3-2.騎士団
最初に私を撃墜した男がどうやら騎士団長のようだ。
少し離れたところで私の動きを牽制している。
また飛ぼうとすれば瞬時に叩き落されるだろう。
周囲を囲んだ他の騎士達が次々に襲ってくる。
なんとか風の繭と刃で追い返しているが、このままではジリ貧だ。
魔力切れで抵抗できなくなるのも時間の問題だろう。
騎士達は大きくは踏み込まず、
私の魔力を削っていく作戦のようだ。
動きを制限され思うように戦えない。
(いやらしい手を使うなぁ!)
ゲームの時では考えられない戦法に段々と追い詰められていく。
勝てないかもしれないとは思ったが、ここまで手も足も出ないとは!
私のレベルも十分に上がって、この調子なら魔王とも戦えるかもなんて思っていたが、まだまだ甘かったかもしれない。
一か八か大きな魔法で吹き飛ばす?
通用しなければ、大きな隙を作ることになる。
人数も多く、全員に通用するようなものを放てばどの道魔力も尽きるだろう。
その程度で騎士団長まで倒せるわけもないし、やはり敗北は必至だ。
闇魔法を使うのは論外だ。
ここで殺せば父を救出してもこの国を完全に敵に回す。
それでは意味がない。
騎士団長と一対一にまで持ち込めば、闇魔法も使えるかもしれない。
彼ならその程度、平気で耐えるだろう。
いずれにせよ、今はこの騎士達をどうにかしなくちゃ!
結局、有効な手立ても思いつかず、
徐々に追い詰められていく。
(もうダメ!)
騎士の刃がリリィに迫る。
その瞬間、壁が爆発した。
「わたしのリリィに手を出すなぁ!!」
「セーナ!どうしてここに!」
「王都にいればリリィの居場所はわかるわよ」
え?なにそれ怖い!
常に私の位置探知してるの?王都中で!?
というか予定ではまだ数日かかるはずじゃなかった?
「急いで王都に帰って直ぐにリリィに会いに行こうとしたのに、
なんでか王宮にいるし、沢山の人間に囲まれてるし、
これはなにかあると思って慌てて飛んできたわ。」
レオン達は置いてきたらしい。
セーナに急かされて王都まで急いで帰ってきたのに、
王都に着くなり置き去りとは。憐れ・・・
まあ、強くなってはいるだろうけど、騎士団にはまだ敵うまい。
セーナは呑気に会話しながらも、油断なく刀を構える。
騎士達は勇者と事を構えるつもりは無かったらしく、
どうするべきか迷っているようだった。
「構わぬ捕らえろ!」
騎士団長が一喝する。
騎士達は瞬時に私達に向き直る。
よく訓練されていらっしゃいますこと。
さっきまでもうお終いって気分だったのに、
セーナが来てくれただけで私も余裕を取り戻す。
「さあ、今度はこっちの番よ!」
セーナの放った火魔法を私が風で広げていく。
強烈な熱風に騎士達は思わず距離を取る。
あっやっば!燃え移ってる!
とういかセーナ躊躇なく室内で火を放ったわね。
ノータイムで広げる私も私だけど!
熱風を目眩ましに私とセーナは示し合わせたように
セーナの開けた大穴から飛び出し、中庭に出る。
直ぐに騎士達も追いかけてくるが、
先ほどの様に囲まれていなければ十分対処できる。
穴から出てくる騎士達を次々に倒していくと、
残りの騎士達を引き止めて騎士団長が現れた。
魔法を放つが、当然の様に剣で弾かれる。
私とセーナの猛攻も意に介さず、少しずつ近づいてくる騎士団長。
「セーナ!時間稼ぎお願い!」
拉致があかないと判断し、セーナにこの場を任せて飛び上がる。
反射の無い真っ黒な球体を出現させ、騎士団長に向かって放った。
球体の引力に引かれて騎士団長とどんどん近づいていく。
剣を上段に構えた騎士団長は球体と接触する瞬間、剣を振り下ろした。
「あれを切った!?」
セーナが思わず驚愕の声をあげる。
私の闇魔法を真っ向から斬り伏せ、騎士団長は無傷だった。
デタラメだ!?
まさかあれすら有効打にならないなんて!
耐えるだろうとは思っていたがまさか傷一つないとは思ってもみなかった。
「終(しま)いか?」
私の最大の技を真っ向から叩き伏せたことで、
言外に降伏を促してくる騎士団長
「まだまだ!」
刀を構えたセーナが騎士団長に向かって突っ込む。
「セーナ!だめ!」
剣の一振りでセーナは吹き飛ばされた。
「あれを防ぐか。腐っても勇者だな。」
吹き飛ばされたセーナがよろよろと立ち上がる。
良かった無事なようだ。
あの子、意外と脳筋寄りなのよね・・・
セーナの元に降り立ち、庇うようにして騎士団長に向かい合う。
「お主達では勝てぬ」
たしかに、私の闇魔法も効かず、
レベルがカンストしている上に剣技も優秀な勇者がまるで子供扱いだ。
剣の腕だけが異常だ。
ゲームの基準で考えても逸脱している。
これもゲームが現実になった影響か!
ゲームなら魔法を回避されることはあっても、斬り伏せられることなんて無かった。
それでも、たしか本人の魔法への抵抗力は魔王程高いわけではない。
当たりさえすればダメージを与えられるはず。
「セーナ!まだ行ける!?」
「当然!」
体勢を整え、しっかりと立ち上がったセーナが私の横に立つ。
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