの?」
「違うわ、阿呆」
まさかの回答。この尊大おチビなら「私を敬うのだー!その証として我が姿を模した像を建立せよ!」とか言ってもおかしくはな
バンッ
「痛ぇっ!」
「学ばぬ愚か者め」
こ、今度は私のぷりちぃなお尻を……っ。
「ははは、これでは案内が終わりそうにありませんね」
「ディアード、お前も殴られたいか?」
「滅相もございません、遠慮致します」
私よりずっと付き合いが長いのだろう。ディアードさんはディケのあしらい方を熟知している様子。というか、二人とも一体何歳なんだろうか。
「ディアードは三百七十三。私は億劫になって千から先は数えていないな」
「ディケ様、私は三百二十三歳です。五十だけ余分です」
「そんなものココでは誤差だ、誤差」
「はー、二人とも長寿~」
これぞ異世界ですな、私が知る摂理を逸した常識がある。ディアードさんの三百歳超えも驚きだけど、ディケの千歳オーバーも驚愕だ。エルフか、エルフなのか。
「長寿と言いますか、ここでは寿命がありませんので。我々補佐官もそうですし、死者の魂も然りです。ディケ様に至っては神ですから、そもそも寿命など……」
「え、そうなの?私も不老不死?人類の願いはここで叶った?」
「馬鹿馬鹿しい。死なぬ死ねぬは、ただ退屈なだけだ」
「千年も生きてればそう思うか~」
誰もが羨む不老不死。でも時間が有り過ぎるというのも良くないのか。転職活動を一時停止してたあの時がずーっと、未来永劫続くと考えたら辛いかも。
「いえいえチホさん、そうではありません」
「ほぇ?」
あ、違ったか。
んん?ディアードさんって私の思考読めるの?
そんな素振りは無かったけど。
「ディケ様は少なくとも一億年は存在されています」
「は!?」
「最大ならば四十六億年を超えます」
「ほわぁ!?」
常識が通用しない、この小っちゃいのが地球の同級生だとぅ!?
……はっ!
という事は、超弩級のロリババアなのか?のじゃロリか!?いや尊大系ロリか!
「時々、お前みたいな事を考える奴がいるな」
「がふ……っ。ノーモーションで腹に木槌が……っ」
私のお腹にめり込むウッドハンマー。まったく動きが見えなかった、何という早業……っ!これが四十六億年の経験値、レベル四十六億の力かッ!!!
「ぐぐぐ……あ、ところでこの像は自分で作ったんじゃ無かったら誰作?」
「立ち直りが早いな、お前」
いやだって気になるじゃん。誰かの像を作るにしたって、こんな常識外れの大きさで建立する人。東京スカイツリーでも大事業だったんだし、これ程の物を作る音頭を取った人物なんて。
「チホさん、それは……あ」
ディアードさんが説明してくれようとした、その時。彼は上を見て言葉を止めた。私もつられてその方向に目を向ける。
何か……なんか、飛んできてる?
っていうか、大きくない?
いや待て、あれ、あれって!
「ドラゴンだ!!!!」
黒い鱗を持った龍、いわゆる西洋龍って奴だ!
というか凄い速さで急降下してきてるぞ!ここに墜落する!?
ドォンッ
「うぎゃぁっ!?」
途轍もない衝撃と暴風。吹っ飛ばされそうになった私の身体をディアードさんが捕まえ、なんとかかんとかその場に止まる事が出来た。
顔を上げる。
そこには私達を見下ろす巨大なドラゴンがいた、多分首をもたげた状態で十メートルくらいは軽くある。その龍はゆっくりと口を開いた。あ、火炎のブレス吐く?私、丸焦げになる?死んだのにもう一回死ぬ?
焦る私。でもディアードさんもディケも一切動じていない。おや、これは?
「ディケ様ァッ!本日もお美しくあられますなァ!」
「喧しいぞ、ドラクル」
興奮した様子の黒龍に対して、ディケは何とも鬱陶しげな対応。なるほど理解した、この龍さんがディケ像の建立者だ。うん、間違いない。それくらい目が爛々と輝いてる。狂信者か、狂信者なのか。
「失礼致しましたァッ、我が主ィ!」
「まったく理解していないな、相変わらず」
言葉を発するたびに翼を動かすせいで風が生じる。ついでに言うと、私は暴風を受けて吹っ飛ばされそうになる。なんとも騒がしく滅茶苦茶暑苦しい龍、ドラクルさんはそんな人物……龍物であった。
「こいつがアレを作った阿呆だ」
「あ、やっぱりそうなんだ」
脳内を読んだディケが正解発表。うん、まあ、答えが書いてあるページを見ながらテスト受けるくらい簡単だった。多分百人が百人、同じようになるんじゃないだろうか。
「おやァ?そちらのお嬢さんは初見ですなァ?」
「あ、新しく補佐官になりました、
「ほうほう、これはご丁寧にィ。吾輩はドラクル、ドラクル・フォン・ドラード。栄光ある龍の貴族の出であり、そしてェッ!」
あ、これは。対ショック姿勢が必要だ!這いつくばれ、私!
「気高く美しいディケ様の配下であるッッッ!」
ズドォンッ
「ぎゃーっ!」
台風を超える大暴風、車がぴゅーんと飛んでいく風。最早竜巻だよ、コレぇ!実際、周りの人が飛んでいってるし!って、アレ大丈夫なの!?
「止めんか、アホタレ」
ゴォンッ
空中に出現した巨大な木槌が、黒龍の頭をぶっ叩く。
「おお、これは失敬失敬ィ」
大してダメージが無い様子の黒龍。さすがはドラゴン、略してさすドラ。申し訳なさそうに彼は頭を掻く。いや、それよりも。
「あの、人が吹っ飛んで落ちていったんですけど……」
「問題ない。どうせお前たちは死した魂、高所から落ちた程度でどうにかなるものではない。下の階で茶でも啜って帰ってくるだろう」
「わぁ、なんという滅茶苦茶具合~」
常識も何もかも破綻してるぞ、このあの世!
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