宙を泳ぐ

アイスの冷たさ ガク

「それじゃあ、ミーティングはじめます…。えっと」

「イエーイ!」

「黙れ。先輩が何か言いかけてただろ。」


 なんだよせっかく盛り上げてやったのによ〜。

 そう。俺らは絶賛ミーティング中だった。夜ご飯を食べ終え、各々好きなアイスを持って椅子に腰掛ける。ちなみに俺は蜜柑のアイスだ。どうやらこいつ、蜜柑がまるごと使われているらしい。迷ったらこれ買ってるかもなぁ。


「このミーティングは、週に1回くらいの頻度でやってて、全体で共有したいこととか、これからの方針とかを話します…。」


 ケイトが1番普通の、どこにでも売ってるバニラアイスをつまみながら言う。あのアイス、たまに食うとうめえんだよなぁ。パッケージが青くて分かりやすいし。

 コウは何かよく分からないものを食っていた。グレープフルーツ味と書かれた、氷…らしい。縦長のカップに入っていて、そこから手でつまんで、口に放り込んでいる。

 メイは有名なチョコレートアイスだった。小さくて丸い、中にバニラが入ったもの。いかにもメイっぽい。


「早速だけど、メイの書類…本部にOKされました…!」

「おー!あんなのでも通るのか!」

「懐が広いな。」

「いや、まあけっこうギリギリだったらしいけど…。だからメイも、正式にここにいていいからね。」

「んー。」

「えーと…なにか質問ある人?」

「おいもう終わったぞ。」

「…それじゃあこの際ハッキリさせておきたいんだけど…。メイってどのくらいまで大きくなれるんだよ。」

「メイ?メイは……分かんない!やってみる!」


 メイがギュギュッと縮まって、ドンドン体が大きくなる。髪の長さはほぼ変わらず、体とツノだけ。


「…このくらい…ですかね。28、9くらいです。」


 やっぱり俺と同い年くらいが限界だった。っていうか…。


「…なんで敬語なんだ?」

「分かりません。癖なんです。」

「ははっ、この中だったらコウが1番ガキだな。」

「いやメイは中身5歳だから。」


 続いて少しぼーっとして体を縮める。今度はケイトたちと同い年くらい。


「これで15歳くらいかな。」

「おいまた口調が変わったぞ。」

「おもしろ〜い。」

「で、これが…9さい!ちょっと小さくなった〜。」

「…このくらいが1番ベストじゃね?」

「それな。」

「…あー!疲れたー!」

「いざ元の姿に戻ってみると随分ガキだな。」

「うるせー。」


 メイの口調が時々荒くなる。それってたぶん、コウと俺のせいなんだろうなぁ。

 アイスを食べ終わって少し疲れたメイの眼はトロンとしている。頭がコクコクと揺れている。


「布団で寝ろよな。」

「分かってる…。」

「…あっ、寝た。寝付くの早すぎだろ。」

「じゃあ後で運んであげよう。」

「そういえば今日、病院行ってましたけど、風邪ですか?」

「あーいや、薬が切れちゃっただけ。気にしないで。」

「…分かりました。それと…お前、人間食ったことあんの?」

「はぁ?あったら今頃こんなところにいねぇよ。」

「…本当に?…人間オークションは?」


 その瞬間、息が止まったかと思った。

 なんで。なんでなんでなんでなんでなんで。

 なんでお前がそれを…?


 コウの目線がひどく冷たく、鋭かった。

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