1221 どれだけ口悪く言ってても……

 ステラさんの言葉で、漸く「明日が妹である真菜ちゃんの誕生日」を思い出した無様な倉津君。


……アホですね(笑)


***


「そうですね。ですが、自分の妹の誕生日を忘れる様な無様なポンコツに、なにか良い案が有るのですか?」

「ねぇな。自慢じゃねぇが、なんもねぇな。まったくもってプッスンプゥだ」

「見るも無惨なクズですね」

「確かにクズだな」

「自覚してるのですか?」

「いや、流石に、今回の件に関しては自覚した」


そりゃあな。

他人に、自分の妹の誕生日を指摘されてりゃあ、幾ら俺がボンクラでも、此処だけは自覚せざるを得ないわな。


これ自体が、あまりにも間抜けにも程があるからな。



「そうですか。では、このプレゼントを、真琴から真菜に渡してあげなさいな」

「へっ?いや、それだと、折角、選んでくれたオマエに悪いじゃんかよ」

「構いませんよ。それに、他にもう一点見繕っている商品が有りますので。私は、明日にでも、そちらを買いに行きます。ですから、これで宜しかったら真琴に譲ってあげますよ」

「いや、けど、良いのかよ」

「えぇ、本当に結構ですよ。真菜も、私に忘れられてるより、兄妹である真琴に誕生日を忘れられてる方が辛いでしょうからね。此処は仕方が有りません。私が妥協して差し上げます」

「しかしだな。わざわざ買いに行ったもんを譲って貰うってのもなぁ」

「ふぅ……これはポンコツの為に言ってるのではなく、真菜の為に言っているんですよ。自分の為だなんて、厚かましい勘違いをしないで下さい」


まいったなぁ。


口では、あぁ言う言い方をしてるけど。

ステラは、いつも、こうやって俺に気を遣ってくれるんだよなぁ。


それによぉ。

また、こうやって人に行為に甘えて、世話に成って、借りを作っちまうのもどうかと思うんだよな。


全く救いがねぇな。



「けどよぉ。なんでオマエが、俺にそこまでしてくれるんだよ?」

「私が貴方の親友だからですが。なにかおかしいですか?」


マジで?

オマエって、リアルに俺の事を、そんな風に見てくれてる訳?


まぁ実際の話、出会ってからと言うもの。

男女の壁とかを感じさせないぐらい、言いたい事を言い合える様な関係ではあるもんな。


それ故に俺も、マジでステラの事を親友だとは思ってはいたが。

まさかステラの方も、ちゃんとそう思ってくれててなんて……なんか俺、贅沢な話だな。


だが、それだけに……



「あぁ、だったら、尚更、それは受け取れねぇな」

「何故ですか?」

「俺だって、大切な親友の前で、そんな醜態は晒せねぇからな」


そう言うこった。

幾らステラが優しいからと言って、そこに甘えちゃいけない。


俺にだって、意地ぐらいあるしな。



「はぁ?なにを今更、格好を付けてるのかは知りませんが。いつも十分な位に醜態を晒してますが。寧ろ、晒してない時があるのですか?そんな真琴の姿を見た事が有りませんが」

「うぅ……そう言ってくれるなよぉ」

「なら、言われない様にして下さい」

「……確かにな。けどよぉ、事実を知っちまった以上、自分でプレゼント選んでやりてぇじゃん」

「それは、ポンコツの酷いセンスを全開にしての話でですか?あまりにも無謀過ぎますよ」

「あのよぉ。もぉ勘弁してくれ。これ以上言われたら、再起不能になりそうだ」

「元々再起不能ですが」

「・・・・・・」


まぁ、ステラの言葉全てが、言い返せ無い程の事実なだけなんだがな。

これでも俺だって一応は人の子なんだから、偶には凹む事もある訳だから、これ以上はやめてくれ。


しかしまぁ、まさに俺は、天下に鳴り響いた無様王だな。



「ハァ……では、いつまでも、こんな話をしていても拉致が開かないので、こう言う提案は、どうでしょうか?」

「なんでごぜえますか?」

「明日、私が、真菜のプレゼントを買いに行くのに付き合いましょう。それでどうですか?」

「マジで?けど、オマエ、明日、大丈夫なのか?」

「まぁ、予定が無い訳では有りませんが。他ならぬ真琴が困っているなら仕方が有りませんからね。お付き合いしても良いですよ」


神かオマエは?

口は悪いが、マジで良い奴過ぎんぞオマエ。


なんだかんだと口悪くは言ってるものの。

ステラの提案を断る理由を加味した上で、ちゃんと俺の「自分で真菜のプレゼントを探してやりたい」と言う意図まで加味してくれるなんてよぉ。


奈緒さんが居なかったら、オマエに間違いなくコロッといってただろうな。



「あのよぉ。マジで頼んで良いのか?」

「問題が無いから進言しているのですが。そんな事すら解りませんか?」

「いや、そうなんだけどよぉ。オマエってさぁ。本当、何気に良い奴だよな」

「今頃気付いたのですか?遅すぎますね」

「いや、前から気付いてるがな」

「そうですか」


あのよぉステラ。

そこで『ニコッ』と、はにかむのはヨセ。

オィちゃん、ドキドキしちまってるじゃねぇかよ。


けど、こう言うのイカンよな。

やっと素直の件にケリが付いた所なのに。

ここで俺がまた、こうやってフラフラしてたんじゃ、ケリを付けてくれた眞子に申し訳が立たないからな。


この辺も、ちゃんと自覚しねぇとな。



「じゃ、じゃあよぉ。悪ぃけど。あっ、明日頼むな」

「良いですよ真琴」


解っててもダメだな。

こうやって女の子に微笑まれるだけで……ギャフンだもんな。


奈緒さんって大切な彼女が居るって言うのに、この体たらくは一体なんなんだ?


男って、なんで、こんなに浮気性に出来てるんだろうな?


情けなし。


(;´д`)トホホ。


……まぁそんな訳でだ。

ステラの有り難い申し出を受けて、明日2人で買い物に行く事に成ったんだが……こんなんで大丈夫か俺?


不安しか過ぎらねぇ。


……でな。

この後、ステラは、そのまま立ち去るのかと思ったんだが、まだ横に居てくれてたりする。


しかも、愛想良く、入館許可書のチェックを手伝ってくれてたりするんだよな。


なんだ?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


倉津君、またボロカス言われてますね(笑)


まぁこんなものは『普段から言われない様に心掛けていれば問題のない事』なので、倉津君自身は自業自得なのですが。

そうやって口悪く厳しく言ってる割には、最後の最後にはキッチリとフォローもしてくれるステラさん。


実は結構、奈緒さん同様に甘やかし系の人なのかもしれませんね(笑)


……っと言いますか。

これ自身は、以前にも後書きで書かせて頂いたように。

彼女として「表」で倉津君の全体を支える奈緒さん。

親友として「裏」で倉津君の精神的な部分を支えてくれるステラさん、

なんて設定がございますので、それが生きてる証拠なのかもしれませんがね(笑)


さてさて、そんな中。

真菜ちゃんのプレゼントの件は、取り敢えずの完結を迎えた訳なのですが。

それが完結したと言うのに、ステラさんは、まだ倉津君の元に居る様な感じ。


なにかあるんでしょうか?


次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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