第4話
宇宙という際限の無い世界に浮き続ける光の粒。そして、地球で生まれ地球で息絶えていった人々。それぞれ誰も正確な数を数えたことなどなく、その数字の大きさには明瞭な想像も出来るわけもない。
もしかすると、偶然にも現世を離れた人々の数と宇宙の隅々まで無秩序に並べられた星の数は完全に一致するのかもしれない。
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「人は、この世から離れると星になって大切な人を見守っているんだよ」
「じゃあ、あの星が?」
「そうかもね」
「僕が手を振ったら、応えてくれるかな?」
「もしかしたら…ね」
夜空に向かって玲が手を振る。すると、遠い星明りが閃光のように一瞬だけ輝きを増した。
「あっ、今あの星が光ったよ!」
「ふふっ、玲くんのことを見守っているんだね」
その会話は、玲がまだ6歳の頃まで時を巻き戻す。夜空をともに見ていたのは、5歳年上の姉である亜希の姿が。5つ年上ということで、年の差を言うと離れた姉弟である。
満天の星空が広がっている週末、亜希と玲は近所の公園まで歩き古びれたベンチに腰掛けて星を見ていた。
「大丈夫、今日もわたしたちを見てくれているよ」
玲の右手を優しく握る亜希。
「そうだと嬉しいな」
亜希の左手を強く握る玲。
玲が見上げる亜希の表情はいつも優しく、どんな言葉でも仕草でも姉として理想ともいえる振る舞いを見せていた。
「そろそろ帰ろう。寒くなったでしょ?家に戻ったら、ココアを作ってあげるね」
「うん、ありがとう!」
知らない家の窓越しから漏れる動画サイトの音、一つ二つ道を挟んだ幹線道路から聞こえる車の走る音…。
それらの音が微かに聞こえる夜道をすり抜けて、二人は手を繋いで帰路に就く。
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確かに亜希は姉という立場とはいえ、まだ小学校も卒業していない5年生。世間からすれば、まだまだ子どもといえる年齢ではあるが、その姿や行動には大人にも引けを取らない品の良さを感じさせるものがあった。
そのため、周囲の人々からの評判も良すぎるぐらいで玲自身も自慢の姉という誇りがあり、また自分自身もそんな姉のたった一人のきょうだいとして恥ずかしくない人でありたいという思いが6歳ながら心のどこかでは抱いていた。
「僕も姉さんのようになれたらな……」
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