1237 ブゥブゥ文句を言うつもりはねぇけどな

 眞子によって奈緒グリのライブに乱入する事が決定してしまった倉津君。

納得できない也にも眞子に借りたベースで練習していたら、何故か、奈緒グリの演奏に対して文句ばかり出てきて……


***


「うん?真琴ちゃん。さっきから、なんかイライラしてるけど、どうかしたの?」

「あぁ、いや、別にぃ。なんもねぇけど」


いやな。

これは所謂、奈緒グリの演奏についてイライラしてるだけだから、別にオマエに文句を言いたい訳じゃねぇんだけどな。


けどな、オマエ。

オマエが集めた【GREED-LUMP】に関しては、やっぱり大いに不満だ。


なんで、あんな連中を、わざわざ奈緒さんのバックバンドに採用したんだよ。


あれってよぉ、なんか違わねぇか?



「そぉ?でも、なんか言いたそうな雰囲気だよ」

「まぁなぁ。オマエに言っても仕方が無い事なら山程あるな」

「そうなんだ。じゃあ、包み隠さず言っちゃえば良いじゃん。私達の関係で躊躇う必要なんて、なにもないんだからさぁ?」


マジで言って良いのか?


なら、オマエと、俺の仲だから、遠慮せずに丸々ハッキリ言うぞ。

怒涛の如く言っちまうぞ。



「じゃあよぉ。ハッキリ言うけどよぉ。……なんなんだ、あの糞バンド?奈緒さん以外、全然大した事ねぇじゃん」

「ふふっ。あっ、そうなんだ。なにかと思えば、真琴ちゃんは【GREED-LUMP】が気に入らないんだ」

「いや、まぁな。全く気に入らないって訳じゃねぇんだけどよぉ。奈緒さんの声が全然生かしきれてないんじゃあ、意味がねぇなぁって思ってよ。あれじゃあ、奈緒さんが、あまりにも可哀想だぞ」

「ふふっ。そっか、そっか。そうなのかもね」


なんか知らんが、俺の意見に満足気だな。


それにオマエは、なにを喜んでるんだ?


・・・・・・


あぁ……って事はなにか?

実はオマエも、アイツ等の音楽に対して多大な不満が有るって事か?


俗に言う『禿同』って奴か?



「それとよぉ。オマエにも、どうしても、一言だけ言いたんだがな」

「うん?なに?」

「オマエさぁ。なんで奈緒さんのバックバンドに居ない訳?オマエ程の実力があれば、奈緒グリで演奏する事ぐらい可能だろ」

「さぁ、それはどうだろうね?」

「なんだそりゃあ?そんなもん、疑う余地もねぇよ」


此処は100%言い切れるぞ。


だってよぉ。



「なんでそう思うの?」

「んなもん決まってるだろ。オマエの実力は、今ステージでベースを演奏してる、あのエリアスとか言うチッコイ女よりも格段に上だからだよ。だからオマエは、奈緒さんに世話に成ってるんだから、バンドを手伝っても罰は当たらないんじゃねぇのか?」

「そうかなぁ?私は、エリアスさんの演奏好きだけどなぁ」

「アホかオマエは?好きとか、嫌いとかの、そう言う問題じゃねぇだろ。見た目も、演奏も、あんな女なんかより、オマエの方が格段に上に決まってんだろ。だったらオマエが、奈緒さんを手伝いをすんのが筋ってもんじゃねぇのか?」

「おやおや、豪く褒めてくれるねぇ」


別に褒めてるんじゃねぇぞ。

俺はただ、今有る現実を、在りのままに、オマエに伝えてるだけだ。


現にオマエはよぉ。

あの音楽の神に愛され続ける崇秀の馬鹿が認める程の超絶実力者だ。


だから……此処に関しては、レベル違いも良い所だ。


それに見た目にしたって。

判官贔屓は否めねぇのかも知れねぇが、あんなチビのアメリカ人なんかより、絶対にオマエの方が可愛いって!!


