1-7.勇者との出会い

気付いたら森で勇者を平伏させていた!



遂に念願の、セーナの故郷ピッコ村の情報を入手し、ハイテンションで村の近くの森に降り立った。


苦節二年、ようやく手に入れた情報にニヤニヤが止まらず、だらしない顔のまま飛び込んだ先には、一人の少女がいたのだった。



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後に聞いた話では、空から光の塊が降りてきたかと思うと、まるで自身をくるむ様に畳んでいた羽を広げる天使様が現れたように見えたそうだ。


風の繭(ステルス機能付き)の解除時って、外から見るとそうなってるんだ知らなかったよ。

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そんなことを知る由もなく、酷い顔を見られてしまったと思い、内心焦りながら表情を引き締め、少女に聞いてみる。



「この近くの村はピッコ村であっていますか?」



呆然としていた少女は私に声をかけられたことに気付き、慌てて平伏する。


「はい。あの村の名前はピッコ村です。天使様」



また勘違いさせてしまっているようだ。

村に入るまではと、いつもの帽子を外していたのも失敗かもしれない。


セーナに変な印象を持たれても困るので正直に行こう


「私は天使などではありませんわ。

どうかお顔を上げてください。

その村にセーナという少女はおりますか?」



私の言葉に少女はビクッとすると慌てて答える。

「わ、わたしがセーナです。」




わーおどんぴしゃぁ

変な印象を持たれないようにとかもう手遅れだった。


さすが主人公、早速ドラマチックな出会いになってる。

私のせいだけど・・・






微妙な空気になってしまったが、気を取り直して自己紹介をしてみる。


「はじめまして、セーナさん。私はリリィと申します。」

「セーナさんに是非ともお願いしたいことがあって王都より参りました。」




「本当に天使様ではないのですか?」


恐る恐る伺うように顔をあげるセーナ。


天使と勘違いしているとはいえ、こんなにビクビクしている様な人物だっただろうか


私の中のセーナのイメージとは程遠い。

ゲーム中の彼女はいつでも明るく前向きな人物だった。


よく見ると服もボロボロだ。

あまり裕福とはいえないのだろう。



彼女は一人、こんなところで何をしていたのだろう。

いくら村が近いとはいえ、魔物も出そうな森の奥に10歳の少女が一人で来るだろうか


この世界の一般常識を貴族の立場で学びはしたが、村人の立場からしたら、私はまだまだ世間知らずだろう。

どこまで踏み込んで良いのか迷うが、どの道彼女を連れ帰りたい私としては聞いてみるしか無い。




「私はほんの少し魔法の扱いが上手いだけのただの人間ですよ

ですからどうか、畏まらず楽にしてください。

あなたはこんなところで何を?お一人ですか?」



「そう。食料を取りに来ていたの。

わたしは村で唯一戦えるから、一人でも平気なの」




戦える?このセーナは日常的に魔物を倒しているの?

ゲーム開始時点のセーナはレベル1だったはずだ。

この時点で魔物を倒しているはずがない。


「あの村には他にもセーナという子がいるの?」


「いない。セーナはわたしだけ。」



どういうことだ?

私の存在がこんな遠い地まで影響したのだろうか

それともこのセーナも転生者?


天使を見た時の反応が前世の人間ぽくはない気もする。




まさか、これもゲームが現実になった弊害か?

よく考えれば、普通の人間が太刀打ちできない魔物がそこらにいる世界で、

戦う力があるのに戦わないなどありえないだろう。

たとえ、今はまだ幼い少女とはいえ。


私のように貴族として守られてきた存在とは違うのだ。

ただの村人でしかないセーナには生きるために必要なことだったのかもしれない。



今のセーナのレベル次第では、魔王討伐に影響が出る。

詳しく調べる必要がありそうだ。



早いうちに見つけ出せたのは幸いだった。

学院入学まで一人で村を守り続けていれば手遅れだったかもしれない。



試しにどうやって魔物を倒しているのか聞いてみる。

すると、光の魔法が使えるのだと言う。

やはり主人公のセーナで間違いないようだ。



性格の違いも生きてきた環境による差だろうか



念願の出会いが叶ったのに、素直に喜ばせてくれないとは意地の悪い運命だ。


いろいろ話したいこともあるし、落ち着いた場所に行きたい事を伝えると、

ちょうど帰るところだったと、村まで案内してもらえることになった。



先導するセーナの足取りはしっかりしていて、

本人の言う通り、毎日のように森に通っているようだった。

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