1239 音楽に対する捉え方の違い

 同じ感覚を持ち同士だからこそ出来る「経験値のおすそ分け」

それによって倉津君は、アンコールで弾く3曲だけレベルが上がった訳なのだが。

『それ以外の演奏レベルをアップするには、理屈が解らないと出来ない』っと釘を刺され、倉津君は……


***


「フフッ、なめるなよ、眞子」

「おっ?なになに?早くも、なんか光明が見えたの?」

「当然だ。この俺様を、誰だと思ってるんだよ?」

「えぇっと、キャスバル=レム=ダイクンだっけ?」

「ブッ!!そこでシャアさんの本名かよ!!」


またの名をクワトロ=バジーナと申します。


今後とも宜しく。


ってアホか!!

なんで、この期に及んで、Zネタをフラにゃあ成らんのだ!!


まぁ……俺が心の中で、勝手に言ってるだけなんだがな。



「まぁ、本名だね。……ってかさぁ。もぉそろそろ、時間もないし。ガンダムネタにも飽きてきたから。もぉガンダムネタ禁止にしない?」

「あるぇ~~~、おかしいなぁ。俺には、オマエが先に振って来た様な気がするんだがなぁ。今のじゃ、まるで俺に責任が有るみたいな言われ方だぁ」

「いや、そうは言わないけどさぁ。でも、今、この瞬間にも、私が変に話に乗ったら、どうせ『俺はクワトロ=バジーナですぅ』とか言おうと思ってたんでしょ。だから、早急に対応する為に禁止しただけなんだけど。……思ってなかった?」


なんで解った?



「思ッテナイヨ(棒読み)」

「あぁ……ヤッパリ、思ってたんだ。なんて単純な思考なんだろ」

「そう言うな。俺も傷付くんだからよぉ」

「……っで、結局、見えた光明ってなんなの?」

「冷たッ!!」


ボケさせろ。


……ってかよぉ。

自分だけ散々ボケといて、この粗悪な扱いはなくねぇか?


思考を読まれて、ボケを潰された上に、冷たいあしらいまでされたら、今更言い難いわ!!


もしこの場に、俺じゃなくて山中が居たらなぁ。

アイツ、おしっこチビって、ワンワン泣き喚いてる所だぞ。


まぁ俺の心は、奈緒さんのバックバンドの出来の悪さに泣いてるがな。


……ってかアイツ等、マジでなんとかなんねぇか?



「どこが?全然冷たくないじゃない。寧ろ、サブイのは真琴ちゃんの方だよ」

「ふぅ……オマエってさぁ。ホント、底意地が悪いよな。俺に対する態度が、他の奴等と接する時の態度とは大違いじゃねぇかよ」

「えっ?あぁ……ごめん。真琴ちゃんが相手だと、ついつい、いつも隠してる本音が出っちゃってるね。……私、真琴ちゃんなら、なんでも許して貰っているものだと思ってた。本当に、ごめんね」

「いいぃ~~~~ッ!!」


なんで、急にそんな凹んで、しおらしくなっちまう訳?


オマエって、そんなに俺に心を許してくれてた訳?


だったら、悪い事したな。



「ホント、ごめんね。私、真琴ちゃんの前でしか、こう言う事を言えないから……」

「いやいやいやいや、別に構わねぇよ。俺、実は、そう言うオマエも嫌いじゃないしよぉ」

「あぁッそ、じゃあ別に、このままで良いんだね」

「騙しやがったな」

「騙したね」

「オマエって……ホント性悪だな」


嫌いじゃないけどな。


奈緒さんのバックバンドは嫌いだけど。



「っで、結局なんなの?」

「いや、オマエのせいで言う気無くした」

「あぁッそ。じゃあ、仕方が無いから、私が、真琴ちゃんの思惑を代弁してあげるね」

「オイオイ、ちょっと待て。なにを代弁しようって言うんだよ?」

「真琴ちゃんが見えた光明の件。……って言っても、どうせ、理屈が解んないから、感覚でなんとかなる、とか思ってるんでしょうけどね」

「・・・・・・」


正解だ。



「因みにだけど、それ……無理だからね。これだけは、理屈が解んないと出来無いからね」


左様でございますか。


これが俺の心理を読みきった、モロに正解なんですがな。


それだけに、奈緒さんのバックバンド位、残念無念でござるよ!!