Wで完全勝利してんぞ。



「当然だろ。眞子は、奈緒さんを任せても安心な最高のベーシストなんだからよぉ」

「ありゃりゃ、また褒めてくれるんだね。でも、そんなに褒められても困るんだけなんだけどね」

「困るな。こんなもんはただの現実だ。……けどよぉ、それだけに、オマエの行動がどうしても気に入らねぇんだよな。なんでオマエ、頑なに、奈緒さんのバンドに入らねぇんだよ」

「前から言ってるけど、入る訳ないじゃん。奈緒ネェは、私にとっては倒すべき敵なんだよ。此処で共闘は有り得ないね」


そうかぁ。

コイツも、俺同様に最強のバンドを作るとか言ってたもんな。


だから入らないんだったな。


改めて聞いても、その気持は変わらないんだな。



「あぁ、そう言えばオマエ、前にも、そんな事を言ってたな。……それってよぉ。ヤッパ崇秀の為か?」

「冗談。崇秀さんは、最も倒すべき敵に決まってるじゃん。あの人が一番のターゲットだよ。だから此処も100%共闘は有り得ないね」


あぁ……今度は、あれかぁ。

例の『眞子とは、まだ組まない』って言う、アイツの余計な一言が、どうしても気に入らないんだな。


意外と根に持ってやがるんだな。



「モジャと話をしてた時の、あの話か?」

「そぉそぉ、あれ。だから崇秀さんが、私にお願いしてくるまでは、絶対にバンドは組まないつもりだよ」

「それって、あの言葉に、かなり蟠ってんのか?」

「まさかね。それは違うよ。ただ単に、そっちの方が面白いから、そうしてるだけ」

「ブッ!!自分の彼氏と、面白いからって、普通、敵対するか?どんな快楽主義者だよオマエは!!」

「うぅん。そこも違うよ……私は、崇秀さんが大好きだからこそ、退屈させたくないだけ。事実は、それだけの事だよ」

「あぁ、ソッチか」

「そぉそぉ。私は、崇秀さんの為にだけ生きる殉教者に成る覚悟をしてるからね」


ほぉ……そう言う愛情の表現もあるんだな。


……ってか。

そう言えば奈緒さんも、俺に対して、いつも、そんな事を言ってたな。


『絶対に私を退屈させないでね』ってな。


だったら、そう言う考えも有りな方向だな。


まぁ勿論、俺の場合も、眞子と同様、最終的には好きな人とバンドをしたいけどな。



「なるほどなぁ。そうやって聞くと、それも悪くねぇな」

「でしょ。……ってかね。真琴ちゃんも、崇秀さんも、奈緒ネェも、私も、所詮は、似た者同士なんだよ。みんな、相手の事が大好きで仕方が無いから、相手の為だけに試行錯誤を繰り返す。それで、その結果が、今の現状なんじゃないのかなぁ」

「あぁ、いや、ちょっと待て。オマエ等は、そうかもしれないけどな。俺は、まだその域には達してねぇだろ。オマエ等に比べて、実力不足も良い所だからな」

「ふふっ……また勘違いしてるし」


うん?


俺……なんか勘違いしてるか?


リアルな話でだな。

実力も、努力も、なにも足りてないと思うんだがな。


現に俺は、今の自分に満足なんか全然ねぇぞ。

寧ろ、あんな下手糞なバンドに奈緒さんを任せてる自分の不甲斐無さが悔しくて仕方がねぇわ。



「なんでだよ?現に俺はダメダメじゃんかよ」

「どこが?【GREED-LUMP】の音を間近で聞いて、これだけハッキリ批判出来る人なんて、早々居ないよ。……って言うか、普通は出来ないと思うよ」

「いや、世間的には、そうなのかも知んねぇけどよぉ。そこは現実的な話だろ」

「じゃあ、此処で質問なんだけど。……なんで、そう思うんでしょう?」


さぁ?


わかんね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


倉津君の奈緒グリの演奏に対して文句を言う理由は、今回判明しませんでしたが。

次回で、どうやら、その理由がハッキリしそうな雰囲気ですね。


さてさて、なにが原因でこう成ってるのか?


勿論「アレ」の影響なんかもあるのですが。

それだけが理由じゃあ面白くないので、別の理由も用意してますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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