1248 弱点ねぇ……
ライブ中、意識を飛ばしてスッチャかメッチャかやったしまったと思い込んでる倉津君。
それ故に、奈緒グリのメンバーに謝罪を繰り返すのだが。
どうやら相手方は謝罪などは求めてはおらず、自身達の弱点を指摘した事を尋ねたい様子。
意識を飛ばしてただけに、どうする倉津君?(笑)
***
「あの……それ、なんの話ッスか?俺【GREED-LUMP】の弱点なんか知らないッスけど」
「なに?君は、先程のライブ中、我々に、演奏で、それ等を指摘していたじゃないか」
いや、そんもん知らんぞなもし。
それによぉ。
そんな怖い表情を浮かべられても、解らんもんは、解らんぞなもし。
……あぁけど、演奏中に指摘をしたと言えば。
エリアスって子のベースの音がやや弱い事と、ライブのパーフォーマンスが全体的に弱いって事は感じてた様な気がするな。
ひょっとして、それの事か?
だって、それ以外の演奏自体は、問題なく上手いもんな。
もし、そうじゃないとしてもだな。
今の現状じゃ、それ以外の事は、皆目見当も付かんな。
「いや、あのッスな。さっき指摘って言ったみたいなんッスけど。それってベースの音と、パフォーマンスの事ッスかね?」
「いや、そうじゃねぇ。それだけじゃねぇだろ、アンちゃんよぉ。まだあんだろ」
ねぇな。
そんなもん元からねぇし。
「いや、ねぇけど。マジでねぇし」
「そんな事はねぇだろ。曲のアレンジの甘さや、個人の演奏にも注意点を指摘したじゃんかよ」
「いや、あのよぉ。A級戦犯の分際の俺が、こう言っちゃあなんだがな。……それ、なんの話だ?俺にゃあ、全く話が見えてねぇんだけど」
「そうなんか?あれだけ的確に指摘をしてたってのに、自分じゃ記憶がねぇって言うのか?それ、どんなトランス状態だよ」
トランス状態なぁ。
まぁ、ライブ中に強制的に意識を失わせたんだから、ある意味、トランス状態とは言えなくもないがな。
なんか違わねぇか?
「まぁなぁ。現状じゃあ、そう思われても、おかしかねぇんだろうけどよぉ。……って言うかな。眞子が強引に『乱入しろ』って話が舞い込んで来た時から、実は、あんま記憶がねぇんだわ」
そうなんだよな。
結果的には、俺が、眞子の話に乗ってライブに乱入した訳だから。
この乱入の件に関しては、決して、眞子だけが悪い訳じゃないんだがな。
アイツのベースを借りて弾いてからと言うもの、異様にイライラして、まるで自分じゃない様な感覚だったんだよな。
だからまぁ、記憶が無いと言うのは嘘なんだが『自分じゃなかったみたい』ってのは強ち嘘でもない。
けど……そんな事を言っても、信憑性の欠片もなにもないから『記憶が無い』って言ってみた訳ですわ。
「ほぉ、では、そんな君に聞きたいのだが。その状態の時、君は一体、我々をどう思っていたんだ?少しでも記憶が有れば、教えて貰いたいのだが」
「まぁ、アヤフヤなもんで良いなら」
此処は1つ、言葉を濁して置こう。
そうすりゃあ、下手な事を言っても、記憶の勘違いで済まされそうだからな。
卑怯者って言うのは、こうやって自分に保険を掛けるもんなんだぞ。
此処、憶えておくように。
「……っで、どう思ってたんだい?」
「いや、まぁ、さっきも言ったがな。アヤフヤな記憶だから、ハッキリした事は微塵も憶えちゃいねぇんだけどな。【GREED-LUMP】のメンバーって、音楽に個性があるんだがな。それに固執している様な気がしてたな」
「それって……」
「まぁ解り易く言うとだな。エリアスさんって人は、自分が女性である事を前面に押し出し過ぎてて、ハードな音は良いんだが、力強さが無い様に思えたな」
「あぁ、確かに、さっきの演奏で、君はそう言ってたね」
姐さん、感じてくれましたか。
ありがとうござりまする。
「んで、美樹さんの彼氏は、ワイルドな音が売りみたいだから、こちらもハードな曲の時は良いんだが。アンコール三曲目であるバラード系は、少し物足りない感じがしてたんじゃないかなぁ」
「あぁ、それは言い得て妙だね。僕はノロ臭いバラードが、あまり好きじゃないからね」
