第7話 制裁①
時間はそう取っていられないと感じ、すぐさま会社には辞表を提出した。
いきなりの退職願いに会社側も引き止めてくれたけど、僕の意思は変わらない。
幸い、見習いを脱した程度のポジションだったので引き継ぎなどには時間はかからず。
有給消化に入ることが出来た。
その間に準備は進める。
あの男の居場所は確認済みだ。
拉致る為の準備も怠りない。
どうせあんな男のことだ自分が狩られる立場になるなんて思ってもいないだろう。
ぬくぬくと育ち、他人の痛みに気付けない。
自分が楽しければそれで良い。
だから今が楽しいアイツは、全てが思いのままのパラダイスとでも思っている事だろう。
それで良い。
ヤツにとって今が楽園であればあるほど地獄に落とされた時のギャップは身にしみるだろう。
それに有益な情報も手に入れた。
アイツは高校時代も色々とやらかしていたらしい。あまり公にはなっていないがあいつの関わる人物で自殺者が出ていた。そこをたどればもっと……。
まあその件は追々として。
いまはプランAの実行を優先させる。
アイツの交友関係や親族の関係から期間は三ヶ月。
資金は、マシロとの将来の為に貯めておいた貯金を使えば何とかなるだろう。
あと何よりも重要な点はアイツとマシロを会わせない事だが、最近マシロは大学を休んでいるようだ。
思わず駆けつけて言葉を掛けたくなるが、マシロを落ち込ませている張本人が何を言っているのかと自分を戒める。
兎に角。マシロが早く前を向いて安心して大学生活を送るためにも、早急な処理が必要だ。
僕は引き続き準備を進め、機会をうかがった。
そしてプランAの準備が完了した時点で行動に移る。粗は目立つが、僕がしたいのは完全犯罪ではない三ヶ月間捕獲出来る目安がたてばそれで良かったからだ。
まずは配達員を装い、ヤツの部屋に偽の荷物を届けるフリをした。
勿論警戒なんてしていないヤツは簡単に信じ、部屋の鍵を開けて出迎えてくれる。
のこのこ出てきたヤツの口をすぐさま押さえながら刃物で脅す。そのまま部屋の中に押入ると、準備していた口枷をつけさせる。刃物を押し当てながら、ビビるヤツを後ろ手で縛り上げ、ついでに両足も縛っておく。
イモムシのようにモゴモゴと悶えて煩いヤツの腹を蹴りつけ黙らせる。
次に人が入る大きさの海外製のスーツケースに詰め込むと、近場の駐車場に止めてあった車まで運び、借りておいた山中のロッジまで移動する。
ここは金さえ払っておけば、ほぼ人が来る事が無い。よくいかがわしいビデオの撮影なんかにも使われる場所だ。
そして僕はここを三ヶ月間借り切っている。
その間、僕はこのクズを好き勝手に出来ると言う事だ。
最初は勿論決めてある。
こいつにはマシロの味わった痛みを、苦しみを追体験してもらわなければ困る。
だから僕は事前にゲイ向けポルノの撮影会と称して、アングラサイトで参加者を募っていた。
コンセプトととしては、山中に閉じ込められた男達が次第に理性を無くし、その中にたまたま迷い込んで来た男に毒牙を向ける。なんというか『必要ある?』と思えるコンセプトだったが、思いの外参加者が集まった。総勢三十人ほどなので十人を三日に分けて撮影することにした。
もちろん騒がれては困るので口枷はエスエム用のボールギャグに変えて、後は参加者の好きに犯してもらった。
「なあ、どんな気持ちかな?」
痛みに耐えながら泣いているクズの顔を見て尋ねてみる。
クズはモゴモゴと泣きわめくだけ。
正直スッキリしなかった。むしろマシロの心の痛みはこんなものじゃないと感じ、沸々とさらなる怒りが湧いてきた。
そして三日間の凌辱が終わった。
参加者の一人が映像の原本を買いたいと言い出したので売った。ただし三ヶ月後には足がつく可能性があると注意を促して。
その後は別口で約束していた男色家の男に一ヶ月貸し出した。非合法なのはお互い了承済の秘密厳守で。
一応僕も見張りを兼ねて一緒にいたが、僕には到底理解できない倒錯した悍ましい世界が繰り広げられた。
