1231 相手を信じて突き放す勇気
結局、親身に成ってくれる真上さんに悩みを聞いて貰う羽目に成った倉津君だったが。
今回に至っては、自身でも答えが解っていただけに、ややスッキリしない感じ。
そんな折、眞子が現れて……
***
「あっ、眞子さん」
「こんにちわ、真上さん」
「あっ、こんにちわ」
挨拶が交わされたのを知って、俺は耳を塞ぐのをヤメ、眞子の方を向いて見る。
姉弟である眞子には、あまり見られたくない無様な姿だし。
なにより、奈緒さんの件で落ち込んでる事を悟られたくもなかったし。
「……あの、真上さん。それは良いんですけどね。奈緒ネェのライブ、もぉ始まってますよ。こんな所に居て良いんですか?」
「あぁ、はい。向井さんには、大変、失礼だとは存じているのですが。私が、余りの観客の方の多さに、少し人酔いをしてしまして。どうにも、体調が優れない様なのですよ。ですから、こんな風に倉津さんに付き添って頂いてる次第なんですよ」
……真上さん。
なんでアナタは、そこまで出来るんッスか?
拗ねてるだけの俺を眞子に悟らせない様に、大嫌いな嘘まで付いて、庇う必要があるんッスか?
俺なんかに、そこまでする必要なんてないッスよ。
「そぉ……なんですか?私には、どう見ても、真琴ちゃんが、奈緒ネェの人気に当てられて僻んでるだけの様にしか見えませんが」
「そっ、そんな事ないですよ。倉津さんは、親切に付き添って下さってるだけですよ」
「そうですか。だったら、もぉこれ以上、下手な詮索しませんが。ただ、もし真琴ちゃんが、真上さんに、ご迷惑を掛けてるなら正直に言って下さいね。私、嘘は嫌いですよ」
「あっ、あぁ……」
眞子にそう言われると、真上さんは非常に困った表情を浮かべる。
まぁでも、そうなって然りだよな。
この人は全くと言って良い程、嘘が付けない人だから、こんな状況は殆ど体験した事がない筈。
その上で、仲の良い眞子に「嘘は嫌い」っとまで言われたら……
俺なんかの為に無理をさせて悪い事をしたなぁ。
「眞子。オマエの言う通りだ。俺が拗ねてるだけだ。だから、真上さんを責めるな」
「……倉津さん」
「すんません。迷惑掛けました」
「あぁ……」
「だから真上さん。もぉ戻って下さい。俺も、自分の事は、自分で解決しますんで」
そうだ、そうだよ。
ヤッパリ、最初から、こんな俺が拗ねてるだけの様な悩みでで、誰かも迷惑なんか掛けるべきじゃなかったんだ。
こうやって直ぐに人に頼ろうとするから、自分の成長をドンドン遅らせちまってるに違いないんだからな。
だから俺の事には、もぉ構わず行って下さい。
「ですが……」
「真上さん。此処は、真琴ちゃん本人の意思を尊重して。なにも言わず、もぉ行ってあげて」
「ですが、眞子さん。こんな状態の倉津さんを放って置く訳には……」
「あのね、真上さん。真琴ちゃんだって男の子なんだよ。自分の事を、自分で解決したい時だって有るんだよ。だから女は、そこを干渉しちゃいけない。親切にしてあげるのだけが、友達じゃないと思うよ」
「あぁ……」
はぁ……この瞬間的な、状況把握能力。
どうやら眞子の奴、なんでもお見通しか。
「大丈夫。そんなに心配しなくても、真上さんが思うより真琴ちゃんは強い。そんなに柔な男じゃないよ」
「あっ……いえ、そう言う訳では」
「それにね。ちょっと1年間程、深い眠りに付いてたから、まだ現状がキッチリと把握出来ていないだけなんだとも思う。そこさえ解決出来れば、いつもの真琴ちゃんに戻る筈だから。真上さんは、真上さん自身が、今、優先すべき事を、優先すべきだと思うよ」
「今、私が優先すべき事ですか?」
「そぉ、真上さんが今、優先すべき事」
「それは……」
「今の真上さんが優先すべき事は、真琴ちゃんの悩みを聞く事じゃなくて。まずは、今、行なわれている奈緒ネェのライブを、余す事無くキッチリ楽しんでくれる事。じゃなきゃ、此処に来た意味もなきゃ、奈緒ネェに対しての筋が立たないでしょ」
「あぁ……」
そういう言い様か。
そう言う捉え方も出来るんだな。
「それでね。悩んでる真琴ちゃんが見れなかった部分を、後で伝えてあげて欲しい。それこそが、今の真琴ちゃんが一番望んでいる事だと思うよ」
……眞子。
「眞子さん。私は、お節介なだけなんでしょうか?」
「うん。そうだね。真上さんは、過保護なまでに、お節介だね。けど……」
「けど?けど、なんでしょうか?」
「けどね。真上さんのお節介は、凄く心地が良いの。だから、みんな、直ぐに真上さんに甘えちゃう。……だけどね。時には、相手を信用して、突き放す勇気も大切だと思うよ」
「そう……ですね」
「うん。だからね。今は真琴ちゃんを信じて、ライブに行って上げて。必ず真琴ちゃんも後で行くから」
「そうですよね。……解りました。いつも的確なアドバイスをして頂いて、ありがとうございます。私、倉津さんを信じる事にします」
「うんうん。ありがとう、真上さん」
眞子が、そう言った後。
真上さんも、自分に思う所が有ったのか。
不安そうな顔で、何度もコチラを振り返りながら会場の方に戻って行った。
恐らくは、慣れ無い事をしているから、心配で、しょうがないんだろうな。
俺なんかには、本当に過ぎたる人だ。
本当に、ご迷惑をお掛けしました。
……そして、真上さんが立ち去った後。
「ふぅ。真琴ちゃんは、本当に最高の友達を持ったね。あんな親切な人、世界中どこを探しても、そうはいないよ」
眞子は、そう言いながら、俺の座っている長椅子の横に腰を掛けてきた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
お人好しでお節介で、誰よりも人の事を大事に想ってくれる真上さん。
そんな風に人として完璧な真上さんではあるのですが。
唯一そんな彼女にも弱点があるとすれば、それは……悩んでいる人間を放って置けない事。
要するに『自分が解決してあげなきゃイケナイ』っと言う優しすぎる観念(責任感)を持っているが故に、どうしても相手を突き放つ事が出来ない事なんですね。
もっと解かり易く言えば、そんな自身の責任感の強さから『少し空気が読めない部分』があったりするんですよ。
まぁ欠点と言いましても。
こうやって最後の最後まで悩みに付き合って貰える訳ですから、普段ならこれ以上有難い事なんてないのですが。
今回に至っては、どうしても真上さんの意見が『強者の意見』として聞こえてしまっている倉津君にとっては、少々苦痛なだけに成ってしまう、ってだけの話なんですけどね(笑)
さてさて、そんな中。
そんな風に真上さんをこの場から去らせた筈の眞子が、何故か今度は、倉津君の横に座った様子。
果たして、何故こうなるのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
あぁっと、これは余談なのですが。
奈緒グリのライブが始まってる筈なのに、その状況をほぼ書かないのにはちゃんと理由がありますので、あしからず。
(*'ω'*)b←またなにか良からぬ事を企んでる(笑)
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