おぉ……意識を失っていたから、適当に見繕った言葉を言ってみたんだが、なんとなく当て嵌まったみたいだな。
これなら意外とイケてるかも。
「そんで、ドラムのアンちゃんは、リズム感が極上に良いから、一緒にベースを演奏するには安定感が抜群に良いんだが。その分、なにか個性が足り無い様な気がしてたなぁ」
「まぁ、俺ちゃんは、重点を、そこに置いてるからなぁ。強ち間違いでもねぇな」
おぉ……また適当な事を言ったのに、パズルのピースが上手く嵌ったぞ。
意外と、当たり障りの無い事を言ってるだけなんだがな。
「そんで最後にギターの人なんだが。これに関しては感性なんじゃねぇかなぁ?優しい音は、スゲェ気持ち良い音なんだが。それ以外の音からは、崇秀の様な馬鹿げた表現が見受けられない様な気がしたなぁ」
「なるほどなぁ。君は、無意識だったと言うのに、良く音を聞いてるな」
「そうッスかね?」
「あぁ、良く聞いている。なんと言っても、そこは、以前にも眞子に指摘された所だからな」
まぁ、カラオケの時と、今日の演奏を総称して考えりゃ、この辺は順当な話だからな。
それにまぁ、こう言っちゃあなんだが。
崇秀のアホは、ギターの演奏に関しては並外れた表現力を持っているから、アイツを引き合いに出せば、ギタリストなら、誰しもが、こんな風に納得せざるを得ないんだよな。
この辺については、相変わらず、アイツは便利な男ですじゃ。
「……っでまぁ。総称的な話をすればッスね。得意分野はスゲェ秀でてるんッスけど。それ以外が、上手いレベルに留まってる様な気がするんッスよね」
……って言ってもだな。
その『上手い』に留まってるレベルが『ワールドクラスに上手い』のレベルに留まってるだけだから、そのままでも、直接的には、なんの問題はねぇんだけどな。
寧ろ、無理矢理問題を定義した感じでしかないんだけどな。
「なるほど。矢張り、君の意見は、中々正確で、的を得た意見だな」
「そうッスかね?……まぁつってもッスな。こんなもんは、多分、そう思ってただけなんじゃねぇか?って言うのを想定しての話ッスからね。正確には、なんもわからんッスよ」
だから、これ以上は、なんも聞かねぇでおくんなまし。
聞かれたらボロが出るだけで、お互い、なんの得にも成りやせんぜ。
『百害有って一利無し』ですぜ。
「けど。ベースを弾いてる時は、なんとなくだけど、全員にそう思った訳でしょ。だったら、どうして、私にだけ個人的に指摘を入れたの?」
姐さんを個人的に指摘した理由ッスか?
ふ~~~む。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
奈緒グリのメンバー(奈緒さん除く)は謝罪を求めてるのではなく、倉津君の意見を聞きたかっただけの様なのですが。
しどろもどろながらも、キッチリと答える事は出来ましたね♪
では、何故、そうやって答える事が出来たのか?
まぁ、此処は本編でも書かせて頂いたのですが。
例のカラオケの時の演奏と、今回のライブの音を聞いて判断していた……との事なのですが。
前者のカラオケでは、奈緒グリメンバーの良い部分を聞き分けており。
後者のライブでは、呪いのベースの効果で「悪い所」が耳に着いたからこそ、キッチリ意見を言う事が出来たと言う話なんですよ。
なんの根拠もなく、奈緒グリの弱点を見付ける事は非常に難しいですしね。
さてさて、そんな中。
倉津君が一番個人的に指摘してしまったエリアスさんから「なんで自分だけ、個人的に指摘したのか?」っと言う質問をぶつけられた倉津君。
一体、どう答えるつもりなのか?
流石に「ムカついてたから」なんて口が裂けても言えませんしね(笑)
……ってな感じのお話を、次回は書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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