1245 パフィーマンスでも魅せてやる!!

 眞子の言葉に呼応して、花道から軽く演奏しながら出て来た倉津君。

勿論、まだ軽くしか演奏していないので、観客の反応はイマイチ。


「ならば!!」っと言わんばかりに、本気で弾き始めたら!!


***


「キタァ~~~!!ヤッパ、これだよこれ!!兄貴独特のファンキーな音!!奈緒様の声には、絶対的に、これしかねぇんだよな!!」

「そぉそぉ!!この全然POPじゃねぇ感じなのが最高だな!!ヤッパ、奈緒様には、兄貴しかイネェ!!」

「「「「「「なっ、なんだコイツ?なんてファンキーな音を出しやがるんだ!!」」」」」」

「「「「「「ガッ、ガキの出す音じゃねぇな!!一体なにもんなんだよコイツ?」」」」」」


言わずとした俺だ!!


そして、このネタは、今日、二度目の天丼ネタだ!!


……すまぬ。


……っとまぁ、そんな風に会場がザワメキ立ったぐらいに、ステージに到着。


そんな俺を迎える様に、眞子がハイタッチの準備をして待っていた。


だから俺は、曲のタイミングを計って、曲の切れ間に。


『パアァ~~ン』



「あいたたた……もぉ、そんなに本気でやるかなぁ」


……っで、眞子は、相変わらず、こんな感じ。


緊張感の欠片もありゃしねぇでやんの。


流石、全身肝女だな。



「悪ぃ悪ぃ。待ってる時間が、あまりにも長かったからよぉ。控えで、勝手にテンションがマックスにまで上がっちまったんだよ。もぉ歯止めが利かねぇ状態だな」

「ふ~~ん。それは重畳な事だね。……じゃあ、後の事は頼んでもOKだね?」

「おぅ。全部任せとけ!!だからオマエは、観客席で、ゆっくりしてな。オマエの為に、真上さんの横の席を空けてあるんだからよぉ」

「はいはい。じゃあ完全に、真琴ちゃんにお任せと言う事で」


ホント、どこまでも、お気楽だなオマエって。

本当の本当に、この大舞台でも、なんも感じてねぇんだな。


スゲェな。


ど根性眞子だな。


まぁそうは言っても、あれかぁ。

俺も、こうやってステージに立って思った事なんだが。

心の通じて無い様な俄かファンが相手だったら、特別な感情なんてものは、なにも湧いてこねぇもんなんだな。


これじゃあ、緊張も、糞もあったもんじゃねぇ。

こんな畑の芋の集団じゃ、ただのジャガイモが並んでるだけに等しい『野菜畑も同然』だもんな。


緊張する事自体、実にアホ臭いな。



「おぅよ」

「んじゃ宜しく。……あぁそうだ、そうだ。そう言えばさぁ、真琴ちゃんってフレットレスの方が使いやすいんだよね?だったら私がステージから降りる前に、コッチと交換する?」


そう言って眞子は。

演奏中の俺の目の前に、ド派手な鴉天狗のグラフィックが描かれた真っ黒なボディの『Music-man 1979 Sting-ray bass』を差し出してきやがった。


うん、ヤバイ位に格好良いし、見事なまでにフレットレスだな。


だったら、交換してくれ。

フレット付きは弾き易くは有るんだが、どうにも俺には使い勝手が悪くて、なんか邪魔臭ぇんだよな。



「おぉ、そうだな。悪いが、それと交換してくれ」

「OKOK。そんじゃま、演奏したまま交換行ってみようか」


---♪--♪♪♪-♪-♪---♪--♪--♪-♪---♪--♪♪♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--……

---♪--♪♪♪-♪-♪---♪--♪--♪-♪---♪--♪♪♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--……


そう言った瞬間、眞子は、俺の音に合わせて、思いっきり曲を弾き始めた。


……うめぇ。

やっぱ、マジで、うめぇよコイツ。


流石、俺のイカレタ姉弟だ。


けど、オマエが演奏するのは良いがな。

この2人でベースを弾いてる状態で、なにをする気だ、この馬鹿?


