第8話 制裁②

 朝宮優子。

 彼女はマシロと同じで、高校時代に無理やりこのクズに犯され、あろうことか合意の上なんて汚名をきせられた。

 そのせいで当時付き合っていた幼馴染の彼氏は自殺し、周りからも随分と責められ、彼女自身も何度か自殺未遂までするほど追い詰められた。


 きっとこのクズの顔を見るのでさえ、怖ろしくて辛いに違いない。


 でも、彼女はそのトラウマを克服するためにも僕に協力してくれる事になった。


 やる事は簡単だ。


 彼女の指示通りに僕がこのクズを痛めつける。

 ただし殺すのは無し。

 最終的には女性恐怖症まで追い込めればベストだ。


 なのでクズをいたぶる時は彼女がしていると思わせる為に再度目隠しをする。


 そして実行前に再度彼女と打ち合わせを行う。


「あっ、あの本当に私は何もしなくても?」


「はい。あんなクズ、あなたの手を汚す価値なんてありませんから」


 クズの相手なんて僕のようなクズがすれば良い。

 言葉の通り協力はして貰うが手を汚す必要なんてない。

 だって彼女はマシロの代役でもあるのだから。

 きっとマシロの思いを代弁してくれる筈だ。


 そんな僕の気持ちが伝わったのか、彼女は覚悟を決めると口を開いた。


「そうですか……なら」


「はい、最初は何を希望しますか?」


「あの男が、二度と女の人を襲わないようにしてもらいたいです」


「なるほど去勢ですね……でもただ去勢するだけじゃあ物足りないですよね」


「えっと、どういうことですか?」


 聞いた話だがタマを取るとホルモンの関係で女性よりになる傾向があるらしい。僕としてはそんな逃げ場を作りたくない。だから。


「なに、男性の象徴である陰茎の方を切除してしまうんです。そして男性本来の生殖機能はあえて残す。どうですか男としての最低限の機能を保ちながらも、男としては全く機能できない。このクズに相応しい報いだと思いませんか?」

 

「……ええ、確かにそうですね。だってこいつは女をもてあそぶ最低な男です。ならオスとして最底辺の欠陥品にしてやらないと」


 結論は出たらしい。


 ただ、予定した計画通りあくまで彼女がしたと思わせる必要がある。


 なので目隠しした状態のクズと対面させ、スマホに録音していた声を聞かせる。勿論彼女の本名は明かさない、ただ自分に恨みのある女だと思わせる。それだけで十分だ。


 流石に最初は優子さんも戸惑っていたが、心身共にボロボロのクズを見て何もできやしないと安心したのだろう。

 次第に興が乗ってくると本日のメインイベントの言葉をスマホに吹き込む。


「これから、散々女性を苦しめてきたアナタの穢らわしい汚物を切除します」


 クズは最初彼女の言葉の意味が分からなかったらしい。しかしアソコの根元を強く締付け止血されると、自分がどうされるか気付いたらしい。

 拘束されて身動きできないにも関わらず激しく体を動かし必死に抵抗する。

 しかしそんな抵抗は無意味でしかない、僕は何の感慨もなく穢らわしいクズのイチモツを容赦無く切り落とした。


 傷口は包帯で止血し、化膿しないように消毒と抗生物質を塗っておく。


 その間クズは痛みで悶絶し、痛みで気を失うを繰り返した。


 優子さんには、流石にグロすぎて見ていられないと思い、席を外すように伝えた。しかし彼女は、見届けると強い意思を示し、その場で成り行きを見ていた。


「で、どうしますか? きついようならここで降りてもらっても構いませんよ」

 

 僕の提案に優子さんは首を横に振る。

 どうやらあの光景を見て、逆に何かを吹っ切ったらしくその目には狂気が宿っていた。


 どうやら、彼女も僕と同類になったようだ。


 それから僕は優子さんの願い通り、クズを痛めつけた。


 指を含めた手足を一本づつ折ったり。

 顔を焼いて爛れさせたり。

 水責めを一日中続けたりで、優子さんはなんだかんだで名前通り優しかった。


 優子さんが休んでいる間は僕が続きを引き継いだ。

 取り敢えず人としての尊厳を奪うために衣服は奪い、食べ物は蜂蜜と牛乳しか与えず。下痢した糞尿は垂れ流しさせ、そこを寝床にさせた。

 ただその睡眠も、タイマーで定期的に改造スタンガンで電気ショックを与え、睡眠時間を極力与えないようにした上で、吹き込んでおいた優子さんの罵詈雑言を大音量で一日中流し続けた。


 そして優子さんのターンの前には見苦しいので、ホースで冷水を浴びせ、物のように洗ってから制裁を始めるようにしていた。


 そうしたサイクルを延々に続けた結果。期限最終日に迫る頃には、クズは優子さんの声を聞くだけで怯え震えるようになり。

 優子さんが軽く触れるだけで身悶え体を強ばせ緊張して、場合によっては気絶した。


 僕としてはこれが優子さん限定ではなく女性全般に同じ様に反応してくれればと願った。そうして一生女性恐怖症で怯え続けてくれればと、しかし流石にこの状況では検証出来ない。それだけがとても残念ではあった。



 そして心身共になぶり続けた期限最終日の前日。

 最後の締めは、優子さん自身の手で行いたいというたっての願いを受け入れた。


 まあ最後はなんてことは無い。

 優子さん自身でクズをぶん殴る。

 それだけだ。


 ただし、積年の想いを込めて。

 これは優子さん自身がこれから前を歩いて行くための儀式のようなものだろう。

 散々してきた拷問に比べれば可愛いものだ。


 しかしクズには抜群に効いたのだろう。

 どう見ても軽いパンチに泡を吹いて気絶した。


 もうクズにとっては優子さんが何かを行う事自体が悪夢になっていたらしい。


 僕は気絶したクズを再び特大スーツケースに詰め込むと、ヤツの自宅まで持ち帰り、中身から取り出し放置すると、そのまま警察に自首した。


 勿論罪の意識からでは無い。

 別に後悔したからでもないし、きっとこの先も悔いることは無いだろう。 

 ましてや、マシロの為なんて大義名分を掲げるつもないし、マシロの為に人生を棒に振ったとも思っていない。

 むしろこんなことマシロが知れば悲しむだろう……そう今なら分かる。愚かな僕は、マシロが耐え続けてくれていた意味を結局無意味にしてしまったのだから。

 つまり僕はマシロを裏切る事をしてしまった。


 なぜなら僕はあのクズに対する怒りを抑えきれなかったから、許すことが出来なかったからだ。

 だから僕はマシロの思いよりも自分がしたいことを優先し、あのクズに制裁を加えた。


 つまり私刑を行った。 


 そしてこの国ではそれが許されていない。なら自分自身が行った行動の責任を取る必要がある。

 だから自分の………クズはクズなりの信念に従うだけ。

 そう、ただそれだけの事だ。

 


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