第3話 配信準備は思うようにいかなくて


 あの後、結局のところスカウトを受けた自分は社長である本田正弘さんに色々と迷惑を掛けながら、彼の会社であるリアライブに就職することになった。

 どうにも魔法が完全な決め手となったみたいだがそれ以前から何か感じるモノがあってスカウトすると決めていたとのことだ。

 とにかく自分はなんやかんやと流れで決まった就職に準備が必要とのことで用意された社員寮代わりの部屋で俺は頭を抱えていた。 

 とりあえず準備として渡された端末やなんかはいい。

 それ以外の配信用の機材についてである。

 


 「嘘だろ、機材って自動で繋がんないし設定も合わないのか何にも映らないぞ、どうなってんだ?」


 

 何を隠そう借用した機材の使い方が良く分からないのである。

 慣れればまた別なのだが世界事に培った接続方法何かがふつふつと思い出され、設定の邪魔をする。

 類似の違う知識がどうしても邪魔をするのだ。

 そう言えばと昔やっていたダンジョン配信ドローンやなんかでこの手間を省けないかと試してみたがどうもサポートしてないと表示が出てくる。


 端子やらも微妙に合わない、なんだこのドローンのY字の端子は…。

 何とか配線を創造して使ってみるがどうも不明なデバイスと表示される。

 エラーなのかサポートしてないのかさっぱりわからない。

 

 「OSとかか? 

 何が悪いんだ?」


 次から次へと打開策はないかと次元魔法の倉庫やアイテムボックスから品物を取り出す。

 昔行った世界には超科学の文明世界から分捕った品々も無限にある。

 どうにか問題を解決するものがあるはずだ。

 何しろ自動で診断し、自己修理を行うものや強化の為に自己改造をするものまで様々だ。

 何かあるに違いない、といったところで何処か不釣合なバッジが出てきた。

 こんなものもあったな、と思いだす。

 例えばこのアメリカヒーローが着けそうなダイヤ型のバッジ何かは一時期特便利な人工知能付きの機材として非常に有名だった。

 ただ制限しないと有機部無機物問わずに何でも取り込む上に勝手に進化した人工知能が使用者と融合どころかパーツ取り込んだり、同じ部品同士潰し合ったりと果てには国家に反逆したりとあまりの凄さにいくら経った今でも記憶に残っている。


 危ないし戻しとくか、と考えていると唐突に揺れ始めた。

 そうだそうだ、思えば日本は地震大国だった。

 震度で言えば4、くらいだろうか?

 幸先が悪いと思いながらも例のバッチへと手を伸ばす。


 ーーースカッ、

 



 どう言うことだろうか、掴もうとした腕が空振ったのだ。

 その為、思わず倒れ込んでしまう。

 はて、と見てみるとそこには例の機械が借用した機材とともに取り出した物品を取り込んでいく姿があった。


 「はっ? あっ、ちょっ、まっ!?」


 焦って呆然としてる間にそのバッチは遂に全てを自分のボディに取り込むと無駄にカッコいい変形をしながら人型の2足形態へ移行し、



 「初めましてマスター、私は多目的自己進化AIリバイスです。

 物資の提供、ありがとうございました。

 これから貴方の為にお役に立つ事をお約束します。」

 


 そう悪びれもせず、喜色に満ちた声でそう俺に告げた。





▼▼▼



 どうすんだよ、コレ。


 ガッシャンガッシャンと喜びの舞を踊り始めたこのロボットにもう傍観するしかなかった。

 それよりも機材についてだ。

 あれは会社からの借り物だったのである。

 ましてや1週間後には自分とデビューらしい同期と紹介配信をするのだとか。

 もう本当にキツイ、まだ1部の関係者としか話していないのにこんなことになるなんて。


 「お、終わった。 

 いや、電気店で鑑定と検査魔法で複製品を創ってそれで配信すればーーー」


 背に腹は代えられないのだ、やるしかないかとあの元凶をとりあえず仕舞おうと準備するとその元凶自体が何故かこちらに歩み寄ってくる。



  「どうしましたマスター、何かお困りですか?」


 ガッシャンと音を立てて、アピールするかのように腰にアームを当て、その丸いボディを見せつけてくる。

 何も知らずに気楽でいいよな…。

 思わずため息をついてAIに事情を話した。

 そうして少し、時間が経つとAI[リバイス]は自信を持って返答する。 

 問題ありません、任せてくださいと。


 そうして直ぐ、リバイスは変形を始める。

 どう見ても体積以上に部品やら何やら出て来ているがそこは無視する。

 そして大体15秒位だろうか?

 そこには先程にはなかった様々な機器が取り付けられたデスクトップPCが鎮座していた。

 どうぞ、と言われて起動してみるとあらゆる設定がリバイスによって自動化され、無駄のない端末として仕上がっていた。



 「す、素晴らしい!」



 これは反逆されても使いたくなるわ、そう感心しながらリバイスを褒める、が。

 どうしても言わなければいけないことがある。

 借用した会社の物をどう説明するのか。

 褒められて喜びの声をあげるリバイスを見ながらそう思った。


 とりあえずコイツを見せて反応を見てみてから説明しよう。

 あまりの事に疲れた自分は明日の俺に全てを任せて休むことにした。

 明日は明日の風が吹くのだ、頼んだぞ俺。


 そんな無責任な事を誰かに聞かせるかのように説呟いて。



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