第50話 ランダム遭遇表
昼時。
俺は、パスタを茹でていた。
正確にはペンネだが。ボロネーゼだ。
いや、パスタという言葉の意味合い的には、ペンネもパスタの一種なので、パスタを茹でていたと表現しても何ら問題はないだろう。
それと前菜にプロシュット・ミストにフルーツを添えたもの……、あー、生ハム盛り合わせだな。生ハムは実はフルーツと合うんだよ。
因みに、フルーツと合うってのは、海外のフルーツと合うって意味だ。
日本の、計算され尽くした品種改良で甘ーくなったデザートのようなフルーツではなく、原種に近い、強い酸味と少しの渋みがあるフルーツが、塩気の強い生ハムと合わせると美味いって話だ。
ほら……、生ハムメロンってあるだろ?
あれ、美味くないだろ?
それは当たり前なんだよ。
日本の甘ーいメロンと生ハムが合う訳がない。
あれは、本来なら、瓜に近い感じの甘くない原種に近いメロンに、しょっぱい生ハムを巻いたものってことだ。
要するに、きゅうりの生ハム巻きみたいなもん。それなら美味いだろ?
それと、フリッターの盛り合わせにアクアパッツァ、デザートにティラミスなどなど。
ワインもイタリアのもの。その土地の素材、料理とは、その土地の酒が一番合うのだ。
うーん、とても美味いぞ。
いい加減慣れてきたのか、ヨナは、意地汚く腹一杯限界まで食べるようなことはなくなってきた。
あれは見苦しかったが、最高に気持ちよかったからな。
「こんな美味いものは二度と食えないかもしれないから、無理にでも食っておこう!」という人の意地汚さを見せられるのは愉快だ。
それも、地球ならばトップアイドルも夢じゃないような美少女が全力で媚びを入れつつ、豚のように飯を貪る姿を眺めるのは、至高の悦楽だった。
その夜に恩を返すためとか言って一晩中俺の腰の上で踊るんだから、もう最高ってもんだな!
だがまあ……、事あるごとに笑顔で礼を言われると、意地汚い姿も「しょうがないな」という気持ちになってしまうし、「かわいいな」とも思ってしまう。
美人は得だ、というのはまさにこれか。
あの醜い食いっぷりでも、彼女の美しさは損なわれないのだから。
まあ、その辺の話をすれば、鬼のような形相で戦うヴィクトリアも、冷たい目で戦うアデリーンとノースも、全員、どんな顔をしていても美しい。
美人は何をしていたって美人なんだよなあ……。
なんだか、最近は「見た目で差別するのは良くない!」という言論が罷り通っているが、「それならテメェはデブのブスとセックスできんのか?」と問われて頷ける奴だけが石を投げなさいってもんだ。
俺はこの世界では……、いや、元の世界でもだが、女なんざいくらでも選べる立場だ。
ならば、最高に美しい女を侍らせるに決まっているだろう?
実際の話、イケメンで金持ちな映画俳優共の嫁は美人だろ?
イケメンで金持ちなミュージシャンも……、いや、金持ちな奴の嫁は大抵、美人だ。
つまり、イケメンや美女を優遇するのはおかしい!という言論は、不細工共の僻みだな。悲しいなあ……。
大体にして、背の高さを活かしてバスケットボールをやるのとか、身体の丈夫さを活かして武道をやるのとか、そういうのは褒められるのに、生まれ持った美しさで異性を虜にするのは何が悪いんだろうか?
意味が分からんね。
俺は元の世界でも、この世界でもイケメンなので、心身共に醜いクソ不細工のおきもちは理解し得ないのだ。
嫉妬というどストレートな邪念に正義という名のラベルをペタリと張ったところで……、なあ?
汚濁に金粉を塗しても汚いものは汚いんだよ。
まあその辺は良いよ。
俺はこれからも良い女はガンガン優遇していくってだけの話だ。
ブスは死ね。
その点、ウチのパーティは本当に極めて最高だな!
深窓の令嬢、高嶺の花、そんな言葉がぴったりの、信じられないほどの美女であるアデリーン。
見た目は、歴史に名を残すような彫刻家に『最上の美女』というタイトルで傑作を彫らせた石像そのもの。そんな芸術品じみた女の癖に、内面は明るく元気で、表情豊かな善人という完璧な存在だ。
地獄を見てきた人間特有の野生味と、教養の高さから来る怜悧さが絶妙なバランスで両立している美少女、ヴィクトリアも負けていない。
素朴で飾り気のないが、飾らずとも美しい……、いや、素のままの姿こそが美しく思えるような、余計な装飾はむしろ邪魔になるような、そんな美少女であるノースも良い。
少女の可愛らしさと、雌の妖艶さを兼ね備えたヨナも最高の部類だ。
美少女フィギュアを並べるオタクの気持ちも分かるな……。
美しいものを手元で並べるのは、こんなにも満たされることだったのか。
ああ、因みにだが、ヨナ以外にはまだ手を出してないぞ。
アデリーンは口説いている最中だし、ヴィクトリアは名を上げてお家を再興するまでは子供なんか作っちゃならないし、ノースは神官としての教義から伴侶以外に身を捧げることはできない。
無理矢理手篭めにもできるが、それをやるのはつまらないからな。
この世界はゲームだ。俺はそう思っている。
ゲームだから、ルールの裏をかくことはしても、ルールを破ってはつまらない。
データッキーは上等だがマンチは許されざるよ。
なので、正攻法で好感度を上げている。
まあ……、無理矢理押し倒したとしても受け入れられるだろうけどなあ。
さて、夜の見張りだ。
マーニーは、俺達に期待するのは戦闘能力ただ一つだと言っていた。
先程のように、ホブゴブリンなどの強敵にぶつけるための戦力だって訳だな。
事実、ホブゴブリン二体と部下の緑小鬼(ゴブリン)十数体という戦力がそのままこのマイス商会の護衛隊とぶつかっていたとしたら、数人の犠牲者が出ていたとしてもおかしくはなかった。
まあ、ランダム遭遇表で悪い出目を出してしまわない限り……、あーいや、運が悪くない限りは、ホブ二体なんて強い蛮族に襲われることはないらしいが。
普段出てくるのは、角兎(ホーンラビット)や狼(ウルフ)くらいのもんだ。
あとは、はぐれゴブリンが精々。
よほどLUKが低くない限りは、ランダム遭遇表でファンブルとかないんで安心して欲しい。
「は、はぐれ貪食呑竜(グリーディ・マローダー)だあああっ!!!!」
そしてTRPG民は、「まさかここでファンブルはしないだろう」と言う時に引き当てるんだよなあ!
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