第6話 会話のスキルを覚えても、実戦で使えるかは別の話
唐突だが、トーク力のあるフツメンと、喋り下手なイケメン。どちらが女子にモテるのだろうか?
これは個人的な考えだけど、モテるのはイケメンの方だ。しかし、眺めてるだけで決して女子からは話しかけないし、仮に話しかけても、アピールしたりはしない。
トーク力のあるフツメンはハードルが低いし、遊び目的への警戒も薄い。
女子は基本的に受け身らしくて、どんなイケメンでも話下手では裏でモテるだけにとどまってしまうのだとか……。
だから結果的に、トーク力のあるフツメンが彼女持ちであることが多かった。
「この世界の女子がつよつよすぎる……」
では、この世界ではどうだろう? 女子が大多数を占めるこのクラスでは、イケメンもフツメンも関係ない。
ただ男というだけでモテるのかもしれない。
この世界の女子は自分からアピールしてくるし、告白もするらしい。
「甘えるのは嫌だ。俺は変わるんだ!」
俺はあくまで前の世界の男のように、自分から話しかけて、口説くつもりだ。
もし仮に、他に男子がたくさんいる環境であってもモテる男になりたい。
そのためにルックスを磨いたし、トークの勉強もした。
「詳しくないのは仕方ない。美容については、教えてもらう感じでいくか」
正直に言う方が好感度は高いはずだ。
だからと言って自信がなさすぎたり、オドオドしたらダメだ。
とりあえず、堂々としよう。
「みんな美人だなぁ……。俺、美容とかちょっと興味あるから、良かったら話に混ぜてくれないか?」
席を立ち、こちらを見ていた女子達に話しかけた。
俺が堂々としているからだろうか? 相手の女子の方がオドオドしていた。
「……お、百里君は美容に興味あるんだ?」
「男子なのに偉いねー」
「私達で良いなら、いくらでも話しかけてっ」
こっちが心配になるくらい、相手の女子が動揺している。
ある意味、俺の方は緊張しない。
思い出せ、確か前の世界で勉強した限りだと、自分語りはNGだったはず。最低限の回答をしたら、会話を膨らませたり、相手に語らせるのが重要だとか。
それでいて、恋愛的な部分では男の方から攻めるのがセオリーらしい。
「スキンケアくらいしか俺はしてないから、詳しいわけじゃないけど……。三人とも肌とか綺麗だし、なんかアドバイスもらえたらなって」
「「「……っ!?」」」
あれ、なんか想定と反応が違うぞ。
俺が綺麗と口にした瞬間――顔を下に向けてしまった。三人とも黙ってる。
ヤバイ、これはまずい。しくじったかも……。
「わ、悪い……。口説くつもりとかではなくて、本当に綺麗だったから」
「そそそ、そうだよね! 私が恋愛対象とかありえないもんね!」
「……ビックリしちゃったよー」
「勘違いしちゃって、ごめんねっ」
女子達の顔がひきつっている。頑張って笑顔にしている感じだ……。
俺はなにか対応を間違えたのだろうか?
「……いや、正直に言えば、恋愛対象ではある。でも今は楽しく話したいだけだ。言い寄るつもりはないから、安心してくれ」
「「「――っ」」」
三人とも、また黙ってしまった……。
これは完全に言葉のチョイスをミスった気がする。ヤバイ。
トークの勉強をしても、実戦で使うのってこんなに難しいのかよ……。
「百里君、私達ともお話しようよ!」
「そうそう」
「百里君のこと、もっと知りたいなぁ」
他の女子も、次から次へとこちらへ来て、話に参加したいらしい。
やはり美容の話は好きなのだろう。
もうコレ、クラス全員な気がするけど、仲良くできるならいいことだ。
「連絡先とか、教えて欲しいなー。なんて……えへへ」
「あっ、ズルい! 私もインスタ教えて!」
「……私はLINEで」
せっかくならいつでも話せるようにと、連絡先を交換する流れになった。
念のためにアカウントを作っておいて正解だったな……。
今まではX(Twitter)くらいしかやってない陰キャだったけど、必要かもしれないと用意してた昨日の自分に感謝だ。
というか、こちらの世界でも同じだったことに驚いた。発明者とかどうなってるんだろうか?
「百里君、フォロワーヤバすぎる……。え、始めたの昨日なの!?」
「に、二万人……!?」
昨日、自撮りをアップして放置していたのだが、いつの間にかフォロワーが二万人になっていた。
こんなことある!? 俺が一番ビックリなんだが……。
「あ、あの爆睡してる子だけ交換してないや」
名前が分からないが、隣の席の子だけ、会話に参加してこない。
相変わらず爆睡している……。
マリナ先輩のアドバイスに従って、やんわりお断りしたから仕方ないけど。この流れで一人だけ連絡先を交換しないのも、申し訳ないし……。
「このくらいなら、大丈夫でしょ」
関わるなと言われたけど、連絡先の交換くらいなら問題ないはず。
俺は自分の席の方へと歩いて、爆睡している美少女に話しかけた――
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