5月29日 光の家にて

ある水曜日のこと、光には小さな悩みがあった。

「なぁ、うんこ、輝斗って何が好きか分かるか?」

後ろを振り返って、光にしか見えない『うんこ』という神に話しかける。

『分からない。ちょっと輝斗の家行って調べてくる』

「いや、別に今すぐじゃなくていいけど」

そう言って出ていこうとするうんこを止めた。

『光はどうして知りたいの?』

「あー、もうすぐあいつ誕生日なんよ。だからなんかあげよっかなぁって思って。でも俺あいつの好物とか知らねぇから」

『誕生日?』

「6月6日、あいつの誕生日」

『何それ』

「え、誕生日だよ?」

『うん、それ何』

「そのまんま、生まれた日じゃん」

『わざわざ覚えてるの?』

「もちろん、歳とかわかんなくなるし」

『歳って何?』

「え、まじでそれもわかんねぇの?」

呆れた、と言わんばかりに頭を抱える光。

『うん』

「生まれてから何年かってことだよ?」

『歳って何に使うの?』

「え?何ってそりゃ……まあ、色々だよ」

『色々ってなあに?』

「色々って言ったら色々だよ。さっきから、なんでなんでーってお子ちゃまかよ」

『だってわかんないんだもん』

イライラしだした光に、うんこはお構い無しに質問の雨を浴びせる。

「あぁ、もう、自分で調べれば?ってか、神のくせに何もわかんねぇんだな」

『……我、神だもん。わかるもん』

そう言って、ぷいっとそっぽを向いた。


光を質問攻めにして、最終的にどちらかが折れる。

そんな会話は約半年間、毎日のように繰り返された。

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