事故るぜ! ケイト

「これほんとに大丈夫なのかよ。」

「大丈夫だろー。」

「不安しかないんだけど…。」

「いざとなったらメイがやるー!」


 なんやかんやと話し尽くした翌日。僕らは車に乗り込んでいた。仕事なのだ。すっごく平和な仕事。ネコを捕まえるのだ。

 え?と思っただろう。でもうちは基本的に依頼は断らない。今回のネコだって『なにか』だし。

 まず、そのネコが最後に現れた場所に向かい、そこから手分けして捜索する。車なのも、ここから少し離れているのと、網やらケージやらがあるためだ。

 車を運転できるのは大人だけ。…まあこの職業上、僕やコウも運転できなくはないけど。

 ガクが運転席。僕は助手席。メイとコウは後部座席に座る。いや1番年上はガクだけど僕らは不安しかない。だってガク、目がないんだよ!?本人曰くあるらしいけど、無いように見えるんだよ。


「じゃあ出発するぞー。」

「はーい!」


 …5分後。車内はパニック状態に陥った。


「きゃー!はやーい!」

「待って次カーブ…うわっ!頭打った…!」

「ガク!やっぱ止まろうよ!ストップ!」


 怖い怖い怖い!

 カーブで減速せず、一時停止も無視。スピードも高速道路くらい出ている。でも急ブレーキも多発している。いくら俺らが多少破っても大丈夫な職だからと言っても、これは怖すぎる。なんならちょっと酔ってきた。


「なんだよー。ここからが楽しいところなのによぉ。」

「…誰運転する?」

「メイやりたい!」

「お前できんのかよ。…じゃんけんで決めましょう。」


 …そして決まったのは僕だった。…が。


 ボンッ!


「…絶対車からしちゃいけない音してねぇ…?」


 ガガガッ!


「先輩大丈夫ですか…?変わりましょうか…?」


 ドンッ!


「…チェンジ!」

「あれ…?大丈夫だと思ったのに…。」


 そういえば忘れていた。僕、機会音痴だった。運転自体は安全なものの、変な音が鳴り続けている。

 そしてコウとなぜかメイがじゃんけんした。


「…あ。」

「あ?」

「え?」

「勝ったー!」


 勝ったという声はメイから上がった。一瞬にして空気が凍る。


「おいお前ら死ぬ準備はできてるか?今生に別れを告げろ!」

「今までありがとう…。」

「すみません先輩、俺が勝っていれば…。」

「…なに言ってんのー?このままやらないよ!」


 それを言うとメイは、むくむくと背を伸ばした。5歳の少女から、大人の女性へ。たぶんガクと同い年くらい。一気に安心する。絶対この運転は安全だ。


「それじゃあ行きますね。」

「はーい。」


 そしてアクセルが踏まれた。

 ………全力で。


「うわぁ!」

「お前、もっとスピード落とせ!」

「おいおいおい目の前に壁があるぜぇ!」


 危ない。このままいけばまず死ぬのは僕。だって助手席だから。メイ以外、全員シートベルトにぎゅっと掴まった。


「…ハンドル補正入ります!」

「自動車教習所かよ!」


 横からガッとハンドルをつかみ、左に切る。すごくコメディな動きをして、車はことなきを得た。そして散々メイは怒られた。いやガクもなかなかだったけどね?


「…最初からこうするべきだったな。」

「そうだね〜。」

「つまんない!」

「うるせぇ。事故る方が笑えねえから。」


 ものすごく普通で安全なコウの運転。これこそ安心というのだろう。なんならコウは余裕すぎてジュース片手に運転している。ちなみに助手席は僕だ。ちょっと酔いやすいから…。

 そして結局、僕らは予定より15分遅れることになってしまったのだった。

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