悪役令嬢に転生したのでレベルを上げずに生き延びます。

2-13.決闘

「決闘を申し込みに来たわ」

「良いわよ」

セーナはあっさり承認する。

私の行動などお見通しなのだろう。

感情も魔力も見えているセーナには私の状況が全て見えているはずだ。

何より、セーナの行動を思い返すとこうなることを予想していたようにも思う。

けど、私はそこまで察しが良くないのだから、

セーナが本当に考えている事なんて本人から聞かなきゃわからない。

訓練場に辿り着き、向かい合う。

「セーナを取り戻しに来たわ。私が勝ったら私の元に帰ってきてもらう。

そして二度と側を離れる事は許さない。」

「なら、わたしが勝ったらリリィはわたしのものね」

そのまま、開始の合図もなく戦いが始まる。

私は飛び上がって優位な位置を確保しようとするが、瞬時に撃ち落とすような攻撃が来て飛ぶのに失敗する。

最後に見たときよりずっと速い！

私が引きこもっている間もずっと強くなり続けていたのだろう。

私も強くなったはずなのにまだセーナの方が強い！

仕方なく、そのまま風の刃を放つが魔道具の障壁で防がれる。

「その程度？早く本気を出さないと負けるわよリリィ！」

言いながらも次々に光弾を放ってくる。

なんとか、風の刃で相殺していくが押し切られそうになる。

（風の方が速いはずなのに！）

「なんで私の元を離れたの？そこまで私のことが嫌いになっちゃったの？」

「勝てたら教えてあげるわ。少なくとも私に勝てないリリィなんて嫌いよ」

風の繭を展開して強引に上空に上がる。

構わず光弾が追跡してくる。

（追尾機能！？私の知らない魔法！）

本当に光属性だけなんでこんなファンタジーなんだろう。

（だけでもないか・・・）

風の繭の出力を上げて光弾を防ぐ。

着弾した瞬間、光弾は破裂し閃光が広がる。

（目潰しまで！？）

私といた時には見たことの無い魔法を次々に使うセーナ

本当に嫌になるほど強い！

私は隙だらけになったはずなのに、追撃は無かった。

「セーナ！どういうつもり？」

「闇属性を使いなさい！いつまでも手加減して勝てると思わないで！」

セーナの指摘に一瞬ためらう。

今度はそんな隙を見逃さず、追撃してくるセーナ

私と同じ様に飛び上がって、光線を放ってくる。

風の繭を最小限にして、全力で避ける。

光線なんていつまでも避けていられず、着弾する回数が増えていく。

（あんたどこのロボットよ！）

「闇属性は人に向けて使うようなものじゃないの！」

竜巻を放ち、セーナの攻撃をまとめて薙ぎ払う。

「なら、そうやって見下していればいいわ！勝つのはわたしよ！」

「何を行っているのセーナ！見下してなんてない！」

更に苛烈さを増すセーナの攻撃に次第に追い詰められていく。

「あなたはそうやって、いつだって信じてくれない！

わたしはそんなに弱いの！？

あなたが本気を出す価値もないの？

わたしはあなたの力になれないの！？」

「いつだって信じてる！私はいつだって本気！」

「セーナはいつも力になってくれたじゃない！」

「地竜の時はリリィを一人で戦わせて！大蛇からは逃げ帰って！」

「リリィはわたしには勝てないなんて言うくせにいつだって本気を出してもくれない！」

「地竜の時は最初の攻撃からかばってくれなきゃ死んでた！」

「大蛇の時だってセーナが止めてくれたから生きて帰れたんじゃない！」

「セーナを本気で撃てるわけないじゃない！」

「それなのに勝手に卑屈になって！勝手に家出して！ずっとそばにいて欲しかったのに！」

風の繭を爆発的に広げて、セーナの攻撃を中断させ、距離を取る。

「そんなに見たいなら見せてあげるわ！死んだら追いかけていくわよ！」

今までは闇の魔法を破壊の力だと思って使っていた。

レベルを上げながら、何度も使っている内に勘違いに気づく。

闇は吸収する力だ、触れたもの全てをくらい尽くしながら。

反射の無い真っ黒な巨大な球体を生み出し、どんどん巨大化させていく。

セーナの放つ魔法は全て球体に吸い込まれ、飲み込まれていく。

こんなの撃ったら死んじゃうかな・・・

でも、今度こそ信じるから。今までごめんねセーナ。

私はそれをセーナに向かって放った。

セーナは全力で障壁を張る

光と闇が衝突し、しばらくの間拮抗していたが、次第に光が飲み込まれ始めていく。

「セーナ！！」

動いちゃダメだ！信じるって決めたんだ！

そしてようやく闇が消えていく。

魔力を使い果たし、意識を失ったセーナが落ちていく。

慌てて回収し、ゆっくりと地面に横たわらせる。

良かった。生きてる！

障壁を張る指輪は割れていた。

最後の瞬間までセーナを守ってくれたようだ。

持っててくれて良かった。

安心すると涙が溢れ、眠り続けるセーナに縋り付いて泣いた。