1217 眞子の奇行の話題から……
嶋田さんと倉津君の話を聞いていて、眞子の興味を持った椿さん。
そこで倉津君は、今日、眞子が「ある事情」で此処に居る事を思い出し、それを椿さんに教えるのだが……
その事情が事情なだけに。
***
椿さんは無邪気な態度をとっているが、嶋田さんが、どうやら眞子の奇行に気付いてしまった様なので。
取り敢えずは、その証拠と成る「例の眞子からの手紙」を手渡しながら、詳細を説明する事にしよう。
まぁこんなおかしな内容の手紙を見せられたからと言っても、即座に信用出来るような代物じゃないから『信じるか、信じないかは貴方次第です!!』の世界ではあるんだがな。
それでも、これが一番の証拠である事に変わりはない。
「あぁ、いや、なんでもッスね。昨日、あの馬鹿、此処での奈緒グリのリハに付き合って曲のアレンジをしたらしいんですよ。そしたら奈緒グリのメンバー全員に頼まれて、今日、東京ドームで演奏をする羽目に成ったらしいッスよね。……これが、その動かぬ証拠の手紙ッス」
これ自体、さっきも言ったが、普通なら有り得ない話。
なんと言っても、そう言うイレギュラーな予定を潰す為にリハーサルとかをする訳だから、普通のミュージシャンならこんな無謀な真似をしたりはしない。
けど、眞子と崇秀に関してだけは、そんな有り得ない事ですら、現実的に有り得るから恐ろしい話なんッスわ。
もぉアイツ等、頭の中が病気の域ッスよ。
それに加えて奈緒さんも、そういう思い付きの無茶な予定に組み込む事が好きだからなぁ。
そう言うイレギュラーが重なって起こった現象な訳ですわ。
「はぁ~~~、本当だ。凄いねぇ」
あっ……嶋田さん、眞子の手紙を見て、アッサリ信用したな。
「ですね。俺も、最初、これを見た時は、自分の目を疑いましたからね。どんな肝の据わり方をしてるのか、全く理解不能ッスよ」
いや、ホント、アイツは病気だ。
今年の頭にあったアリーナの件と言い、全米45箇所ツアーと言い、どんな図太い神経をしてやがるのか全く持って理解不能だ。
幾ら厚かましい俺でも、これは、中々出来無い所業だからな。
「いや、全くだねぇ。結構な数のライブをこなして来た俺でも、昨日、今日頼まれて、イキナリ東京ドームは無理だしなぁ」
「そうッスよね。普通なら無理ッスよね。けどアイツ、あれッスよ。これ以前にも、今年の頭にやった奈緒さんのアリーナでのライブでも、当日に出演を頼まれたらしいッスよ。……しかも、その時は、まだ一回しかライブやった事なかった状態で」
「ハァ~~~、それはまた凄い子だね。ネジが吹き飛んでるにも程があるね」
全くですな。
どう考えても、アイツの神経回路はまともではないッスね。
でも……アイツは良い奴ッスよ。
そう言う奇行が目立つにしても、人間性は良く出来てる奴なんで、そこを変に誤解せんでやって下さいね。
「まぁ、アイツは、そう言う事を平然とする様な奴なんですよ。けど、あれッスよ。それでいて眞子は、本当に良い奴ッスよ。全然、嫌な奴じゃないんッスよ」
「まぁ、そうなんだろうね。じゃなきゃ、あの子の周りに、あんなに人が集まる筈ないからね」
「ッスな」
本当に羨ましいッスわ。
しかも、それに付け加えて、あの美貌に、あのスタイルですからね。
そりゃあ、嫌でも、人が集まってくるってもんですわ。
けどッスね。
結局は、それ自体が、アイツがやってきた実績の積み重ね。
人との付き合いにしても、美貌にしても、スタイルにしても、アイツが必死になって頑張ってるからこそ、そうやって周りに人が集まってくる訳っスからね。
なんの努力もしてない訳ではないッスから。
だから、そんなアイツを、なんもしてない俺が羨ましがるのもお門違いなレベル。
でも、俺と同じ細胞で構成されてるんなら、俺にも才能なんかくれ。
プリーズ!!
「そっかぁ。しかしまぁ、また、とんでもない子が神奈川に現れたもんだね。この分じゃ、コチラもオチオチしてられないね」
「確かにそうッスね。アイツは尋常じゃないッスからね。……まぁつっても、俺の場合は、まだ自分のバンドも持たない風来坊ッスから、なにかを言えた義理じゃないんッスけどね。俗に言う、論外って所ッスかね」
悲しいのぉ。
自分で言っててなんなんだが、マジで悲しいのぉ。
だからせめて、受験が終わったらガンガン頑張るッスよ。
そうでもしないと、ホント、マジで忘れられた存在に成ってしまいそうですしね。
みんなが頑張ってる姿を見てるだけに、そんな悲しい存在になるのだけは嫌だしな。
「そうだね。まぁ、大変な立場だよね」
「ですね」
「……あぁ、そうだ。だったら倉津君、ウチに戻って来る気はないかい?」
「へっ?」
「元々メンバー同士なんだしさ。それなら気も楽なんじゃない?」
はい?マジっすか?
これはまた、思い掛けない所からバンドのお誘いがあったもんだな。
特にこの嶋田さんが在籍してる『無名』は、俺自身が初めて在籍させて貰ったバンドなだけに思い入れがあるし、一番戻りたいバンド。
それだけに、このお誘いは、本当にありがたい。
……っとは言ったものの。
そう言う嬉しいと思う反面、即座に決断出来ない理由もあったりする。
それがなにかと言えば。
まずは1つ目が、俺の演奏技術が以前のままのヘッタピィのままなので、今の無明のメンバーとの実力が見合わない事。
ベーシストとして、康弘もいる事だしな。
そんで2つ目が、奈緒さんには『最強のバンドを組んで迎えに行く』なんて大見得切っちまってるから、このお誘いを軽々しく受ける訳にはいかない訳なんですわ。
こりゃあ、どう答えたもんだ?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
嶋田さんに、眞子と言う生き物の説明をしていた倉津君なのですが。
此処に来て、何故か、無明への勧誘の話が出てきましたね。
そぉ……こう言うイレギュラーな交渉こそが、ライブ前の交流で起こり得る事。
こう言った事態もある事をお伝えしたくて、ライブが始まる前のシーンから書いてたりします♪
いや、まじで(笑)
さてさて、そんな中。
倉津君の中で色々な葛藤がありつつも、彼は一体、嶋田さんに、どの様な回答をするのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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