1264 スペランカーをノーミスでクリアする位の難題……のつもりが
倉津君が思い付いた提案をしようとしても、崇秀はそれを拒絶して『サッサと寝ろ』の一点張り。
それでもしつこく食い下がって、漸く、崇秀が、その倉津君の提案を聞く気に成った様なのだが……
***
「いやな。さっきのガン黒の話で思い付いたアイディアなんだがな」
「おぅ」
「もしも、もしもだぞ。あのガン黒を流行らせたのがオマエ自身だったとしたら、あの流行を、どう言う風にメロディーラインを乗せるか?って提案なんだが。……これって、結構、面白くねぇか?」
早い話が『今直ぐにガン黒ってお題で作曲して見せろ』って言う、ただの無茶ブリだ。
実際、あの流行を作ったのがオマエじゃない以上。
奴等の気持ちを理解し切ってない筈だから、これ自体、オマエにとっても中々の難題になるんじゃねぇの?
どうよ、どうよ?
ってか、この超絶難問に対して、オマエさんはどういう反応を示すんだ?
無理なら無理で、いつでもGIVEUPなら受け付けてやるぞ、フヒヒヒヒ。
「う~~~わっ、なにを言うのかと思ったら、しょうもな。そんなもん、全然、面白くもねぇな」
「はぁ?」
「大体にして、その程度の事なら10分もありゃ出来る簡単な糞作業じゃねぇかよ」
「はっ、はい?……うそ~~ん」
オイオイ嘘だろ?
本当に、この計算され尽くした見事な提案がダメなんッスか?
結構、崇秀が悩む事を想定してただけに、自信が有った課題だったんだけどなぁ。
「いやいや、嘘じゃねぇよ。……まぁつっても、此処でやらずに『出来ねぇ』と思われるのも癪だから。論より証拠だ。ちょっと待ってろ」
「えっ?なにを待てって言うんだよ?」
「いや、だからぁ、オマエの出した提案が、如何に簡単な作業かってのを、今此処で証明してやるつってんだよ……勿論、制限時間10分でな」
「なんですとぉ!!」
そう言った後、崇秀は、徐に椅子から立ち上がり。
襖を開けて、ギターの置いてある部屋の方に行くんだが……マジで?マジで出来ちゃうのオマエ?
俺の、このスペランカーをノーミスでクリアーする位の高難易度ミッションを、オマエは、そんなにアッサリとクリアー出来るって断言しちゃうって言うのか?
馬鹿な!!幾らなんでも、そりゃあ無理ってもんだろ!!
しかも、それを自身が設定した制限時間10分でやるだなんて、あまりにも無理無茶無策無謀なんじゃねぇのか!!
……って思ったんだが。
崇秀の野郎、向こう部屋に行ったっきりで、コチラの部屋には中々戻って来やがらねぇ。
だから、なにをしてるのかと思って、そちらの部屋をチラッと見てみるとだな。
あの馬鹿……ポケットに手を入れながら、神妙な顔をしてギターを選んでやがんだよな。
ホンマなにやっとんじゃアイツは?
そんな所で呑気にギター選びなんかに時間を掛けてたら、それこそ制限時間が無くなっちまうぞ。
***
……そんで、そのまま7分程が経過したぐらいに。
漸くギターが決まったのかして、崇秀のアホンダラァは『Gretsch 53 White Falcon』と、ギターを置く台座を向こうの部屋から持って帰って来やがった。
しかしまぁ、残り制限時間が後3分程しかねぇってのに、なにをそんなにギターで迷ってやがったんだ?
これまでも俺は、ベース一本で此処までやって来てるだけに、この『崇秀の曲に合わせてギター選びをする』っと言う感覚だけは、毎度毎度の事だが訳がわかんねぇんだよなぁ。
特に今回に至っては、時間制限を設けてるだけに、全く持って理解不能な行動だ。
なんて思ってる間に、崇秀は、再び椅子に座り。
徐に『Gretsch 53 White Falcon』を構えたと思ったら、なんの躊躇もなく曲を弾き始めた。
たった一言だけを添えて……
「んじゃま、タイトル無しってのも野暮ったいから、取り敢えずは『How much the in my world』(私の世界の値段) って所で」
♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--……
はっ?はぁ?
コイツだけはマジかよ!!
ギター選びに7分も掛けてたくせに、宣言通り、マジで10分以内に即興で曲を作りやがったみたいだな!!
しかも、英語の歌詞付きな上に、ガン黒ギャルのイメージとは真逆の、やけに、しっとりした『バラード』を奏でてやがるよ!!
なっ、なんなんだ、これ?
テッキリ俺は、ガン黒を題材にしてる曲だからダンス系の音楽を奏でるものだと思っていたのに……
何故に、此処でバラードなんだ?
こりゃあ一体、どういう事だ?
そんな俺の心境を他所に、曲だけはドンドンと進んで行くんだが。
奏でられている英語の歌詞を、自分也に和訳して1つだけ解った事がある。
それが、なにかと言えばだな。
この曲の歌詞のメインは『ガン黒の見た目の派手さや、奇抜さ』にスポットを当てた曲ではなく。
誰かに気遣って『そうせざるを得なかった女の子達の悲しみ』や、そうしなければ価値を見い出せない『無価値な自分を嘆いた』曲だと言う事に気付かされた。
だから敢えて此処は、派手な曲を奏でるのではなく、バラードなんだな。
……って事はだ。
これって、さっきの俺との会話を上手く昇華させ。
まるでそれを、自身が作った流行りの様に曲に乗せて完成させて行ってやがるって事なんじゃねぇのか!!
もしそうなら、なんて奴だ。
コイツ……瞬時に、なんて発想の元で曲を作りやがるんだよ。
そんな、酷く悲しいも切ない曲を、崇秀は6分程唄い続けた。
しかしまぁ、なんだな。
さっきガン黒の話をしてた際に、女性心理についても話し合っていたから、余計にスゲェ良い曲に聞こえるじゃんかよ。
ホント、なんなんだろうな、コイツだけは?
ガン黒が自分の作った流行りじゃない処か、毛嫌いしてるくせに、これ程までに自身の意思を詰め込んで曲を作り上げるだなんて……
作曲するセンスが、規格外も良い所だな。
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【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
倉津君の言う「スペランカー・ノーミスクリアレベルの難題」は、崇秀の手によってアッサリとクリアされてしまいましたね(笑)
まぁ、これ位ズバ抜けたセンスがないと。
各国のミュージシャンに楽曲提供なんてできないでしょうしね。
ってな訳で、倉津君の思惑は、意とも簡単に撃破されてしまいました(笑)
さてさて、そんな中。
この程度の話で終わらないのが、この2人の関係。
崇秀はやられたらやられた分、倍に返してくる男ですから、この後、何事も起こらない筈もなく。
彼の逆襲が始まってしまいます。
そんな訳で次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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