1249 意見交換と弱点の補い方

 奈緒グリメンバー(奈緒さんを除く)からの質問攻め。

誤魔化し誤魔化し回答をして、なんとなく事無きを得てる倉津君だったが。


そんな中にあって『何故、自分だけ個人的に指摘されたのか?』っと言う疑問をエリアスさんに投げ掛けられ……


***


 無責任な事を言う様で悪いんッスけど、そんなものは、なんも無いッスな。


まぁ敢えて言うなら。

ただ単に、なんか知らんけど、矢鱈滅多ら姉さんの演奏にムカ付いてただけなんッスわ。


所謂1つの『理由なき反抗』って奴ですな。


けど、下手に、そんな事を言って、彼女のプライドを傷付けたら、また気分を害しそうな気がして成らないから、此処は上手く誤魔化すのが大人の手段だ。


なにもかもを正直に言うのが、常に正しいとは限らないからな。


『正直者は馬鹿を見る』って言葉もある事だしな。



「あぁ、いや、それはッスね。最も単純な話なんッスよ」

「どういう話?」

「あぁ、いや、どうもこうも。ただ単に俺が、ベース以外の楽器の演奏の仕方を知らないからッスよ。これじゃあ、他の指摘のしようがないって話なんッスよね。そんな単純な話ッス」

「あぁ、そうかぁ。ベースしか弾けないんだったら、そう言う観点に成ってもおかしくはないかぁ。一瞬、私だけが嫌われてるのかと思ったよ」


おや、それはまた可愛い事を言いますな。


……ってか。

間近で見ると、この姉ちゃんスゲェ可愛いな。

しかも、ポケットに入れたくなるサイズだしな。


だったら、さっき『チビアメリカ人』とか、なんか失礼な事を言っちまったな。


なんか、すんませんなぁ。

姐さんは十分な程に美人ですぜ。



「いや、そんな訳ないッスよ。いつも奈緒さんをサポートしてくれてる【GREED-LUMP】のメンバーの方々を、俺が嫌いに成る理由なんて、なにもないじゃないッスか。寧ろ、感謝しても足りない位ッスよ」

「ふ~~ん。私達を、そこまで想うって事は、それって、奈緒が愛されてる証拠だよね。ねぇねぇ、君、そんなに奈緒の事が好きなの?」


うん?

なんか急に、話の方向性が変わったな。


なら、この好機を逃す手はねぇな。


怒られんの苦手だし。



「そうッスね。もぉ好きで、好きで堪らないッスね」

「そう……なんだ。そんなに好きなんだ」

「いや、つぅか。奈緒さんの、どこに嫌う理由があるんッスか?なんもなくねぇッスか?」

「まぁねぇ。奈緒は美人だしね。けど、奈緒って性格キツクない?」

「はぁ……全然キツクないッスけど。あんな優しい人、他には、絶対に居ないッスよ」


よっしゃあ!!これで完璧に話が逸れたぞ!!

後は、このまま恋愛話で畳み掛ければ、ライブの件は有耶無耶に出来るぞ。


悪戯な神様が与えてくれたチャンスを、上手く活用出来たぜ!!


ヤフ~~~~!!



「エリ。悪いが、そう言った奈緒の話は、少し後にして貰えないか?今は、彼が指摘している、我々の弱点の話を優先すべき時じゃないのか」

「あぁ、すみません」


はい……ダメでしたぁ。

トッちゃん坊やのご尤もな意見せいで、完全に逃げ口を塞がれましたぁ。


やっぱり、そこからは簡単には逃れられない運命にある様ですな。


まぁ悪戯な神様だけに、どうせ、こんなこったろうと思ったけどな。


解ってましたよ。


故に、こう言う事に慣れてる俺はだ……



「いや、ちょっと待って貰って良いッスかね?さっきから、弱点の話とか言ってるけどッスな。その話って、俺が『そうだったんじゃないか?』って、無理矢理に記憶を辿って言ってるだけの与太話ッスよ。そんなに神妙に成ってまで考える必要性はねぇんじゃねぇッスかね?」

「まぁ、確かに、君にとっては、その程度の認識の話なのかも知れないがね。私にとっては、結構、耳の痛い話でね。改善すべき点を、的確に指摘されてる様な感覚なんだよ」

「あぁ、それは僕も同じだね。さっきの彼の話で、自分の汎用性の低さには、少々うんざりしてるしね」


そうきますか。

それだけの高いスペックを有していても、まだ不安なんて余計なものが募るもんなんッスな。


ヤッパ……性能が高くて、高見を目指してる人達は、なにかが違うねぇ。


雑魚の俺にゃあ、わかんねぇ感覚だな。



「あぁ、いや、悪いんッスけど。もう一回待って貰って良いッスかね?」

「うん?今度は、なんだい?」

「いや、あのッスな。さっきから皆さんは欠点だとか、汎用性が低いだの言ってるッスけどね。そんなもんは、所詮、無い物強請りの域なんじゃねぇッスかね?それに、自分の好きな音を出して、なにが悪いって言うんッスか?別に良いんじゃねぇッスかね?」