ただ、おかげでだいぶ精神的に疲弊したクズの顔が見れたのは、少しだけ溜飲が下がった。
今なら少しだけ冷静に話ができそうだ。
僕はクズの目隠しを取ると、少しだけクズに話し掛けた。
「少しは自分のしてきた理解できたかな?」
「くそっなっ何言ってやがる。して来たことって、俺がいつこんな酷いことしたっていうんだ。なんでこんな酷いことが出来るんだ」
半泣きで喚くクズ、こんな状況でそんな事を言える頭はどうしようもく御目出度い。
「はぁ、驚いたこんな目にあっても全然理解してないんだね。しょうがないな猿以下の頭のクソクズ野郎なアンタにも説明してあげるよ」
そして僕は親切丁寧に意図を話してやった。
最初の集団による暴行は、薬で眠らせて無理やり女を襲った事に対する。次は脅迫して相手の意思を奪い好き勝手に弄んだ事への全て意趣返しだと。
「なんでそんな事くらいで俺がって、てめぇ、思い出したぞ、マシロの彼氏だな」
「はぁ気付くのが遅いよ。まあ今は元カレだけどね。おかげさまでアンタのせいで別れる事になったからね。これはその仕返し」
そう言って吊るされてるクズの腹を蹴り上げる。
「げはっ、まっ、待て、待ってくれ。確かに俺も悪かったかもしれないが、裏切り続けたのはマシロの方だろう。彼氏に隠れてオレに股を開いたのはアイツの意思だ。しかもアンタに知られたくないなんて、ちっぽけな理由でだぜ、信じられないだろう。そんな事で彼氏を蔑ろに出来る女なんだよアイツはよ、アンタの手を汚す価値なんてない汚物なんだからさ」
「なら、そんなちっぽけな理由でしか、女を従わせることが出来ないアンタは何なんだよ」
僕は怒りに任せてもう一度腹を蹴り上げる。
白目を向いて気絶しそうなクズの頬をはたき目を覚まさせると僕は話を続ける。
「アンタにとってはさ、ちっぽけな理由でも、脅しに屈するって事は相手にしてみれば、それが大事なんだよ、知られたくなかったんだよ。そんな事も分からないから簡単になびいたなんて勘違いする。相手がそれでどれだけ苦しんでいるかも理解出来ないで」
そう僕と同じだ。こいつは相手の痛みが想像出来ない、どうしようもないクズだって事。
「まっ、待ってくれ、俺が悪かった。全面的に俺が悪かったから、ここで起きた事も誰にも言わないから助けてくれ」
「誰にも言わない? 誰にも言えないの間違えだよね。だって屈辱でしょう男三十人にケツ穴掘られて犯された後、男に散々気持ち良くさせられ何度も喘いで喜んでたなんてさ。これを大勢の前で公言出来るの?」
男だろうが女だろうが関係ない。他人に尊厳を踏みにじられ、肉体的にも精神的にも追い詰められるような目に合えば普通でいられなくなる。正常な判断が出来ていたかさえ怪しい。
今更こいつのボロボロになった姿を見てそれを実感するなんて、本当に僕もどうしようもない男だ。まあ今気づいた所で何もかも遅すぎるのだけれど。
「安心して良いよ。殺しはしないから、まあ殺してやりたいのが本音だけどさ。アンタにはもっと苦しんでもらわないと」
そう、本音を言えばまだ全然足りていない。
だから僕は締めとして、事前に連絡を取り合っていた人物を呼んだ。
最初は躊躇いというか、あのクズに恐怖を抱いていたようだけれど、惨めなクズの姿を見せることで、彼女は一歩踏み出す決意をした。
本当は巻き込むべきではないのかもしれない。
でもクズへの制裁は僕自身のエゴだ。
ならそのエゴを貫き通す為に、彼女も利用させてもらう。
そう、このクズのせいで高校時代に彼氏が自殺してしまった朝宮優子という女性を。
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読んで頂きありがとうございます。
評価、コメント、誤字報告、感謝しています。
次話もグロと暴力描写が強くなります苦手な人はご注意下さい。
今後の執筆のモチベーションにも繋がりますので
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