1222 変わりゆく周りの人間……と俺

 真菜ちゃんの誕生日プレゼントの件は、明日、ステラさんが付き添ってくれる事で解決したのだが。

その後も、まだ一緒に居てくれていたので「なんでなんだ?」と思った倉津君は……


***


「あのよぉ、ステラ」

「なにか?」

「オマエさぁ。奈緒さんの所に行かなくて良いのかよぉ?」

「その内、行きますが。それがなにか?」

「あぁ、そぉ。けど、なんで直ぐに行かないんだ?」

「真琴が、こんな寒空に1人で居たら、あまりにも哀れだからですが」


オマエって、ホント慈悲深いな。


けど、そんな真似をしてたら風邪引いちまうぞ。



「あぁ、そう言う事な。けどよぉ、それなら気にしなくても良いぞ。俺は、こう言う一人作業は、結構、慣れてるからよぉ」

「一人作業に慣れている?ですか。……あぁ、確かに、そんな雰囲気を醸し出してますね」


オイ、コラ、ステラ。

オマエ、今、なんか、絶対に失礼な方向で『一人作業』の意味をとっただろ!!


なんか『オナニーばっかりしてる奴みたい』だと思い切り見下された言葉遣いだった様な気がするんだが……


これって気のせいか?



「おい、ステラ。今オマエ、なんか物凄く失礼な方向で、俺を見ただろ」

「見てませんが。何故そう思うのですか?若しくは、そう思わせる要因でも、ポンコツの中に有るのですか?」

「ねぇわ!!」

「そうですか。それなら結構です」


ハイ、反論を試みては見たものの。

アッサリ、口で惨敗を喫してしまいましたぁ。


ステラには勝てませんなぁ。



「あぁ、因みにですが。私も、こう言う1人作業には慣れていますから、心配される覚えはありませんよ」


オマエも一人作業に慣れてるって事は、オナニーしてるって事か?


いや、こんな事を下手に口走っちまったら、間違いなくこの場で撲殺されるな。

あの湘南の会場に向かうバスの中で喰らった一撃必殺のパンチを、再び、此処で喰らうのは嫌だから、この言葉は心の中にしまっておこう。


あっ、いかんいかん。

そう思っていたのに、ちょっとステラのオナニーを想像しただけで思いっ切り勃起しちまったよ。


なので此処はバレない様に、真面目な方向で話を進めよう。



「うん?なんでインドア派のオマエが、外の寒さなんかに慣れてるんだよ?」

「馬鹿なんですか?」

「馬鹿だけど、なんでだよ?」


人が折角真面目に話をしていると言うのに、またしても、おかしな事を言い出しやがったな。


だって、ステラのこの発言ってよぉ。

ミュージシャンのイメージとは掛け離れた意見じゃね?


基本的にミュージシャンってのは、大体が家に篭って音楽活動をするのがメインだからインドア派なもの。

外に出た所で、精々スタジオに行くか、ライブハウスに行くぐらいが関の山だと思うんだがなぁ?


なんか言ってる事がおかしくねぇか?



「ハァ……相も変わらず、ゴミ以下の脳味噌ですね」

「だから、なんでぇ?」

「ハァ……良いですか真琴?私は今現在一人暮らしをしているのですよ。生きて行くには、生活費を稼がなければ成らないんです。そんな事も解りませんか?」


へっ?



