1265 これこそがスペランカーをノーミスクリアする位の高難易度試練か

 倉津君の出した課題を、意とも簡単にクリアする崇秀。

そんな崇秀の作曲能力に呆気にとられていたら……


***


「……まぁ、オマエの言う『ガン黒』を、お題にして曲を作りゃあ。大体、こんな感じなんじゃねぇか」


そう言いながら崇秀は、退屈そうにギターを台座に置いた。

しかも、これだけの曲を即興で作って置きながら、本人は、なんとも思ってねぇみたいだな。


なんでだ?



「コイツ……信じられねぇ。よくもまぁ、あんな短時間で、こんな曲が作れたもんだな」

「んあ?こんなんもん、別にそんな大した曲じゃねぇだろうに。どこにでも有りそうな、極有り触れたバラードだと思うぞ」

「どこがだよ?オマエを褒めたかねぇけどなぁ。スゲェ良い曲じゃんかよ」

「そうかぁ?けどよぉ、この曲自体は、さっきオマエと話してた会話の内容を英訳して、嫌味を取り除いただけの話だぞ。全然大した事ねぇじゃん」


アホなのかオマエわ?


逆に言えば、それだけの事を、たった10分。

いや……正確に言えば、たった7分で完成させちまったんだぞ!!


普通なら有り得ねぇつぅの!!


しかしまぁ。

久しぶりに、コイツのトンデモネェ才能を見せ付けられたが、相変わらず飛び抜けてやがんな。


……でもな、音自体に、2~3点、気に成る所があるな。


あぁ、それはそうと。

歌詞の内容は、さっき俺が予想してた通りで正解だったのな。



「あぁ、そうッスか、そうッスか」

「そうだな。他愛もない話だ」

「クッソォ。この嫌味マシーンだけは。……けどよぉ崇秀」

「んあ?」

「イントロと、サビ部分は、もうちょっと音を深めに弾いても良かったんじゃねぇか?その方が俄然良くなると思うんだが」

「そうかぁ?じゃあ、こんな感じでどうだ?」


♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--……


うわっ、スゲェ!!

俺が、ちょっと指摘しただけの適当な意見を取り入れただけで、さっきよりも、俄然良い感じに仕上げてきやがった。


これも、いつもながらの申し分ないアレンジ力だな。



「あぁ、そうそう。そんな感じ」

「だな。まぁ思っていたよりは、これで良い感じに仕上がったな。けどまぁ、暇潰しに、そこまで真剣に成る事もなかろうて」

「いや、これだけ完成度が高いなら、ワザワザ暇潰しにしなくても良いんじゃね?誰かに唄わせてみたら、どうなんだよ?」

「んあ?……この程度の曲をか?別に、どうでも良くね?」


そこのイ・カ・れ・頭・君。


確かに、これは君が作った曲だから、君の意見を尊重しようとは思うがね。

どうしても俺には『この程度』って言うレベルの出来じゃないと思うんだがね?


君は、頭が少し変なんじゃないのか?



「そんな事ねぇって。最近の時勢を取り入れた曲だから、絶対に売れるってばよ」

「あぁ、そぉ。そんなに気に入ったんなら、この曲、オマエにやるわ。好きに扱えよ」

「ブッ!!アホかオマエは!!」

「はぁ?なんでだよ?」

「なんでも糞もあるか!!今現在バンドを所属もしていない根無し草な俺に、時勢の曲を渡して、どうすんだよ?宝の持ち腐れに成っちまうだけじゃんかよ!!」

「じゃあ、明日の東京ドームで使えば良いじゃんかよ。それこそ、奈緒グリの新曲だって言い張っちまえば、無駄にもならねぇだろ」


ホント、こう言う所だけは、頭が良い癖に、馬鹿なんだなオマエって。

そんなギターの音しかない原曲を、どうやって明日発表しろって言うんだよ?


そんなもん、あまりにも無謀過ぎて、意味が解らんぞ?



「無茶言うな!!大体、明日の東京ドームのライブは、俺のライブじゃなくて、奈緒さん達のバンドのライブなんだぞ!!そんな勝手な真似出来るか!!」

「じゃあ、ヤメりゃあ良いじゃん。お蔵入りすればぁ」

「だから、そんな勿体無い事を言うなっての。勿体無いお化けが出るぞ」

「知るか。俺は、もぉオマエに、この曲を託したんだから、この曲に関して俺は、もぉノータッチだ。だから、オマエの好きにしろ。生かすも殺すも、オマエ次第だ」


マジのマジでアホだコイツ。


無茶苦茶言うにも程があるぞ。

こんな難曲を『使えなきゃ、お蔵入り』『使いたきゃ、明日まで仕上げろ』って、救い様の無い二択にしちまうつもりか?


無理無理無理無理!!

そんなもん、ドッチも選択出来るかぁ!!



「無理。出来ねぇ」

「フフッ、まぁ、そう結論を急ぐなって」

「おっ?なんだよ?ひょっとして手伝ってくれるのか?」

「まさかな。俺は、1度、自分の手から離れた曲には興味はねぇ。故に、俺には関係ないから、宣言通りノータッチだ……仕事もあるし、オマエにこれ以上構ってる暇はない」

「じゃあ、なんで『結論を急ぐな』なんだよ?」

「なぁにな。眠気が醒めたんなら、明日のライブまでには、まだ十分な程に時間があんだろ。だったら暇潰しにモガキ苦しんでみろって話だよ」


最悪だよコイツ。

なにを言うかと思えば、普通そこで、さっき俺が何気に言った『眠気』の話をするか?


オマエ、そこまで『眠気』に固執するって事は、実は、さっき俺が『目が醒めた』って言ったのを根に持ってるだけだろ?


もしそうなら、ホント、大悪だよオマエって。


……まぁけど、このまま終わっちまうのも、なんか癪だしなぁ。

折角、良い素材が前の前に有るんだから、やるだけ、やってみるのも悪かねぇのかな?


オマエさんのお陰で、本気で目も覚めちまった事だしな!!


コンチキショイ!!



そんな訳で俺は、崇秀の糞ッタレからベースを借り。

奴の思惑通り、出来無いながらもヘコヘコと音を奏で始めた。


つぅか、もう直ぐ受験がある受験生だって言うのに、俺は、こんな所で、なにやってんだ?


これ……なんの試練やねん!!


受験と、なにも関係ねぇじゃん!!



『ぷっ!!確かに、こりゃあ、オマエの言った通り【面白い話】だったな。中々笑えたぞ』


この野郎~~~!!

なんかコッチを見ながらニヤニヤしてやがるって事は、今、絶対になんか心の中で言っただろ!!


なんか知らんが、その態度マジでムカつくわぁ。


これこそマジで『スペランカーをノーミスでクリアする位の難易度の試練』じゃねぇかよ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


倉津君が課題を出したら、課題を出した分の課題が崇秀から返ってきましたね。

しかも難易度が極悪レベルで(笑)


まぁでも実際は、どちらの方が難易度が高いかと問われれば。

明らかに、倉津君が崇秀に出した課題の方「なにも無い所から作ってるだけに」普通なら高難易度なんですけどね。


……ってな訳で、倉津君の為に付き合った「暇潰し」は、これにて完結なのですが。

この2人が、こんなアホなやり取りをしてる間。

奈緒さんと眞子の方では、一体、どんな事が起こっていたのでしょうか?


次回からは、そんな『奈緒眞子編』に突入したいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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