1271 密かに奈緒さんが叶えたかった夢

 少し悪くなった空気を換える為、奈緒さんにお泊り用のパジャマをプレゼントする眞子。

そして、それ自体は成功を収めたのだが。

なにやら奈緒さんが、今日は此処に泊まる事を前提にしていた様なものを言いを始め。

倉津君を、なにかないがしろにしてる様な雰囲気に感じ取った眞子は……


***


「あらら、これはまた意外と愛情が薄いんですね」

「あぁ、今の発言じゃあ、眞子にはそう感じさせちゃったか」

「あぁはい」

「けど、そうじゃないんだよ、この話は、そう言う話じゃないんだよ」

「違うんですか?」

「うん、違うよ。……って言うか私はね。以前から一度、クラと、眞子と、それに仲居間さんと1つ屋根の下で、ゆっくり過ごしてみたかったんだよ。これ、結構、前からの夢だったんだよね」


あらら、なにを言い出すのかと思いましたが。

これはまた、なんとも可愛いらしい夢ですね。


とても、世間を騒がせてる奈緒グリのボーカルが言ったセリフとは思えないぐらい可愛い夢ですね。



「えぇっと、それはまた豪く小さな夢ですね」

「そぉ?そうでもないよ」

「なんでまた?」

「だって、考えてもみなよ。仲居間さんは、世界が求める才能の持ち主で、毎日が凄く忙しい人だし。眞子も、なにかと忙しくて、日々調整がつかない。クラはクラで受験生で忙しいし。そんで私は私で、アメリカに帰っちゃったら、みんなに中々逢い機会がない。だから、これを叶えるのって、結構、難易度が高かったりするんだよ」


あぁ……本当ですね。


そう言われるまでは気付かなかったですけど、各々の事情を汲み取って考えてみたら、確かに難易度が高い。

しかも、この4人が1つ屋根の下で集合したのって、今回が初めてかもしれませんね。



「あぁ、そっかぁ。こうやって、数日間でも毎日奈緒ネェの顔を見てると、つい、いつも日本に居るものだと勘違いしちゃいますね」

「そうだね。でも、だからこそ、こう言う時間って貴重だと思うの」


言われてみれば、確かに、そうですね。


でも、だったら尚更、真琴ちゃんとの時間を大切にした方が良くないですか?

折角、泊まって貰ってるのに、こう言う事を言うのもなんなんですけどね。



「ですね。でも……」

「うん。言いたい事は解るよ。クラとの時間の話でしょ」

「あぁ、はい、そうです」

「だろうね。確かに、私も大切な時間だとは思うよ」

「だったら」

「……でもね、眞子。私は、クラを大切に思うのと同時に、眞子も大切に思ってるの。それに仲居間さんは、眞子の彼氏。全員と長い付き合いをしていきたい。だからこそ、今日は、みんなと居たかったのよ」

「……奈緒ネェ」

「それにね、眞子。私がクラと結婚して、眞子が仲居間さんと結婚したら、みんなが本当の身内に成る訳じゃない。だから、この関係を死ぬまで続く様に、みんなで仲良くやって行きたいのよ。例え、お互いの道が違ってもね。私は、そう有り続けたいと思ってるよ」


……そっかぁ。


凄いなぁ奈緒ネェは。

真琴ちゃんの事だけに留まらず。

そこに私や、崇秀さんを含めて壮大な未来予想図を考えていたからこその、この夢だったんですね。


でも、それだけに、なんか凄く嬉しいね。



「あぁ、そう言う事だったんですね。だったら、それ、凄く良いですね。私も大賛成です」

「でしょ」

「あぁ、はい。最高です。……でも、奈緒ネェ。なんで、そんな事を思い付いたんですか?」

「そりゃあ、思い付くでしょ。クラは、私にとって一番大切な人で。仲居間さんは、私にとっての大切な親友。それに眞子は……」

「えぇっと私は?」

「眼が離せない我儘娘」

「……酷いです。私だけ、完全に格下じゃないですか」


まぁ、現に格下なんですけど、面と向かって言うのは辞めて下さい。


悲しみが溢れ出てきますので。


泣きますよ。



「だって眞子は、こんなに私が愛してるのに、そんな私を3回も捨てたんだよ。これを我儘って言わずに、なにを我儘って言うのよ」

「うぅ……それに関しては、二の句が出ませんね。だったら『眼が離せない我儘娘』でも良いですから。末席に加えて下さい。ハミ子だけは嫌です」

「ふふっ、嘘、嘘、冗談よ。そんなに心配しなくても、眞子は大好きな妹だよ。女の子の中では一番大切な存在だからね」

「あぅ……もぉ奈緒ネェったら、泣きますよ。サラッと、そう言う事を言うと、嬉し泣きで号泣しちゃいますよ」


……って言うかですね。

この有り難い言葉を聞いただけで、既に涙が、いっぱい溜まって来てますね。


多分もう直ぐ、ポロポロと滴り落ちる頃だと思います。


覚悟して下さい。


でも、奈緒ネェは、本当に私の事を大切にしてくれてるよね。

本当の本当に、一生、頭が上がらない存在だね。



「イチイチ泣くんじゃないの、鬱陶しい」

「そんなぁ。ワザと泣かせて置いて、それはないですよぉ。……でも、奈緒ネェ、なんで、そんなに私を大切に思ってくれるんですか?私、奈緒ネェには酷い事を一杯したんですよ」

「そうだね。酷い事を一杯されたね。でもね。それも人生経験の一端。良い方向に捉えれば、普通では体験出来無い様な事を体験させて貰った。だから、それを踏まえれば、なにが有っても、なにをされても、一生、眞子は嫌いには成れない」

「なんでですか?なんでそこまで?」

「ごめんね、眞子。……こう言うのは、もぉ言っちゃいけないんだけど。ヤッパリ、君の中にはクラが居るんだよ」

「えっ?」


なんで?

本物の真琴ちゃんが存在するのに、まだ私の中にも、真琴ちゃんが存在するって言うんですか?


それって、どういう理屈ですか?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


奈緒さん……何を考えているのかと思えば。

いづれ来るであろう4人の未来予想図を視野に入れ、この機会に疑似体験しておきたかったみたいですね。


まぁ、奈緒さんが、こう思うのには少し事情がありまして。

言わずと知れた「お金の為に、娘を売り飛ばそうとする様な奈緒さんの毒両親が原因」だったりします。


そんな風に家庭環境に恵まれなかった奈緒さんだからこそ。

せめて『倉津君や眞子、それに崇秀とは良い家族関係を結びたい』っと言う意志の表れなのかもしれません。


さてさて、そんな話を踏まえた上で。

またなにやら奈緒さんが「眞子の中には、まだ倉津君がいる発言」をして来たのですが。

一体、これは、どういった意味での発言だったのでしょうか?


次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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