「ちょ、ちょっと待ってくれよ。オマエって、生活費を稼ぐためにバイトとかしてる訳?」

「当たり前じゃないですか。まだバンド活動を初めていない私が、そう簡単に、音楽だけで食べていける訳がないでしょうに。少し考えれば解る事だと思いますが」

「いやいや、けどよぉ。オマエってGUILDの上位ランカーなんだろ。どこのバンドからも引く手数多なんじゃねぇのか?」

「馬鹿を言うのも程々にして下さいよ。確かに私は、HELPや、勧誘される事だけなら引く手数多ですが。先でミラーとバンドを組む事が決まってる以上、他のバンドのHELPに行く事はあっても、本気で誰かと組む事はありません。……なら、どうやって、音楽だけで、お金を稼げと言うのですか?私に路上で、弾き語りでもしろと言うのですか?」


あぁ……そっか。

確かにそれじゃあ、金の稼ぎ様がねぇわな。


それに、今、オマエさんが言った様に「路上の弾き語り」なんてしようもんなら。

それこそ恐ろしい様な人が集まるから金は稼げるかもしれないが、逆にリスクとしては警察沙汰に成りかねないもんなぁ。


なんせコイツは、黙っていれば滅茶苦茶美人だし、歌の実力は解かんねぇけど綺麗な声をしてるからな。


あぁでも……



「そっか。けどよぉ、HELPに行ったら、結構な金が貰えるんじゃねぇの?」


そこなんだよなぁ。

これだけの知名度があって、その上、超が付くほどの美人。


だったらバイトなんかしなくても、違う意味で「音楽だけで食っていけそう」な雰囲気だと思うんだが。



「はした金ですよ」

「はぁ?なんでぇ?オマエ程の実力があったら、いっぱい貰えるだろうに」

「ハァ……例え、そうであっても。HELPに行った相手方も、お金が無い貧乏バンド。そんなにお金を戴く訳にも行かないでしょうに。それに同じ道を志すものなら、多少、手助けしても良いんじゃないですか」


そうなんか?


けど、なんか……ステラの奴、変わったなぁ。

俺が知らない間に、やけに良い方向に向かって行ってやがんじゃねぇか。


元々、変にお節介な性格だが。

今現在のコイツが、そんな風に、人や、音楽活動の事を考えてたなんて、全然知らんかった。


マジで慈悲深いな。



「そうなんか?なんかオマエも、結構、苦労してるんだな」

「まぁ、敢えて、自分で選んだ道です。嘆くつもりは有りませんがね」

「そっか……ホント強ぇなぁ、オマエって」

「そうですか?」

「あぁ、強ぇ。それにオマエ、なんか変わったよな」


なんかよぉ。

ステラの話を聞いてると、また気分が落ち込んできたなぁ。


だってよぉ、そんな風にみんなが成長してる中。

昏睡時期があったとは言え、俺1人だけ、いつまでもチンタラチンタラしてるだけだもんなぁ。


そう考えれば考える程、俺の知らない、この1年間で、みんな良い意味で成長したよな。


マジで、まいっちまうよ。



「そうですか?私自身に、そんな変化は見受けられないと思いますが」

「まぁなぁ。確かに、オマエのお節介な性格ってのは元々あるもんだからなぁ。けどよぉ。俺の知ってるステラは、此処まで、誰彼構わずお節介はしなかったと思うぞ」

「それって、悪い方向に変わってますか?」

「まさかな。社交的な事は良い事だから、俄然、良い方向に変わってるんじゃねぇか」

「では、問題無いのでは?」

「まぁなぁ。問題はねぇけど。なんか、それだけに、俺1人だけ取り残された気分になっちまうな」


取り残された気分じゃなくて。

現実的に、俺1人だけポツ~~ンっと取り残されてるんだけどな。


うぅ……心が寒い。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


日々、人と言うのは成長していくものなのですが。

此処で成長の差が出るとしたら『どれだけ本気で自分と向き合ってるか?』っと言う部分が重要になってきます。


それでそこを加味した上で、この物語の登場人物達は「明確な目標」を持ってる人間が大半な為、尋常じゃない成長を遂げて行ってます。


それを見せ付けられたら、当然、倉津君は、こうやって凹む羽目に成る訳なのですが。

流石に、この状態の倉津君を、そのまま放置するのは余りにも可哀想と言うもの。


ならステラさんは、此処をどうフォローするつもりなのか?


次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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