例え2人でベースを弾いても、曲を弾きながら、ベースの入れ替えなんか出来たもんじゃねぇぞ。


……なんて思って居たら、眞子は、俺の目の前で膝を付き。

俺のベースタッピングに合わせて、俺が弾いている方の『67 GUILD STAR-FIRE4』の弦を弾き始めた。


コイツ……即興で、なんて器用な真似をしやがるんだ。


しかも良く見たら、自分のベースも見事なまでに、片手でタッピングしたままじゃねぇか。


これってよぉ……俺にも、それをやれって要求してやがるのか?


もしそうなら、なんて馬鹿げたパフォーマンスを考えやがるんだ?


……けど、俺が乱入して以降、なんか滅茶苦茶注目を浴びてるし。

この映像自体も液晶ビジョンに映し出されてる以上、やらねぇ訳にもイカネェよな。


なら、やったろうじゃねぇかよぉ!!

女の眞子に此処までやらせて置いて、男の俺が、今更、無様に引けるかよ!!


おりゃあぁ!!


---♪--♪♪♪-♪-♪---♪--♪--♪-♪---♪--♪♪♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--……

---♪--♪♪♪-♪-♪---♪--♪--♪-♪---♪--♪♪♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--……



「「「「「「スゲェ!!なんだよ、あの2人の変則弾き!!マジで有り得ねぇよぉ!!」」」」」」


よっしゃあ!!

ザワザワと観客も盛り上がってくれたし、なんとか上手くいきやがったよ!!


後は、タイミングを計って、お互いのベースを上手く交換すりゃあ、これで全行程終了だ。


まぁ……やって見りゃあ、実際は大した事ねぇんだけどな。


ホント、こりゃあ、ただのパフォーマンスだな。


……って事で、タイミング良く、ホイっとな。



「「「「「おいスゲェぞ!!あの2人、ベースを演奏しながら交換したぞ!!」」」」」」

「「「「「ゲストのクセに有り得ねぇ事しやがる!!なんなんだアイツ等!!」」」」」」

「「「「「奈緒グリより目立ってやがる!!一体なに考えてやがんだよぉ!!」」」」」」


いや……本当にな。

タイミングさえ合えば、そんなに難しい事ではないんだけどな。

わざわざ人様のライブで、こんな馬鹿な真似をするゲストは早々居ねぇわな。


故に、これ自体、相当な馬鹿ではあるな。


まぁ、でも、あれだな。

こんな馬鹿みたいな事でも、一応は観客も盛り上がった事だし、フレットレスは弾き慣れてるだけに、ヤッパ弾き易いしな。


二重の意味で、馬鹿やった甲斐があるってもんだ。



「はい。じゃあ、ベースの交換も終わりね。……これで、私の出番も、お仕舞いだね」

「だな。あぁ、そうだ、眞子。……今のスゲェ楽しかったし、今日のオマエ、スゲェ良い音出し捲くってたぜ。マジで最高だったぞ」

「あぁっそ。そりゃあ、どうも」


眞子はアッケラカンと、そう言った後。

少しだけ満足気な笑みを浮かべながら、ステージからピョンっとダイレクトに飛び降りる。


ペンギンみたいなやっちゃな。


そんで、観客側に有る柵を乗り越えて。

何事もなかった様に、真上さんの横の席にチョコンと座った。


ふてぶてしいな。


けど、これで漸く、眞子もお役御免。

完全に奈緒さんを俺に任せた形だ。


しかしまぁ、コイツは、またまた、ご機嫌な演出だな。


なら……此処からは、俺の単独のパフォーマンスで、オマエを楽しませてやるよ。


オマエの好きな人を喰った様な演奏でな。


---♪--♪♪♪-♪-♪---♪--♪--♪-♪---♪--♪♪♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--……



「ふふっ、そう来るかぁ。……真琴ちゃん、やるぅ」


どうだ?

これは、かなり面白い演出だろ?


オマエさんも気に入ったか?


( ̄ー ̄)ニヤリ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


まずは眞子の提案により「変則弾きでのベース交換」と言うパフォーマンスを披露し、観客の心を少しづつでも掴んできた感じですね♪


こうやってみると、眞子の提案とは言え。

矢張り、倉津君はパフォーマンスが強いですよね。


まぁ、此処には少々眞子の企みもあったりするんですが……(笑)


さてさて、そんな中。

これで眞子が、お役御免に成ったので、此処からは倉津君が単独で見せ場を作って行かなければなりません。


そして早速、なにやら始めたようなのですが。

一体、倉津君は、眞子が「やるぅ」っと言う程のパフォーマンスを繰り出したのか?


次回はその辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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