第51話
百合の車は自宅に着き、自室に戻る玲。
「ずいぶん前の出来事なのに、驚くほど鮮明に思い出した」
思い出したくはない記憶ほど不思議と頭に残る。それだけ意識しているからこそ記憶にも刻まれる。
何度涙を流したのだろう。
それでも、玲は周りに支えられ前を向いて歩き続けられた。
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月見酒を楽しむにはうってつけの空模様。どことなく月明かりが眩しく見える。どことなく月明かりが優しく見える。
そんな空を一人窓越しに眺めていると、玲のスマホから通知音が鳴った。メッセージの相手はエレンだった。
「明日、放課後空いてる?」
「空いてるよ。何かあった?」
「ちょっと付き合って欲しいんだけど、良いかな?」
「わかった」
玲は特に詳細についても訊くこと無く、エレンの頼みに乗った。
「明日は何もないはずだったし、まあ良いか」
椅子に深く座って明日のことを考えていると、再びエレンからメッセージが届く。
「そういえば、今日会うって言ってたお姉さんの友人って、この辺に住んでいるの?」
「そうみたい。転勤で離れて、大学を機に戻ってきたんだって」
「その人、お姉さんに似てる?」
「年上だから自分よりも大人びた雰囲気という部分は似ているかな?でも、分からない」
姉と似た人なんているんだろうか…と、ふと玲は考える。
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自室の本棚には色々な本があるが、そこには思い出のアルバムがある。それは百合が、だいぶ前に時間を見つけて作ったもので、データとして思い出を残す現代社会では見る機会も少なくなった写真が収められている。
何気なくめくっていくと、雫も写った写真が。
「この写真、記憶に無いんだよな…」
そんな昔の時が刻まれたアルバムを一人眺めている。
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