3.学院編 後編

3-1.王宮

17歳になった!



私とセーナの誕生日は年度末なので、もうすぐ学院も三年生だ。

魔王復活までも遂に後一年。



決闘騒ぎから、私達は少しずつそれまでの日常を取り戻していった。

引きこもっていた分、いっぱい勉強させられるんだろうなと憂鬱になっていたが、

予想に反して私の勉強時間は大きく減らされていた。


どうやら、今までの詰め込み教育は王妃になるためのものだったらしい。

婚約の解消された今の私にはその必要はないのだろう。


それでもそれなりには勉強させられるあたり、さすがお父様っす。容赦ないっす。







最近の私はセーナと別行動を取っていた。


セーナのレベルが最大まで上がりきったことで、

攻略対象組の育成に専念してもらうことになったのだ。

(レベルが上がり切ると魔物を倒しても何かを取り込む感覚が無くなる)



最初は断固として反対するセーナだったが、

なんとか説得することに成功した。


「嫌よ!離れないわ!」

「ずっと一緒にいろって言ってくれたのに!」


結局、セーナも必要性はわかっていたし、

私が譲る気は無いことが分かったようで、


「わたしはリリィのものだもの。決めたのなら従うわ」


さんざんゴネておいてよくもまあ。





ともかく、これでまた魔王討伐に向けて準備が順調に進んでいく。

私はレベル上げとともに、ダンジョン巡りを続けていた。

魔王戦に備えて、魔法少女の杖を手に入れたいのだが、なかなか見つからない。


まあ、元々は隠しダンジョンの報酬だったし、今行けるダンジョンには無い方が当然だ。




そんな私達はまだ気が付いていなかったのだが、

王宮では不穏な動きを見せ始めていた。








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「いつまで奴を放置しておく気だ!

魔王と同じ闇の力を使うのだぞ!

敵に回ってからでは遅いのだ!」


「しかし、天使は勇者と共にある。

下手に手を出してしまえば魔王討伐に影響するやもしれぬではないか。」


「その魔王と手を組んだりしたらどう責任を取るつもりだ!

しかも最近では別行動を取っているようではないか!」


「しかし・・」


「今ならまだ間に合うかもしれぬのだ!

あの魔道具でも奴を始末できなかったのだ。

近衛騎士団でも太刀打ちできなくなれば、奴を始末することは出来なくなる!」


「天使をおびき寄せる策ならあるのだ。

始末さえしてしまえれば、我々の関与も否定できるだろう。今しかないのだ。」


「・・・」






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ある日、屋敷で久々の休暇を満喫していた。

残念ながら、セーナは遠征中だ。

別行動しているとはいえ、ここまで予定が合わないとは。

セーナに会いたい・・・


セーナの事を考えながら、昼間からゴロゴロしていた。




そんな時、屋敷に大量の兵士が詰めかけてきた。


レーヴェン・アランシア公爵に魔王と関与の疑いあり!拘束する!


父は特に抵抗する事もなく、素直に従いついていく。



慌てて駆け寄った私に、


「リリィ、何があっても王宮に来てはならない。母さん達を頼んだぞ。」


「よけいな口を叩くな!」




そのまま、父は数日たっても戻っては来なかった。






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情報を集めたいが、今の私には王宮に入れるようなツテもない。

もう王子の婚約者でもないのだ。

レオン王子がいればなんとかなるかもしれないが、あいにくとまだセーナと共に遠征中だ。


もう少しで帰って来るはずだが、待っていても間に合うのだろうか。

迎えに行く?現在地もわからないのに?


こんな時にスマホがあれば!なんで通信魔法の研究をしておかなかったのよ!

気ばかりが急いていく。



そして遂に、王宮から父の処刑が決まったことが通達された。



その話を聞くなり、私は屋敷を飛び出し王宮に向かった。

父からは何があっても、王宮に来てはならないと言われていたが、もうそんな事気にしていられない。



王宮に着くと、当然門番に引き止められた。

私は構わず、魔法で門ごと飛び越える。


そのまま王宮に飛び込み父の居場所を探す。

どこだ?地下牢とかか?


地下への階段を探して王宮内を飛び回る。


すると、普通の兵とは明らかに異なる装備の一団が現れた。



近衛騎士団!?

それは、ゲーム中で唯一敵対することになる人間ユニットだった。


レオン王子のルート終盤、軟禁されたレオン王子を救い出すため、

セーナ達は王宮に侵入する。


その際に立ちふさがるのが近衛騎士団だった。


物語終盤に登場するため、騎士団は強い。

特に騎士団長は魔王の次に強いと言われるキャラだ。


一部の能力においては魔王すら上回る。

魔法寄りの魔王に対して、騎士団長は物理特化のキャラだった。




どうしてこんな時に!?

今、こんな奴らを相手している余裕は無いのに!


というかゲーム通りの強さなら、本当に一人で勝てるの?



ともかく、相手は出来ないと頭上を最高速度で突っ切ろうとするが、

いきなり飛び上がってきた男が振るった剣で吹き飛ばされる。


廊下の端まで飛ばされた私は壁に激突する。

幸い風の繭のおかげで傷はないが、全ての廊下の先から騎士団が迫ってくる。

ハメられた!?


地竜の時といい、なんで高速で空飛んでるのに補足できるの?

しかも今回は人間じゃない!

あいつ天井近くまで飛び上がったわよ!



逃げられないと、覚悟を決める。

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