それは不思議な出会い? ⑦

 私はクラシーと一緒に部屋へ戻る。


「で、あなたは何者なの?」


「クラシー。魔法少女になる女の子の前に現れる妖精的な存在さ」


 クラシーはやっぱり普通にしゃべる。


「……じゃあ、やっぱり、あの戦いは夢じゃないの?」


「現実だ。初陣にしてはよくやったね」


「褒められても嬉しくない。それに魔法少女って、何? 私、高校生なんだけど?」


「でも、変身したら、魔法少女になった」


「わけが分からない。なんで高校生がわざわざ魔法少女にならなきゃいけないの?」


「君は中学生や小学生にコミュクスと戦え、と言うのかい?」


「そういうわけじゃないけど……だったら、もっと大人が変身すれば? 少なくとも私はもう関わりたくないよ」


「大人は魔法少女になれない。ほとんどの大人は魔法少女になる条件を満たしていないんだ。それに私が紫音の前に現れたのは偶然じゃない。君の魔法少女のとしての素質は素晴らしい。君には魔法少女の才能がある。だから、この世界を侵略しようとする敵と戦ってほしい」


 いきなり何を言っているの?


 なんで私なの?


 望む才能は無いのに、なんでこんな才能が……


「絶対に嫌! アニメの主人公みたいな正義感、私にはないよ。全力で拒絶する!」


 こういう時って、アニメなら嫌々言いながら、結局は正義の味方になるんだろうけど、私は違う。

 絶対に流されたりしない。


 平穏な日常の為、鉄の意志で拒否を誓う。


「そうか、残念だ。それでは諦めるよ」

「え?」


 クラシーは呆気ないくらい簡単に退いてくれた。


「なんだい? 君は私が強引に勧誘を続けると思ったのかい?」


「うん、まぁ、それがお約束かなって」


「君たちの世界のお約束は私に関係ない。そこまで嫌というなら、私は別の魔法少女を探しに行こう」


 話は驚くほど簡単に終わった。


「…………」


 あれ、私、少しだけ残念に思っている?


 ううん、そんなことは無い。


 正義の味方、魔法少女なんて、私には出来っこない。


「それじゃ、変身用のペンダントを返してくれるかい? 君の制服のポケットに入っている」


「ペンダント?」


 ポケットを確認するとクラシーに渡された変身アイテムペンダントが入っていた。


「はい、じゃあ、これであなたとの関係は終わりだね」


 話はすんなり終わると思った。


「…………ところでこのペンダントを私が受け取った瞬間、君とペンダントのリンクは切れる。そうなったら、ペンダントが身代わりになっていた分のダメージが君の身体に戻るから、覚悟してくれ」


「…………は?」


 急に話の曇行が怪しくなる。


「ど、どういうこと?」


「言葉の通りさ。君とそのペンダントがリンクしている限り、身体へのダメージはペンダントが請け負ってくれる。今もしているんだ。でも、魔法少女にならないなら、君とペンダントのリンクは解除する。だから、戦いで受けたダメージが君に戻るのさ」


「ち、ちなみにどれくらいの痛みなの?」


「いや、恐らく、痛みは無い」


「え? なんで?」


「頭蓋骨の陥没、全身数十カ所の骨折、内臓破裂。ダメージが戻った瞬間、即死さ。安心して良い。苦しみはない……多分」


「何一つ、安心出来るかぁぁぁぁ!」


「でも、魔法少女になる気はないんだろう? だったら、ペンダントは返してもらわないといけない」


「もしかして、今、私って、魔法少女になるか、死ぬかの二択を迫られている?」


「理解が早くて助かるよ。どっちがいい?」


 この白猫、魔法少女の妖精じゃなくて、悪魔じゃないかな!?


 そもそもクラシーのせいで戦いに巻き込まれたのに、なんで私がこんな理不尽な二択を迫られているの?


「三秒以内に返事を聞きたい。返事が無かったら、君とペンダントのリンクを解くから」


「三秒!?」


「行くよ。一……二……さ……」


「分かった! やるよ、魔法少女、やる! だから、殺さないで!」


 こんな会話をする魔法少女と妖精はいないと思う。


「そうかい。良かったよ、してくれて」


「…………」


 今すぐ、変身して、この悪魔をヘッドショットしてやりたい。


「君は明日から魔法少女として、コミュクスやミゼルローンと戦うことになる。私も出来る限りのサポートをしよう」


 なんで「手伝ってあげる」みたいな口調なのかな?


 それに新しい単語が聞こえてきた。


「ミゼルローンってなに?」


「君と戦った魔法少女が属する組織のことだよ」


 組織って…………さらっと敵が複数人いることを宣言しないでよ。


 私が今日、死ぬことは無くなったけど、これってただの延命なんじゃないかな?


 こうして、私の魔法少女生活が始まった。


 


 

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