1-6.初めてのお茶会

10歳になった!



誕生日を迎えてすぐに、レオン王子と対面するため、

お茶会に参加することとなった。

と言ってもうちの庭だけど。



人生初めてのお茶会がこれってどうなのよ

ぶっつけ本番ですか、リハーサルは無しですか、そうですか



相変わらず、レオン王子にはたいして興味を持てないが、

ここでやらかすわけにはいかない。



円満に婚約破棄まで持っていかなければならないのだから!

それは脇に置くとしても、勇者の仲間の一人である王子は

魔王討伐に向けた重要な戦力でもあるのだ。



やはり友好的な関係を築くに越したことはない。

これ以上両親に心労もかけたくないしね。



そして、なんだかんだゲームの登場人物に会うのもこれが初めてである。

これについては少しわくわくしている。



いつもの考え込む悪癖を発動させていると

メイドさんに窘められた。






気合を入れ直して?待っていると時間になり、

王子を出迎えに向かう。


「はじめまして、リリィ嬢」



「お初にお目にかかります。レオン王子。

本日は殿下御自らお越しいただき、大変光栄に思います。」

「早速ではございますが、庭園までご案内させていただきたく思います。」



庭園に場所を移し、席につく。


「リリィ嬢、よろしければもう少し気安くお話ください。

せっかく婚約者となるのですから。」


「では、お言葉に甘えさせていただきますわ。レオン様。」




その後、会話ははずみなんだかんだ楽しい時間を過ごした。

いい感じで良かった。

私はどうやら珍しく緊張していたようだ。

人見知りはしないと思っていたのに。



考えてみると、この世界に転生して同年代と話をするのは初めてかもしれない。

加えて、最近は両親とゆっくり話をする時間も無かったので会話に飢えていたのかも。




「ところで、最近王都で噂になっている件はご存知ですか?」


「どのような噂でしょう」


「なんでも王都に天使が住んでいるとか」


「天使ですか?」

ヴィオラ領の最初に降り立った村を思い出す。



「何度か、王都の上空で少女が飛んでいるのを目撃されているそうです。」


なん・・だと・・・

冷や汗を感じながら、冷静に切り抜けようと考える。


「初めて耳にしましたわ。実は例の件があってから、屋敷を出たことがないのです。」


真っ赤な嘘です。月一で抜け出しています。



「ああ、失踪事件の件ですね。王宮でも一部で話題になりましたので存じております。

それでは、今度ぜひ王都を案内させていただきますね。」


「それはそれは、光栄でございます。」


日数も短く、令嬢の行方不明など表沙汰にできるはずもないので、

私の冒険(失踪)は王都中に伝えられたわけではない。

とはいえ、流石王子。知っていたか・・・少し複雑だ・・・




それからしばらくすると王子は帰っていった。


途中でどうなることかと思ったが、なんとか無事に終わらせることができた。


せっかくゲームキャラとの初対面なのに特にドラマチックなこともなく、

普通に和気あいあいとお茶会しただけで終わってしまった。

本当にこれで良いのだろうか不安になってくる。


まあ、私は主人公ではないのだし、こんな物なのだろう。


その辺の展開はセーナに頑張ってもらうことにしよう。




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部屋に戻り落ち着いたところで、

今後の情報を一旦整理しようと思い、日記を取り出す。


今までに調査したヴィオラ領の情報を見返し、

あと数回も行けばセーナに会えそうだと安心する。



セーナはどんな生活をしているのだろう。


結局、セーナを従者にする際の問題点について解決策は見つかっていない。

軟禁状態であるはずの私が、どうやってセーナと出会い、従者としたいと思ったのか

父上を説得する方法が思いつかない。

勝手にメイドに紛れ込ませるわけにもいかないし・・・


今の飛行魔法の精度を考えれば、最悪通う事は可能だろう。

ただ、それでは月一程度しか会えないし、やはり従者にするのが一番良いだろう。



いつのまにか、学院入学まで5年ほどしか残っていない。

入学までにセーナを育成し、ダンジョン報酬の装備を手に入れておきたい。


少しずつ焦りも募っていく。



婚約の件を忘れていたのは、影響の大きさを考えればあまり良いことではない。

ともかく、それ以外にも見落としがないかと、

書き溜めた前世の知識を見返していく。



大きなイベントは学院入学まで無いことを確認し、少し安心したのだった。

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