第4話 キミがいいんだ
休憩時間がきたのだ。
隣席のピノに教わった通りの席に近づくと、挨拶を交わす。
「こんにちわ。転校生のルタです。皆の名前を知って置きたくて……」
「あらそう! わたしはシャンティよ。よろしくね」
え、意外とやさしい感じではないか。
周囲の生徒も一応の自己紹介をしてくれたが覚える気などボクにはない。
昼休みに告白を試みよう。
授業がすべて終わってしまうと放課後に一度しかチャンスがないのは分が悪い。
結果はあくまでも相手の気持ちがあるからどちらでもよいが。
告白自体は本日中にしなければ王様からチェックが入るかもしれないからな。
学園の屋上は先生の許可が必要らしい。
そこはダメ。
図書室はおしゃべりをする場所ではないし。
そこもダメ。
シャンティに学園内の一番落ち着く場所を聞いて見た。
どうやら講堂が自由に使えるらしくて、開放的でそこが好みなんだとか。
では案内をお願いして連れ出してみよう。
「シャンティ、キミのお気に入りの場所を特別に見せてもらえないだろうか?」
「べつにいいけど。講堂の出入りは自由だから場所だけ案内してあげるね」
この休憩時間に行くことになった。
いますぐということだ。
「わたしも勉強があるから長居はできないよ」
「それでいいよ、ありがとう」
一度下見をしに行く感じでいい。
足を運んでみると普通に講堂だ。
まぁ誰も居なくて静かではあるから落ち着きはするのか。
「ここがわたしのお気に入りの場所なの。じゃあ教室に戻るね」
「あ、シャンティ!」
「なあに?」
案内を済ませるとすぐに戻ろうとする彼女をすかさず呼び止めた。
振り返った顔をみると笑みを見せていたから、イケる。
と思い、約束を取り付ける。
「良ければ昼食をここでキミとしてみたいのだけど、都合はどうかな?」
「え、わたしなんかでいいの?」
「うん、キミが良いんだよ」
「わたしなんか平凡な女より、もっと優秀で美人が教室に2人いるよ。良ければ紹介してあげるよ。遠慮しないで言ってごらん」
いや、それは遠慮するよ。
その旨を彼女に伝えた。
遠慮というより拒絶に近いかな。知り合うのはキミだけでよいのだ。
「ほんとに? わたしでよければOKだよ。でも、その2人も連れ出そうか?」
「どうしてだよ、いらないよ。キミと2人が良いんだよ」
「わたしをクッションにして本命の美人に接近する手段を用いる人、結構いたから。ルタもそうなのかなって。わたしなんて男子に言わせれば恋する権利とかないらしくて」
な、なんてことを経験してるんだこの子は。
酷い仕打ちを受けて来て人間不信になっているようだ。
ボクは断じて違うのだと首を大きく横に振った。
「男子と2人きりなんて久しぶりよ。なんだかときめいちゃう」
「ぼ、ボクも。と、ときめいちゃう……かな」
あははは、と笑い声をあげるとシャンティも照れ笑いをしてくれた。
「し、信じても良いんだよね?」
まだ念を押すの? かわいそうに。
そこまで傷心しているのだな。
きっとキミは自分の魅力に気づいていないのだ。
ボクは教壇の前から教室全体を瞬時に見回したが。
容姿ならキミが一番キレイだった。
勇者の瞳力は最も美しいものを見抜くために鍛え抜かれた能力だ。
間違いないから。
「もちろんだよ! ボクを信じてみてください」
「うん! それじゃ、お昼休みにまたここで。誰にも内緒で来るから」
ふうん。
男と2人で飯を食うだけで、ときめくらしいぞ。
誘いを受けるのが久々なのだという。
あの隣席メガネ男子、さてはボクを担いだな。
ぜんぜん素直で良い子じゃないか。
これで昼休みになればストレートに告白にたどり着ける。
好きな理由は……えっと、「一目惚れ」しかないよな。
出会ったばかりだもんな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます