2-11.思い出

それからの私は常に一人だった。

人生の三分の一を共に過ごしたセーナが側にいない。



セーナのいない私に魔物討伐が出来るはずもなく、

今までの功績は全て勇者の手柄を横取りしていたのだなんて噂も広がる。


評価が地に堕ちた天使。堕天使 フフ


まあ、間違ってないよ。地竜の時だってセーナがいなければ最初の一撃で死んでたし。





結局学院にも行けなくなって、部屋に引きこもった。


最初の頃は父も叱りつけてきたものだが、

今ではもう顔も見せない。

見捨てられちゃったのかな・・・





何日たったのか、何週間か、何ヶ月か、そんな事もわからなくなった頃、

久々に父が姿を表した。


「お前とレオン王子の婚約が解消された。」


そう伝えると、他には何も言わずに去っていった。



そういえば、入学式の時にセーナが言ってたっけ?

あの学院を卒業できなければ貴族として扱われないって。



もう学院は退学になったのかな?

破棄ではなく解消ということは、父が代わりに同意したのだろう。

今ならレベル上げもできるのかな?


流石にまだ本来の時期より一年以上早いはずだと思うけど。


もうどうでもいいかな・・・







セーナ達魔王に勝てるかな。

セーナは大丈夫だと思うけど、王子たちは順調に強くなってるのかな。

王子たちの育成に必要なことはセーナにも共有してたし、きっと上手くやると思う。




レベル上げが出来るのなら何もかも放りだして逃げ出してしまっても良いかもしれない。

ちょっと早いけど冒険者を目指して旅に出ようかな。


どうせもう父様にも見捨てられちゃっただろうし。



うん、なんか良い案な気がしてきた。





資金稼ぎは出来てないけど、昔ダンジョンで取ってきたガラクタ売り払えばなんとかなるかな?


のそのそと動き出し、クローゼットの隅にまとめられたガラクタを漁ってみる。



それらを見ていると涙が溢れてきた。

これもセーナとの大切な思い出だ。


初めて一緒に行ったダンジョンの戦利品。

結局大した効果もなく、部屋の隅に追いやられていた物。


本当にこれを手放してしまうの?

こんなガラクタでも大切なものだと感じているのに?


きっとこれを手放したら二度とこの国には戻らないだろう。

セーナに合うことも出来なくなる。


そんな事を考えていると涙が止まらなくなった。



「会いたいよ。セーナ」


あんなに手酷く捨てられてしまったのに、

まだ私はセーナから離れられない。忘れられない。




ひとしきり泣いた後、私は決意する。


強くなろう。もう二度と足手まといだなんて言われないように。

セーナの意図した事かはわからないけど、私の成長限界は大きく解除されているはずだ。




セーナに追いついて、もう一度手に入れて見せる!






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その後、まず父の元に向かった。



「私どうしても強くなりたいの!

しばらく外に出ます。許可をください。」


執務室に入るなり、頭を下げる。



「そうか。わかった。

ならば、ちゃんと着替えてから行きなさい。」



父は優しい顔をして答えてくれた。


私はヨレヨレになった着っぱなしの部屋着だった。

恥ずかしい・・・





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部屋に戻ると準備をし、

ずっと前に計画しておいたプランを思い返す。

私のレベル上げ計画だ。



今の私にはゲーム知識に加え、セーナのレベル上げを行った経験もある。

プランを少し修正しながら、目的地に向かって飛び立った。

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