ジェスチャーとシュガー コウ
年齢は5、6歳。髪長いな…大変そう。
「おーい。起きろー。」
先輩はただオロオロしているので俺が起こしにかかる。
パチっとそいつは目を開いた。真っ赤な瞳。本当に人間じゃないんだなぁ…。
黙って立ち上がって、こちらを見つめる。俺がしゃがんで目線が同じくらい。
「…名前は?お父さんお母さんどこにいるの?」
「………。」
喋らない。静かにこちらをみている。
「おいなんか言えよ。」
「…お菓子。」
「はぁ?こいつ菓子が欲しいんだってよ。」
「あったかな…。あ、お客さん用のならあったかも?」
「…あ。先輩。俺ガム持ってました。」
次の瞬間。さっとそいつの目の色が変わり、ぴょんと跳んで足をこちらへ。
こいつ!
サッとかわしてそのままキック!だがこちらもかわされる。というかこいつ、段々と背が伸びている気がした。
殴られそうなところを掴んでそのまま体ごと地面に叩きつける。
「っ……!はなして!」
驚いた。さっきまでガキだったのに。さっきまであんなに小さかったのに。いつのまにか、俺が仕留めていたのは同い年くらいの女子だった。
「…コウはなしてって言ってるぞ〜。」
「はなしてあげて…。」
先輩がそう言うなら仕方ない。すぐに立って、汚れを払う。
「…とりあえず、中で話を聞こうか。」
先輩がやわらかく微笑むと、そいつはまだ俺のガムを見ながら少女に戻っていった。
たぶん、年齢操作ができるのだろう。そしてそれに合わせて銀の首輪のついた服も伸び縮みしている。
「…えっと…おうちは?」
首を横に振る。
「お父さんお母さんは?」
首を横に。
「…お菓子いる?」
これは首を縦に大きく。
先輩優しいな。誰かも分からない子供にお菓子を振る舞うだなんて。
素朴なただのクッキーをバリバリと食べ出す。…どこかで聞いたことがある。『なにか』はその能力を使うときにカロリーを消費するらしい。
ガクがミルクを注いだコップを出すと、それも一気に飲み干してしまう。
「おいこれどうすんだぁ…?」
「…もう一回外に出すとか?」
「かわいそうじゃない…?…とりあえず落ち着くまで様子見ようよ…。」
「…先輩がそういうなら。」
「まあなんかあったらコウが仕留めてくれそうだしなー。さっきのヤバかったな。」
「別に、あれぐらいなんともねーよ。」
カランコロン
「あ、お客さん来ちゃったから、とりあえずコウとあの子は会議ブースで待ってて。」
「はーい。行くぞ。」
こくりと頷いて、2人で会議ブースの椅子に座る。
ガクがなにやら手を動かして合図を送ってくる。なにあれ…。手を自分の方に動かしてる…あ。背後の敵に向かって手榴弾を…違うか。ん?左手で皿を作って右手で…あ。コーヒーか。分かりにくいな…。
コーヒーはこっちの棚…?…と思えば中身は書類だった。こっち…は紅茶とかジュースで、ああやっとコーヒーだ。
普段コーヒーは全くと言っていいほど飲まないが、前の上司がコーヒー好きで、美味しいコーヒーの淹れ方は教わっていた。
その手順通りに行い、ミルクと砂糖を用意する。ガクが、砂糖は2階にあると合図しているので、2階にあがる。そのときに、ずっと大人しく座っていたガキがニコッと笑ったのは見ないフリをした。
「そうなんです…もう僕、どうしたらいいのか…!」
「落ち着いてください。必ず僕たちが解決しますので。」
「ありがとうございます…!」
いやどーゆー状況…?とりあえずコーヒーを3人分持ってきたところで、話は終わってしまった。結局いらなかったな…。
でも本当の事件はここからだった。
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