第38話
直接的な死因は多臓器不全という診断ではあったが、そのトリガーは厳密に判明しておらず解剖等によって明らかにすることという選択肢もあった。しかし、明確な死因を明らかにしたところで真希が蘇るわけでもなく、メスを入れることなく荼毘に付すのが真希の肉体がこの世にあるうちに出来る家族としての最後の役割なのではないかといった家族の意向も踏まえ、それ以上は触れないことにした。
ただ、搬送時に血液等の検査を実施していたため、その検査結果をもとにおおよその推測が立てられるのではないかという見方はあったので、それらのデータに関しては追って確認することに。
通夜や葬儀には真希と生前交流があった友人が多く参列した。その数の多さに類は驚くばかりで、最も古い付き合いは3歳の頃からという人もいたり…その年齢層は偏りなく幅広く網羅していた。
「真希、お前はこんなにも愛された人だったんだな……」
少し参列者が落ち着いた際に、ふと遺影を見ながらつぶやく類。
---
通夜では、真希に関する映像が流れた。
33年という短い生涯ではあったが、その中身は濃く母である百合の関係で国内外色々なところへ行ったり大学生の頃に出会った類をはじめとする友人知人や社会人になってから出会った人々との繋がり。そして家族を手に入れた。
そんな短く太い人生とはいえ、やはり一番深い思い出は家族との時間だったのだろう。
映像内の真希の写真、その笑顔はどこまでも眩しくどこまでも穏やかで。
晩年こそ苦しい時間が量としては勝ってはいたのだろうが、家族の存在は真希にとって簡単に形容することは出来なかったのだろうと、その映像内の表情からはうかがえた。そして、その表情は同時に多くの人の涙を誘うだけの力があった。
喪主として毅然と振る舞う類の横で俯き涙を流す亜希、茫然と現実との狭間を彷徨うかのような玲。参列席から聞こえるのは、鼻をすする音や小さな嗚咽。
あの笑顔やあの仕草。なにもかも、二度と見ることはできない。死が奪うのは、亡くなった人の未来である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます