第48話
その日は、朝から雲一つない快晴であった。青い空と太陽が覆う街も、どことなくきらめいている。
玲の誕生日でもあり、真希の一周忌でもあるこの日。本来であれば、この日に法要という段取りであるが、親戚の日程調整的に難しく翌日に行われることが前々から決まっていた。そのため、亜希も玲もいつも通りの一日を送る予定であった。
しかし、この日が亜希の命日になるとは誰が想像したのだろうか。
玲の誕生日プレゼントを買うために、いつもは通らないルートから店に寄ってから帰宅するという流れであったはずが飲酒運転の車にはねられ亡くなってしまった。
類はもちろん、昨日もいつも通り色々なことを教えてもらっていた玲にとっても再び悪夢のような時間となったことは言うまでもなく、小学生にもならない内に大切な家族を立て続けに亡くしてしまうという現実は、当然簡単に受け止め切れるものではなかった。
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ここまでの思い出話は、亜希の小学生時代の親友であった天音雫が中学生になった玲との偶然の出会いを通じて百合の家へ行き、振り返っていく中で掘り起こされた過去である。
しかし、雫も玲の誕生日に母である真希と姉である亜希を亡くしてしまったとは考えもよらなかった。
「そういえば、お父さんはどうしているんですか?」
雫の疑問は、4人家族の大黒柱である類に向けられる。
「類さんは、再び海外へ戻ったその日に現地で発生した発砲事件に巻き込まれて亡くなったの」
「えっ?」
「不運というほかないわ。決して治安の悪い場所ではなかったはずなのに」
「僕の小学生となった姿を、家族は見ていないんです。見たのは、ここにいるおばあちゃんだけ」
そんな現実を突きつけられて、よく立ち直ったと感心する雫。
「あの姉の弟ですから、少しでも恥じない人としてありたいという思いはありますね。今でも尊敬する一人ですから」
星井家の過去を振り返っているうちに、外は世闇に包まれてしまっていた。
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