1215 流れる様に変わる話題

 鮫島さんと桜井さんの警備の仕事を変ってあげてた倉津君。

そんな中、知り合いである嶋田さんと椿さんが現れ、少々焦る事に。

だが偽造の資格書で、その場はなんとか収めたのだが、その写ってた写真が、あまりにも厳つかったので……椿さんが(笑)


***


「あぁ、それはそうと倉津君。この間の日曜日は、ありがとうね。山中君の件、ホント助かったよ」


あっ……突然、偽造の資格書に写った俺の凶悪な顔の話から、話題が変わったな。

これはきっと、あまりにも俺が哀れだと感じてくれたからこそ、嶋田さんも話を逸らしてくれたんだろう。


まぁこれ以上、俺も自分の人相の話なんざ続けたくないから、是非この話には乗るべきだな。


このままじゃあ、ダメージ大で死んでしまうからな。



「あぁ、あれは偶然ッスよ偶然。別に意図的にやった事じゃねぇッスし、偶々、話の流れで、あぁ成っただけッスから」

「いや~~~ぁ、それでも助かったよ。あの機会が無かったら、俺自身は、マジで【無名】の脱退も考えてたからね」


うぉ!!危ねぇなぁ!!

嶋田さんが脱退なんかしたら【無名】は存続が怪しくなる位の大ダメージを被る筈だからな。


それにしても、あの時って、そこまで危機的な状態だったんだな。



「えっ?マジっすか?けど、嶋田さんが抜けたらバンドが崩壊してたんじゃないんッスか?」

「バンドの崩壊ねぇ。……まぁ、その辺は、この業界じゃあ、よく有る話だからね。高々1つのバンドが解散するぐらい、そこまでの大事じゃないと思うよ」


まぁ、確かにそうッスね。

嶋田さんの言う通り、この業界は浮き沈みの激しい業界ッスし。

放って置いても新しいバンドの芽がドンドン出て来るので、1つのバンドが消える事ぐらいなら、世間じゃあ、そんなに大きな問題じゃないのかもしれない。


それに俺自身も、よくバンドのHELPに行く事は有っても。

嶋田さんの様にバンドを渡り歩いた訳じゃないから、その辺の感覚は余り解ってない部分があるのかもしれない。


けど……けどだな。

俺にとっちゃあ、その話は、あんまり良い話じゃないッスな。


全然知らないバンドならまだしも、知り合いのバンドが崩壊を目の当たりにするのは、どうにも……ねぇ。


寝起きが悪くなりそうッスしね。



「いや、まぁ、そうなんッスけどね。それが知り合いのバンドとも成ると、解散はやっぱ嫌なもんッスよ」

「ははっ、相変わらずの浪花節な人生だねぇ」

「まぁ、浪花節と言うより、自分の事も出来てないくせに、人の事バッカリ気に成る性分なもんで」

「なるほど、実に倉津君らしい意見だね。……まぁそれはそうと、倉津君は、自分のバンドのメンバーの方は、どうなんだい?そろそろ決まりそうなのかい?」


むむっ!!

その件に関しましては、自慢じゃねぇッスけど、全く持って、なんも決まってない状態ッスな!!


それ処か、眞子に教えて貰ってるとは言え。

受験勉強に追われてて、ベースすらロクに触れてない状態だったりもする。


故に、どうしても手付かずな状態に成っちまってるんっすよ。


うぅ、またしても、この話題でもショボボボボ……



「あぁ、あの、今、一応受験中なんで。ソッチの方まで手が廻ってないと言いますか。正直言えば、ちょっと疎かになってる感じはあるッスかね」

「そうなんだ。けど、倉津君って高校受験するんだね。てっきり就職組みだと思ってたよ」


おっ……また話題を変えてくれた。


しかしまぁ、嶋田さんって頭が良いだけに、相手の機微を感じて話題を変えるのが上手いなぁ。


……って事なんで。

またその話題の方に乗らせて頂きやす。



「まぁ確かに、家が家だけに、そう思われてもしょうがないんッスけどね。けど、ちょっと、それを先延ばしにしたいと思いまして、高校を受験する腹積もりなんッスよ」


要するにですな。

この件に関しましては、今ちょっとの期間頑張ってだな。

また3年間、高校生活を満喫しながら、遊び呆け様と企んでる訳ですわ。


まぁそれだけに、受験に失敗したら、問答無用で即ヤクザ決定ですけどね。



「なるほど。……っで、何所を受けるつもりなんだい?」

「いや、あの、ちょっと、無謀な挑戦をしてるんッスけどね。笑わないで下さいよ」

「あぁ、いや、どこを受けても、笑うつもりはないけど。どこを受けるつもりなんだい?」

「あの……一応なんッスけど。第一志望は蓮高なんッスよ」


いや……此処で「笑うな」って念を押したのには理由があってな。

さっきも言ったけど、嶋田さんと、椿さんって、基本的にスゲェ頭が良いじゃん。

しかもその上で、去年の夏休み前の期末テストで、俺の酷い学力を知ってる訳じゃん。


だから偏差値の高い蓮校受験なんかを狙ってると知られ。

そのあまりにも無謀すぎる挑戦に、頭がトチ狂ったのかと思われるのが嫌なんだよな。


そういう理由で、保険を掛けた訳じゃよ。


さて、どんな回答が返ってくるんだろうか?



「あぁ、蓮高ねぇ。まぁ、倉津君の実力なら、少し頑張れば、アソコぐらいなら受かるだろうね」

「えっ?嶋田さん、マジで言ってんッスか?」

「勿論だよ。俺はね、出来無い事を、出来るって言う程、酷い人間じゃないよ。自己判断だけど、倉津君なら、少し努力すれば受かるんじゃないかな。……どう思う椿?」

「うん、受かるよぉ。後輩さんなら90%位の確率で受かるよぉ」

「ほらね」


マジで?

国立大出身の嶋田さんと、現役東大生の椿さんに言って貰えたら、なんか自信が湧くな。


ヤベェ……俺、マジで蓮校に受かるんじゃねぇの?


……って、いやいやいやいや、この慢心がイカンのだな。

こうやって直ぐに調子に乗るから、いつも酷い目に遭うんだしな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】


倉津君の顔の話から、バンドの話へ。

そしてバンドの話から、今度は倉津君の受験の話へと会話が変化していったのですが。


矢張り嶋田さんは、頭が良いだけでなく。

この辺の倉津君の心境の変化を上手くとらえて、話を変えて行ってますね。


こう言う事が出来るから、嶋田さんは多くの人に慕われているのだと思いますです。


まぁ、偶に嶋田さんも、トンデモナイ毒を吐きますが……(笑)


さてさて、そんな中。

なにやら嶋田さんと椿さんが、倉津君の受験が上手く行くような核心を口にした訳なのですが。


果たして、それは一体、どの様な部分から来る確信なのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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