第33話

さっきまでは峠を越えた…と安堵があったのも束の間、再び容体が急変。


空港に到着し、到着口付近で百合が来るのを待つ。どうやら定刻通りの着陸を予定しているとはいえ、状況が状況だけに一分一秒が惜しかった。


定刻は13時12分。今の時刻は13時5分。予定ではあと7分ではあるが、これほどに7分という時間が長いのかと焦りばかりが類を襲う。


焦ったり苛立ったり、そういった感情に溺れることが無いだけに、類は自分自身を失いそうになっていた。


どうやら定刻通りの着陸。そこから数分で百合は現れた。


「悪いわね…ここまで来てもらって」


百合は真希の急変については聞いていなかったため、少々余裕のある雰囲気であったが類が現在の状況を説明すると一気に顔色が変わった。


「先ほど連絡がありまして、真希の容体が急変したとの内容でした。急ぎ、病院へ向かいます。詳細についてまでは分かりません…」


青ざめたというような表情で後部座席に乗った百合。


「昨日まではどうだったの?」

「昨日は、まだ意識が戻っていない状況でした。ただ、今朝…まるで玲の産まれた時刻に合わせるかのように一度目を覚ましたんです。軽い会話も出来るほどでした。そんな状況でしたし、少し安堵していたのですが、空港へ向かう際に亜希から連絡があったんです」


天国から地獄とは言ったもので、その状況の急落に心が追いつかない。上手く整理が出来ない。渋滞の起きている幹線道路の反対側、つまり病院へ向かう方向については比較的通りが良く、思ったよりも早く病院へ戻ってくることが出来た。


先に病院入口で百合を降ろし、空いた駐車場に車を止めた類が追って病室へ向かう。


亜希からの連絡を受けてから1時間ぐらいだろうか。正直なところ、類は今が何時なのかさえも曖昧になるほどの精神状態であった。

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