第5話 間に合わせの作成

 

 あぁ、忙しい忙しい。


 あの後、リアルでガワを被れるように調整した魔法具を3人にとりあえず渡した後、帰宅した自分はとりあえずで決まった方針にそって異世界の制作と軽く楽しめる偽装VRダンジョンの制作を始めた。

 真っ先に元となる世界を自身の内に生み出し、そこに魔法や神力を使って管理する為の精霊や生物を制作、環境を整えていく。

 と、軽く創ったところで配信に使うダンジョンを制作する。

 これは世界を別に創造し、そこに空間を創って様々な検証や動作確認等の所謂デバッグに使用する。

 今回は試用、つまりは体験版みたいな感じでこのダンジョンを使い、徐々に慣らしていくのだ。

 特に今回は目玉の映像精霊や記録精霊、配信精霊といった配信に欠かせないお助け精霊の試運転も行う。

 この精霊達は視聴に必要な要するにグロ、エロ映像をモザイク、カット処理し、何よりプレイヤーにはグロやエロはそのままで視聴者、リスナーにはある程度ぼかされた(簡単に言うと修正、アニメや漫画等のように光の帯やらお風呂シーンの泡や湯気、黒く塗られて切断された部位や悪影響を与えるタバコのシーン等も塗り潰される等)表現で配信するという根幹となるシステムなのだ。

 この疑似VRMMOを騙る異世界に必須となるシステムなのである。

 そしてこの世界にはゲストを5人も迎える事になる。

 同期の3人と例の女性2人だ。

 この5人に軽くシステムの説明をし、適当に創ったアバターの肉人形に知識やスキルを前提とした世界法則を付与して簡単な冒険をさせる。

 ここら辺が軽く面倒だ。

 最初からアバターに似せてキャラメイクは出来ないと伝えておこう。

 渡されたVtuberの資料を読み込み、その設定通りに肉体となる器を作り込む。


 「しまった、どういうプレイスタイルでいくか全く聞いてなかった」


 そこで肝心の各人のプレイスタイルをさっぱり把握していないというミスに気がついた。

 得意武器ややりたいスキルに魔法と近接、採取やら製造スキルも用意したとして…。

 無意識に計算して頭の中に広がるセフィロトの樹のようなスキルツリー…。

 これ、まじで儂が作るの?


  「め、面倒くさい。 これなんて面倒くさいんだ。」


 言っても始まらないので渋々作成していく、というか各々の連絡先なんて知らんぞ。

 会社だって個人情報なんか言わないだろうし、魔法やらを使って探してもいいが明らかに製作時間のロスになる。

 とにかくここは戦闘や生活関連の普段使いのスキルを平均より高くして楽々プレイ出来るようにしよう。 

 とりあえず体験版ってことなんだし。


 その後は、配信環境の調整が終わったリバイスが口を出して強力すると言ってきて、あーだこーだ意見を出し合いながら調整していた。

 そこで、とりあえず形にした物を軽く試運転しようとしていたら、


 突如、最近になって知り合いになった人物からの連絡が来たのだ。


 とんでもない長文の羅列、流しながら読んでいくと大体は自分の今作っているゲームもどきに関してだった。

 要約すると連絡の内容は「どうして私にも連絡しなかったんだ! 私にもやらせろ!!」


 と勢いのある台詞でLINEで回ってきていた。

 曰く、自分なら上手くフォロー出来る、とかデバッグ何か手伝えるから連絡下さいやら。

 とにかく自分も混ぜろと何件も送ってくる。

 元々はここまで仲良くなかったんだが、いろいろとあった事を解決してあげたら一気に懐かれてしまった。

 とはいへ、


 「この人何かしつこいんだよなぁ。

 タレントの問題があったのを解決したせいで変に依存先になっちまったみたいだけど」



 味方いない状況だったのが余計に拍車をかけたのかも知れない。

 未だになる通知音をBGMに当時の状況を思い返した。



▼▼▼


 彼女の名前は[如月 みゆき]。

 来た当初、彼女は自分を警戒していた。

 どうにも暴力で解決した男性、というのが彼女は特に気に入らないらしく。

 話しかけても無視、もしくは睨んでくるといった明らかに嫌悪感丸だしの姿勢で自分に接していた。

 何でも色々とトラブルに巻き込まれているらしくそれも相まってかかなり嫌われていた。

 自分はこれだから女性のヒステリックは嫌なんだと思いつつ、少しの間その彼女の事情を詳しく聞いてみた。

 何故そこまでしたのかというと周りの点数稼ぎもあるが、彼女自身、半ば気づきつつはあるがどうも何人かの霊に取り憑かれて体調の悪化に加え、配信時に霊障や謎の声が載るといった事象に悩まされているらしい。

