第4話 弁償と配信説明


 「おはようございます、私の名前はリバイス。

 人類の為に生まれた多目的自己進化AIです。

 どうぞよろしく」


 「と、言うわけなんです社長」


 「いや、何がと言うわけなのか分からないけどすごい事になってるね空くん」 



 早速、思考を放棄した俺は物的証拠と事実を持ってして交渉、もとい謝罪に向かった。

 案の定、あまりいい目で見られなかったが実物を出してみると有り得ないとばかりに呆然としている者や好奇心にかられて触れたり、一周眺めてみたりと様々な反応が帰って来ている。

 それに気を良くしたリバイスはガッシャンガッシャン音をたてながら変形し、自己アピールを行っていた。


 社長である本田正弘は興奮しながらそれを眺め、マネージャーである青い長髪の眼鏡をかけたバリバリのキャリアウーマンな真白みさきさんと俺が助けたらしい彼女、清楚系黒髪黒目スタイル抜群の鈴白そらさんも楽しそうにリバイスと会話をしていた。

 なんか弁償は有耶無耶にできそうと愛想笑いをしていたが、そう都合が良いことがある筈もなく、


 「とりあえず会社の備品だから、ね」



 と請求書と書かれた紙を頂いた。

 給与から天引きにすると説明されるが、どうしても気分が落ち込む。

 自分のせいではないのに…、と恨みがましくリバイスを眺めながらとりあえず備品については弁償という形で納得のいかないままこの話は終わった。


 その後少しして今回の本題である初配信の件を話し始めた。

 まずは自分のアバターとして渡されたキャラ設定についてである。

 異世界転移してた騎士、という設定の金髪碧眼のいかにも聖騎士と言わんばかりのキャラクターである。

 何か既視感がある。

 というか今の自分の髪を金髪にして目を碧眼に変えただけに見える。

 何となく視線を他の人に向けてみると露骨に視線を逸らした。

 いや、別に怒っていないし構わないんだが時間もない中で仕上げてくれた絵師さんも有り難いがなんかなーという感情を持ちながらこの件は呑み込む事にした。

 さて、肝心の初配信の件である。

 実はいきなり入った自分を合わせて4人の男性ユニットらしいのだが、顔合わせは自己紹介を少ししただけであまり詳しく付き合わなかった。

 というのも自分はいきなり入ってきたコネ入社みたいなものであちらからしてみれば色々と面接して、高い倍率から抜けてきたものだから気に入らないのかもしれない。


 とにかく何かインパクトのある配信をしなくてはいけない。

 かといって顔出しで魔法を使う理由にはいかない。

 同期の3人にも組んで得のあるコラボも計画しなければならない。

 どうするべきだろうか?

 今いる3人に聞いても無難にキャラの設定通りにするか、あえて異世界転移者の経験を活かして自身の体験談を話してみると言った意見が出てきたのでそれを採用する事にした。

 しかし、体験談か。

 ん? そういえば昔、とある兵士の育成の為、死んでも大丈夫な仮想空間を魔法で創って様々な状況に対応する為の訓練や簡単な異世界を創造してそこに敵を転移させて大技で殺したりもしたな。


 ...あと、あったといえばゴーレムに意識を移して高機動ゴーレムによるレースやコロシアムによる武闘会、ホムンクルスにも魂やら意識を移転させて色々とやったっけか。

 懐かしいな〜、あのヒューマンの女体に魂を移した勇者の相棒の魔法使い君は元気だろうか?

 同性愛は無理だって言ってた勇者と結ばれたいから協力してくれと言われて面白半分に勇者好みに作ったホムンクルスに魂を移してあげたんだがあれは面白かった。

 バラしたらどんな顔をするか考えながら酒を飲んで眺めていたんだが、彼を好きな聖女に怪しまれながら勇者に猛アタックしてたのは酒の肴に最高だった。

 その場にいたらバレるに決まっているので千里眼で覗きながら勇者一行を観察していたくらいだ。

 そもそも、技と魔法使いの死を偽装する為に強力な魔物を生み出して、空になった魔法使いの身体を自分が魔法で動かし、演じながら相手と相打ちという劇を演じ(魔法使い君は特に身体に執着もなかった為、魔力を暴走させて自爆した。もちろん身体は粉々)、その後で部屋に籠もりっきりになった勇者を元気づけようとした聖女を押し退けて、偶々外に出て自棄酒を呷っていた勇者に生き別れた魔法使いの妹として接触、勇者を慰めながら魔法使いのことで話し合い、意気投合して更には彼から貰った手紙に貴方のことが等、偽装に次ぐ偽装で信頼と同情を勝ち取り、更には幼馴染だったらしい魔法使い君の頃の記憶や思い出を悪用し、勇者に関して何でも知っているとばかりに彼を巧みに話術で引き込み、慰めるように包みこんだのだ。

 とんだ悪女(元男)である。

 何から何までマッチポンプだし、何より手紙なんか本人が身体を変えて書いただけだから筆記体だって本人のものだ。

 やけに時間を掛けるなと思えばこんな小道具を用意してたらしい。

 そうして、慰められながら勇者は彼と一緒に宿へと入っていった。

 と、いった所で途中でなんだか飽きてさっさと別の世界へと移転したがどうなったのやら。


 ってイカンイカン、話が脱線した。

 



 人がもし自分の話を聞いたら、どうしていきなりこんな事を考えているのかと思われるかもしれないがようはこの技術、使えばかなりインパクトがあるのではないか?

 と考えたのだ。

 この魔法を使った異世界体験、仮想経験するものを配信出来ればかなりの強みになるのではないだろうか?

 そう、魔法を使ったここ最近流行りのアレ! 

 何と言ったか…、あぁ、そうVRMMOとか言うやつである。

 ただし、魔法で再現するので擬似とはつくかもしれないが。


 しかし、もうインパクトは有るものの1週間もない期日ではどう考えても難しい、出来ても簡単な空間でテストプレイするくらいか。

 まぁ、それでも良いかも知れないな。

 少しずつ足していって最後に完成させる感じにすればいいか。

 とにかく、これを相談してみて4人の初配信コラボとかで体験させてみるか。

 何となくだか方針が決まってきた。

 とりあえず会社のチャンネルで四人を紹介しながら宣伝した後に個人のチャンネルで自己紹介配信という形らしいのでなんとかなるだろう、多分。


 とりあえず個人チャンネルではリバイスに頼んで顔出しで設定して適当に魔法使用やVRMMO作ります、で良いか。

 一応そのままじゃなくて魔法でアバターみたく設定すれば良いわけだし。

 とりあえず、幻影じゃなくて投影、または偽装系の魔法かな。

 そう呟くとアバター通りに変身する。

 これで大丈夫かと軽く確認しているといきなり肩を掴まれた。


 「ねぅ、それって他の人にも出来る?

 それとどれくらいその状態でいられる?」



 そこには眼鏡を輝かせ、興奮しているみさきさんとどこか期待しながらこちらを見る2人の姿があった。




 











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