「ちぇ……ヤッパ、それじゃあダメか?」

「うん。ダメだね。理屈と、感覚、それに培った技術が伴った上に、それが上手く交じり合わさって、初めて、この技法は生きてくるからね。単純に感覚だけに頼ってちゃ、これは、全く上手くいかないよ」

「チッ……面倒臭い技法を思い付きやがって」

「うわっ。良かれと思って教えたのに、舌打ちされた上に、文句まで言われたよ」


だってよぉ。

音楽は、字で書いた如く『音を楽しむ』もんだろ。


それをよぉ。

わざわざ屁理捏ねて、楽器なんて触っても、楽しくないつぅの。


そこ……なんか違わね?


奈緒さんのバックバンド位。



「そりゃあ、舌打ちもしたくなるわな」

「なんでさぁ?」

「だって、そうじゃねぇかよ。小難しく事バッカリ考えて、音楽なんてやっても楽しくねぇつぅの。感覚で楽しむからこそ、音楽は楽しいんじゃねぇの?オマエの言う、それって、俺にとっちゃあ、音楽じゃなくて、音獄じゃんかよ」

「ふむ。……なるほどねぇ。考え方に拠っちゃあ、そう言う捉え方もあるかぁ」

「だろ。オマエは、なにかと難しく考えすぎなんだよ」

「まぁ確かに、私は考えるのが好きだからねぇ。イラナイ事まで考えちゃてるのかなぁ?けどさぁ、そう言う音楽も楽しいんだけどなぁ。でも真琴ちゃんは、感覚で弾いてこそ音楽だと言いたい訳だね。まぁ、お互い、どこも間違ってはいないんだけどね」


あっ、そっか。

眞子は何事に対しても思考を凝らすのが好きだから、こう言う音楽の在り方もあってもおかしくはない訳だな。


だったら、そう言う音楽も有りだな。


それに加えて眞子は、元々俺と同じ体に同居していたから、感覚的なものも高く、両方を兼ね揃えている。


なるほどなぁ。

そう考えれば、眞子の性能が高くなる訳だ。


これはまさに見習うべき点ではあるな。



けど……俺には無理だな。


奈緒さんのバックバンドぐらい無理だな。



……にしてもあれだな。

俺……【GREED-LUMP】が相当気に入らないんだな。


さっきから、事ある毎に文句ばっかり言ってるもんな。



「そうじゃろ」

「けどさぁ。それだったら、あれだよね。真琴ちゃんは、これからも感覚を重視して音楽を続けて行く訳だから、私とは行く道が違うね。だったら真琴ちゃんは、自分の信じた己が道を、真っ直ぐに進むしかなくなるね」

「まぁなぁ。けど、そんなに神妙に考えなくても、その辺も、いい加減で良いんじゃねぇの?人が行く道なんてもんは、何処かで、必ず交差するもんなんだからよ」

「あらら、また上手い事を言うね」

「当然。俺は、自分の音楽に拘りとかねぇもん。自分が気に入った曲が、好きな音楽だからな。少々偏った音楽性には成るが、俺は、その方が面白いと思えるからな」

「あぁ……そう言う理屈ね。だったら、そんなに気にする事もないかなぁ」

「だろ。それも悪くねぇだろ」

「確かにね」


でもな。

それだけに、眞子みたいな理屈を兼ねた演奏は出来無いかもしれないけどな。


されど俺は、コイツの音が好きだから、多分、その内なんとか成る筈。


成せば成る!!……かも知れん。


どうなるかは知らん。

(↑最後まで、いい加減な俺)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


音楽性の違いにより、今回の倉津君の様に相手の感覚を否定する事があるのですが。

案外、キッチリと話し合いさえすれば、お互いが納得出来る事も多いものなんですよ。


因みに、よく解散にまで行ってしまう「音楽性の違い」って言うのは。

本当は音楽性の違いではなく。

「自分達の音楽を貫こうとしてる」か「儲け主義に流されて流行の音楽をしようとしてる」かの違いであって。

実際は、音楽性の違い程度の事で解散に至る事は、ほぼほぼなかったりもします。


此処を履き違えてはいけないので、今回は、この様な話を書かせて頂きました。


さてさて、そんな風に眞子を喋ってる中。

次回はまた更に倉津君が『( ゚д゚)ハッ!』って成る感じの事が起こります。


果たして何が起こるのか?


気になったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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