 何度かお祓いには行ったが解決出来ず、相当参っているのだとか。

 という事で彼女の問題を解決すべく話しかけてみたものの最早人間不信の域にあるらしく触るなやら近づくなといった拒絶の言葉を戴き、どうしようか悩んでいると偶々転機が訪れた。

 彼女、何とストーカー被害にもあっていたらしく都合良く見つけた自分がちょっと魔法をかけて彼女に襲いかかったのを助けるというマッチポンプを行い、少しだけ彼女の信頼を勝ち取ったのである。

 それからというのも彼女はどうにも自分に依存してきたのか例の件に関して相談してきたのでとりあえず何とかしてみると伝えると早速、自分に部屋を見てほしいと連れて行かれた。

 すると出るわ出るわ、先程のストーカーの盗聴器やら悪霊になりかけの地縛霊に浮遊霊。

 何より多かったのは彼女に対しての生霊だった。

 顔などスケッチして渡すと流石に悲鳴をあげたが暫くすると絵を確認して私の事を虐めてきた同級生だと呟いた。

 どうにも彼女は顔が良かった上にスタイルもあったせいで件の同級生に嫉妬され、それでも嫌なのにその子の彼氏が彼女に話し掛けたせいで余計に火がつき、度を超した虐めをしてきたらしい。

 それがバレて彼女とその取り巻きは退学と停学になり、その場に居られなくなって転校したのだとか。


 「何でまた私なの? ようやく終わって新しい自分を始められる筈だったのに、何で…。」 



 そう言って泣き出した彼女だったがとりあえず泣くよりさっさと除霊やら撤去もしてソイツにやり返そうと伝えたら涙を流しながら唖然としていた。

 彼女はどうやらあまり使い物にならなそうだなと考えた自分はとにかく手当たり次第、聖なるメイスを取り出して撲殺(除霊)していくとようやく彼女も再起動してきた。 


 「魔法が使えるって本当だったんだ…」


 とか言いながら霊障で散らばった物を片付けつつこちらに礼を言った。


とはいへ、生霊は祓ってもまた送られてくるだろうって位にやけ憎悪が深く攻撃的だ。

 が、相手が悪かったな。

 自分相手では話にならんと思いながら彼女に生霊に憑かれない為にととりあえず創った呪詛返しと自動対霊攻撃結界を搭載したネックレスを渡す。

 とにかくこれで暫く大丈夫だと伝えると何処か戸惑いながらもありがとうと礼を言われ、また明日と用は終わったので帰宅した。

 それからは悩まされることもなくなったらしくやけに元気でお礼を言われた。

 その後もどうにも気を許したのかかなり話しかけてきて、更には社員寮代わりのマンションにある自分の部屋の隣に引っ越してくるらしい。

 これは嫌な予感がする、そう思いながら自分は彼女に相槌を打った。

 かと言って助けないのは何か違うし、仕方ないかと思いつつため息を吐いた。

 もしかしたら自分には女難の相、とやらがあるかもしれない。


 ついでだが生霊の女性たちの後を偶々知ったので追記しておく。

 主犯の方は刻参りまでしていたらしくかなり強い呪詛返しを受け、心筋梗塞で亡くなった。

 他の者も大小、とにかく被害を受けているようで何人かは怪我で住んでいるがやはり数人、一気に返された呪いで亡くなっている。

 人を呪わば、というがこれも結局は人らしい最期、結末なのかもしれない。





▼▼▼


 といった感じで彼女とは頻繁に絡むようになってしまったのだがどうにもしつこく感じる。

 とにかく頻繁にLINEを送るのはやめてほしい。

 いや、今時の女性はこれが普通だったりするのか?

 たが、今の話は渡りに舟である。

 テストプレイヤーが自分だけではどうしても心もとなかったのだ。

 了解です、良ければお願いします。

 と伝えると返事よりも先に玄関のアラームがな

る。

 そっと外を伺うと彼女がそこにはいた。

 これはひょっとしたらひょっとしてメンヘラもといストーカーとかいう人種になりかけているのではないか?


 …やはり、ちょっと付き合い方を考えたほうがいいな。

 痛む頭を抑えながら自分は玄関の扉へと手をかけた。

 




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