「まぁ、君の言っている事は、的確な意見なんだがね。それじゃあ、先に進めないんじゃないか」

「そうッスかね?そうでもないと思うんッスけどねぇ」

「何故、そう思う?」


いや……それはッスな。

俺もさっき、同じ様な事で悩んでたからッスな。


そんで眞子に解決して貰ったから、そう思えるだけなんッスわ。



「いや、実に、単純な話なんッスけどね。短所を改善せずに、長所だけを伸ばして、なにが悪いって話なんッスよ。好きなものを、好きな様にやるからこそ、良い物が出来るのであって。無理したものじゃ、大して良い物なんか出来ねぇんじゃねぇッスかね」

「なるほどなぁ。此処は、考え方の違いと言う奴か」

「まぁ、平たく言えば、そう言う事ッスな」

「けど。求められてるものを破棄するって言うのも、どうかと思うけど?」


それも然り。

デッカイ子供のアンちゃんの意見もご尤もですな。


まぁ、どうしても、そう言うのを破棄する気持ちが許せないんだったら、廊下で眞子が言ってたみたいに、必至こいて人一倍努力するしかねぇわな。


意外と選択肢は少ねぇんじゃねぇッスかね。



「いや、別に良いんじゃねぇの」

「なんでだよ?……って、まぁつっても、俺ちゃんは、アンちゃんの意見に賛成だから、特別、反論はしねぇけどな。ホランドの旦那は、それじゃあ納得しないと思うぞ」

「いや、デク。私は、別に納得してない訳ではないんだがな。短所を消す事が悪い事とも思えないんだが」

「まぁ、そりゃあ、悪くはねぇわな」


ふむ。

中々色々な思考タイプが居るメンバーだな。


だったら、こう言うのはどうよ?



「だったら、別に短所じゃねぇって思っちまうってのは、どうッスかね?ある意味、それも個性の1つなんッスからね」

「うむ。悪くない意見だが、それだと伸び代が小さくなる一方じゃないか?問題が定義されてる以上、真正面から取り組むのが、人としての本質なんじゃないのかね?」

「まぁ、確かに、そう言う成長だけを促す捉え方もあるッスね。けどッスな。それじゃあ、上手くいかなかった時は、時間のロスに成っちまうんじゃないッスか?なら一層の事、長所だけを伸ばす方が、得な気がするんッスけどね」

「う~~~ん。確かに、それも然りだな」


真面目なやっちゃなぁ。


まぁ、金を貰って人前で演奏してるんだから、この辺を深く悩むのはプロとしては当然の見解か。



「まぁ、序に言っちまえばッスな。ある日、突然、なにかが閃く事だって有る訳じゃないッスか。まぁ勿論、それを狙ってやるのは無理にしても。そのある日が来るまでに、長所を伸ばしてりゃ、それだけ時間のロスを削減出来る。これも悪くねぇと思うんッスけどね」

「なるほどなぁ。逆説から唱える、そう言う時間の削減方法も有るんだな。しかし、そうなると1つ疑問が有るのだが」

「なんッスかね?」

「仲居間さんは、どうなる?」


結局……そこか。


なるほどなぁ。

これで漸く、話の概要が見えてきたぞ。


どうやら【GREED-LUMP】のメンバーは、俺に文句が言いたいんじゃなくて、今後の為に崇秀の事をもっと知りたいんだな。


なるほど、なるほど。

そう考えりゃあ、今までの言動の意味も見えて来るってもんだな。


『欠点』だとか『汎用性のなさ』を気にしてるのが、その良い証拠だし。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


結局の所、奈緒グリのメンバーは、倉津君に文句を言いたかったのではなく。

どうやら今後の自分達の弱点を補う為に、弱点のない魔王(崇秀)の話を聞きたかったみたいですね(笑)


所謂、どうやって崇秀は、弱点を克服してるのかを知りたかった模様です。


まぁそれに、なにより。

ライブの方は、倉津君は意識を飛ばしていたからハッキリとは憶えていないとは言え、ちゃんと盛り上がってましたしね♪

倉津君がスッチャかメッチャかしたとは言え、盛り上がっていたなら苦情の入れようもありませんし。


さてさて、そんな中。

そうやって話題の先が見えた倉津君なのですが。

一体彼は、崇秀の概要について、どう答えるつもりなんでしょうか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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