ありふれない君が

ちょっと待ってて コウ

「おぉ〜!スーパー!」


 スーパーごときにテンションが上がる5歳を横目にカゴを取る。

 前いた街よりは数倍大きいな。品物の数が多い。

 

「あっち行く!」

「ダメだ。ちゃんとメモ通りに買わないと。」

「やだ!行くのーっ!」


 そう言って駆けて行ってしまう。はぁ…疲れそう。

 先にパッパと買い物を済ませ、メイ探しの旅に出る。あいつのことだし、お菓子コーナーにいるだろ。でも、メイはいなかった。甘い系にもしょっぱい系にもいない。どこ行った?グルグルとスーパーを周回する。するとメイは、板チョコを片手に持ちながら、あるものを見ていた。

 水槽だ。売り物の並ぶ場所とは別に用意された、少しの休憩スペース。だが、カラフルな魚たちはメイの目には留まらなかった。


「なに見てんだ?」

「…これ。」


 赤くて小さい、ふよふよと漂うクラゲ。それを真剣に見つめていた。体は透明で、中身は真紅。小さくて、でも少しの存在感がある。自分と照らし合わせているのだろうか。真っ白な髪に赤い瞳の自分と。


「…これ買って。」


 差し出したのはミルクチョコレート。赤い包装が特徴の、ポピュラーな会社のもの。


「…買ったら着いてこいよ?」

「うん。」

「じゃあちょっと待ってろ。」


 そう言って小走りで買って、戻ってくると…。もうメイはいなくなっていた。あいつ〜…。

 すると聞き慣れた声が耳をつんざく。


「いやっ!やーだー!いかないー!」

「わがまま言うな、メイ!」


 メイだ。親に会った?声はどこから?

 声の方を盗み見ると、メイが誰かに引っ張られていた。白衣を着た、明らかに怪しいやつ。

 良かったじゃん。見つけてもらえて。

 良かったじゃん。知ってる人で。


 手元の板チョコがカタッと音を立てる。


「コウ!コウ!」


 メイが、必死に俺の名前を、呼ぶ。


「コウー!」


 メイが、俺を探してキョロキョロと、あたりを見渡す。


 …あーくそが!


 一応、ついて行ってみることにした。一応。一応だから!

 …板チョコも渡さないとだし。あ。先輩たちに連絡しよ。



「いやっ!」

「おいおい、いつからそんな子になった?ほらはやく。」


 謎の台に乗せようとメイを持ち上げるが、メイは必死に抵抗し続けている。


「だいぶやべーじゃん…。」

「だよな。」

「いつ行く…?」


 ガクに荷物を渡し、なるべく静かに体を伸ばす。ここは倉庫のような建物で、だいぶ入り組んだ場所にあった。一階には謎の台と、ワゴンと、棚などがあり、研究者らしき人が数名と、武装したやつらが8人。全員大きな銃を所持。俺らは少し離れた物陰から様子を伺っていた。


「…よし。行きますか。」

「え?」

「俺はメイ連れてとりあえず遠く行くから、お前ら2人で頑張れよ〜?」

「え?…分かったよ…。」


 カチャリと先輩が銃を取り出す。あ、そっち系か。俺は圧倒的に素手でやっちゃうのが多いからなぁ…。近距離と中距離。まあ別に悪くはない。

 よし、と覚悟を決めて、飛び出した。

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