第49話
「せめてもう一度だけでも会えたら…と改めて思います。わたしにとって亜希は親友と呼べる一人でしたし、もしあの日の事故が無ければ今も付き合いのある友人として共に笑い合ったり支え合ったりしていたはずです」
雫が亜希の写真を眺めながら、もしもの話をする。その言葉に、玲が答える。
「姉は幸せ者です。小学生時代の出会いって、ほどんど一時の仲で時が経てば新しい出会いの中に埋もれて付き合いも途絶えると思いますし、その中で今も雫さんの心の中には必ず亡くなった姉の存在が残り続けているわけですから」
「そうね。そして、亜希さんにとっても雫さんは特別な存在だったと思うわ」
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そんな風に思い出にふけっていると、百合が一言。
「そうだ、せっかくなら雫さんも夜ご飯を召し上がっていって」
時計は夜の7時を過ぎていたので、夕食時真っただ中な時間になっていた。
その言葉に、お礼を言おうと思った雫であったが、ふと我に返ったようにあることを思い出した。
「そういえば、さっきのバス停の最終って何時なんですか?」
「20:00よ。でも、今日はわたしの車で送っていくから大丈夫よ」
「いえ、急に押しかけて夕食と送迎とは申し訳ないです…」
「ううん、気を遣わないで」
その言葉、仕草に、雫はどこか亜希と重なる瞬間を見た。
「そういえば、わたしが亜希に何かお願いした時も、いつもこんな感じだったな…」
そう思っていると、「どうしたの?」と百合が問いかける。
「あぁ…!いえ、それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
いつもは百合と玲の二人で囲む食卓テーブルが、今日は雫も加わって3人での夕食となった。
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「そういえば…亜希さんとは、どういう出会いで?」
「入学して1年生のとき、偶然にも亜希とは同じクラスになったんです。最初の席順は50音順だったので席こそ離れていて、入学したての頃は席が近かった別の子と話していたんですけど、自己紹介の時に一人だけ雰囲気が違う女の子がいて…。その異様な雰囲気に魅了されて、わたしから声を掛けたんです。今でもはっきり覚えています」
亜希の話になると、多くの人が亜希の纏う雰囲気を口にすることがあるが、雫もその例に漏れることなく印象に残っていた。
「本当に同い年なの?って疑問がありましたが、話してみると凄く話しやすい子で…。特に共通の趣味があったりしたわけじゃなかったんですが、あっという間に打ち解けていました」
仲を深める要因は人それぞれではあるが、彼女たちの場合は心で通じ合う何か、シンパシーの類いが要因であったのだろう。そういった次元における仲の良さであると、話題等なくとも一緒にいて楽しくリラックスも出来る。
「そうなのね…。あなたたちが出会ったのは偶然というよりは運命にも似たものだったのかしらね」
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