第2話 被害者の正体と芳之内の言い分
まず、この痴漢被害に遭った被害者の大学生はただ者ではない。
それは、アメリカンフットボールをやっていたという身長180cm体重120kgの巨漢であったことだ(ラグビーだったという報道もある)。
そしてもっとただ者ではなかったことは、デブ専のゲイ雑誌のモデルをしており、その筋では知られた存在だったことである。
芳之内本人が言うには、どっぷりその筋の人間である彼は相手の大学生に出くわして何者であるかすぐに気づいた。
芳之内は生で見るその圧巻の「グラマーさ」と「セクシーさ」にそそられるあまり、思わず大胆にも「アプローチ」をかけてしまったのだ。
睡眠薬を飲んでいてほぼ酩酊状態だったこともそのスケベ心(?)の暴走を助長した。
とはいえ、相手がそんな雑誌のモデルだからといって無断で尻を触るのは犯罪行為以外の何者でもなく、許されるものではない。
後に取り押さえて突き出した以上、その大学生も不快に感じていたのだろう。
しかしあくまで山之内の言い分なのだが、いきなり取り押さえられることなく、そのまま三分間と比較的長時間犯行を継続することができたのには理由があった。
その大学生は山之内に触られるや拒絶するどころか、何と尻をグイグイ突き出して挑発!
アプローチに対して喘ぎ声まで出して濃厚かつ熱烈に返答し続けたらしいのだ。
「おお!まじかよ!こ、これはもしかしてイケちゃう!?」
この時、山之内はあこがれの相手からの思わぬ好感触に興奮し、さらにアプローチに力がこもり情熱的になった。
御茶ノ水駅から浅草橋駅までのその三分間は、睡眠薬の効果も手伝ってさぞかし夢心地であったことだろう。
しかし、その短く美しい夢は浅草駅到着とともに覚まされ、長い現実の悪夢が始まることになる。
「てめえ何しやがんだ!!」
駅に到着するや否や大学生が突然豹変、尻をなでまわしていた山之内の腕をつかんでねじ上げたのだ。
体重100kgを超す巨漢だから力も半端ではない。
「えっ、えっ、ええ!?」
「降りろ!この変態野郎!!」
何ごとかといぶかしむ乗客の好奇の視線を浴び、何が何だか理解が追い付かない山之内は大学生に罵られながら羽交い絞めにされて電車から引きずり出され、駅員室に引っ立てられた。
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